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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
生後100年の歴史
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生きる為の知識

「おばあちゃんー。」

『394番目の子よ。どうしたのじゃ?』

「お腹…空かないー。」


 生き物であれば何かしら食べなければ生きていけない。人間とかそう言った話でなく動物である限り、いや自ら動けるものは一部の微生物を除き間違えなく食べなければ飢え死にしてしまう。生まれて数日経ったが、何か食べた記憶もないし逆に何かを排出した記憶もない。明らかにおかしい。


『それはそうじゃろ。お主は植物の魔物じゃ。日の光を浴びて地面から水分と養分を吸っておる。じゃから腹が空くことはないぞえ。まあ、そのうちのどれかが足りなくなったら空くかもしれぬがのお。』


(マジか)


 いわゆる私は動ける植物みたいである。要は光合成さえしておけば食べる必要性もないらしい。養分は地面から吸い取るとか言っていたから…もしかして、見えない足もどきは根ということなのかな。。


「じゃあ、おトイレはー?」

『おトイレとはなんじゃ?』


 うん?どうやらトイレは通じないみたい。


「うーん。動物さん達が出す黒いのとかー。」

『排泄物のことかの。それも大丈夫じゃ。お主の体は全ての養分を分解して体…と言うより花かのお…に蓄えられる。』


(何それ?)


 自分の体ではあるけど突っ込みどころ多すぎないかな。とはいっても、よくよく考えて植物が汚物を吐き出すなんて前例は聞いたことない。微生物は知らないけど。やっぱり自分は見かけ人間の女の子、構造は植物と思った方がいいのかもしれない。それによくよく考えれば、食べる必要がないなら出す必要もないと言ったことか。


「じゃあ私は一生食べなくて生きていけるー?」

『豊富な土と水と太陽さえあればのお。余談じゃが、生き物を捕まえて補食することも出来るぞい。まあ、大半は食べるためと言うより身を守るためが正しいかのぉ。』

「どう言うことー?」

『妾たちは植物じゃ。食物連鎖の底辺に位置する。自己防衛出来なければ生きていけぬぞい。。』


 多分顔色が変わったんだと思う。実際食べられると言う経験はしたことないはずだが、ニュースとかで熊に襲われた云々の話を聞いたことがあるし、自分は生きていけるのか物凄く不安になっていた。


『そんな心配するでない。不幸なこと考えてたら先に進まぬぞい。』

「だ、だって…私食べられちゃう!」


 若干涙が出た。植物とは言え泣けることは分かってる。まあ、上半身は人間の女の子だと思ってるし。下半身も疑似スカート履いているが。。


『うむ。じゃあ自己防衛の方法も伝授しようかのぉ。捕まえれたら補食も出来るし一石二鳥じゃ。』

「でもおばあちゃん。食べなくても生きていけるんだよね?」

『そうじゃのぉ。ただお主、食虫植物は聞いたことあるかぇ。必要な養分がどうしても得られなかった時の最終手段として覚えておくと役に立つかもしれぬ。』

「うん、分かった!」


 この内容が今後別の意味で役立つことになるとはまだ私は知らない。


『まずはそうじゃな。あそこにいる野うさぎからかのぉ。良いか?あのうさぎは無害じゃ。食べるためあるいは自分の身を守るため以外で相手を殺してはいかん。良いかの。じゃからあくまで捕まえる訓練だけじゃぞ?』

「分かったーやってみる…どうやればいいの?」


 まず私は走れない。第一人間だったとしてもうさぎを捕まえるとなると一苦労じゃないかな。ペットショップとか動物園とかで人慣れしているなら別だけど。


「やり方はツルを使って捕まえるだけじゃな。木の枝を使った移動は覚えているかのぉ。それと同じじゃ。」

「や、やってみる。」


 枝を掴む感覚で手を見えている野うさぎに向ける。ここの草原は私を襲う危険な魔物はいないが、無害な生き物ならちょくちょく顔を出してくれる。多分彼らもここは安全地帯と考えてるのかもしれない。


「えい!」


 ツルが伸びてうさぎの方に向かっていったが、野生の本能だろうか…躱されて逃げられてしまった。やはり木の枝のように止まっている物とは訳が違う。それに捕まえなくても別に困らないからと言う安堵もあるのかもしれない。


「おばあちゃん。逃げちゃったよー。」

『うーむ。違うのぉ。』

「違うってー?」

『捕まえ方じゃよ。そんな真っ正面からツルを伸ばせば躱されてしまうぞい。野うさぎだから逃げただけじゃが、魔物だったら食い殺されてしまうのぉ。』

「うー。」


 おばあちゃんの悪い癖だが、若干焦れったい。


『捕まえ方はのぉ。地面を使うのじゃ。』

「地面?」


 地面にある草でツルをカモフラージュするとか?試しにやってみたが、相手が見えないと言うことは自分自身も見えない。空を切ってしまった。


「難しいー!」

『違うのじゃ。そのツルを地面に刺すのじゃ。』

「え…?」


 意味が分からないがとりあえず刺してみる。両手を地面に向けて伸ばしツルで刺しているため、自分自身全く動けないんだけど。


『そうじゃ。そして、そのツルをあの野うさぎの後ろ足近辺に出すようにしてみるのじゃ。』

「うーんー?」


 良く分からないがとりあえず言われた通りにしてみる。すると本当に後ろ足付近にツルが出てきた!自分からはある程度の距離だから見えるし、うさぎからは完全に死角になってる。


「えい!」


 出たツルを使ってうさぎの後ろ足を両方束縛することに成功した。うさぎは逃げようとするが絡まってしまってはどうしようもない。


「おばあちゃん!出来たよ!」

『上出来じゃな。地面に自分のツルを刺している限り好きなところからツルを出して制御できる。まあ、見えなければ出しても意味はないがのぉ。』

「おおー。」

「折角じゃ。その野うさぎを手で捕まえてみるのはどうじゃ。既に両足を縛ってるから簡単じゃろ。」

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