襲撃再び
「お姉ちゃん…僕ちょっと疲れた…。」
「大丈夫?」
「こんなに小さいのに私達にちゃんとついて来れただけで偉いわ。孤児院に行っているのよね?残りは私達に任せて帰っても大丈夫よ?」
「任せて大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。お前達が不利になるようなことはしないさ。」
「ありがとうございます。」
と言うことで、私とシュウ君は孤児院に向かった。まあ残り時間はシュウ君休憩の元、私は他の孤児達と戯れる運命になるのだが。
(私に休憩させると言う概念はないのかしら。)
魔物だからいけるだろうと自分を安く見積もった方が悪いが、まあそう言う日もあるだろう。そして、私は認識していなかった。問題を起こしたハンター連中は処分が決まるまで謹慎処分で終わってしまっていたことを。人間同士ではなく魔物と人間の問題でも判決を下すのが人間であると言うことを。どんなに相手が悪くても、人間優先になってしまうと言うことを。その日の夜から地獄が始まった。
『…様…姫様…』
今は深夜。私はぐっすり…ではないが眠っていたが、声が聞こえる。
『姫様!!姫様!!起きてください!!緊急です!!』
「うんにゃ?」
深夜魔物に奇襲されそうになると回りの植物や苔辺りが大声で叫んで私を起こす。森の中では月に1-2回発生するが、街道の近くの森では滅多に発生しない。魔物が少ないと言うのもある。或いは夜間に誰かが街道を通るとたぶん一般人じゃないだろうと言う概念から起こしてもらっている。多分そんなものかなと思って起きたらそんな甘いものじゃなかった。
『姫様緊急です!姫様が今朝方捕まえましたハンターが2名また森に入ろうとしていると情報が入ってきました!』
頭の整理をするのに少々時間がかかったが、一気に覚醒した。
(は?)
連中は私を捕まえて誘拐しようとしている連中である。昼間にギルドに叩きつけてもらったはず。第一夜間なんだから守衛は門を閉じてるはず。どうなってるのかわからない。
(いや、考えてる暇はない。)
植物の情報だと既に2名は森に入ってしまっている。これは事実。距離はまだあるはずだが、夜間の戦闘はこっちが不利である。相手は匂いで私を狙うが、私は夜間視覚が極端に優れているわけではない。植物との情報戦。向こうの方が有利である。
(いや、ちょっと待って?)
今の考えは、相手が魔物前提である。今回は人間2人。嗅覚なんてろくに無いだろうし…目もろくに機能していないはず。夜間の森は真っ暗闇なのである。むしろ、まだ夜間狩りをした経験が何度もある私の方が有利なのでは?
(とりあえず木に登るか。)
寝床から出た後、木に登る。植物からの報告によると大分側まで来ているらしい…お、灯りが見えた。
『ランタンですね。回りを明るくして姫様を探している模様です。』
こちらとしては大変ありがたい。敵の方が自分の居場所を教えてくれるのだから。私は地面に向かってツルを差し、連中の捕獲にはいる。「なんだなんだ?!」とか声が聞こえたが知ったことではない。と言うより、昼間もやられただろ。学べよ。
『姫様!彼らがランタンを落としました。枯れ葉に引火した模様です!』
(はあ?!)
山火事が起きたらたまったものじゃない。私は火が付いている場所の上にツルで網を隙間無いように作成し、燃え始めたところを密封した。
『姫様!それではより燃えてしまいます!』
「大丈夫。見ていて。」
枯れ葉には水分がない。だから燃える。だが、私のツルは生きている。水分がある。更に燃え始めたところを密閉すると言うことは酸素がなくなって燃えることが出来なくなる。天ぷら油が高熱で引火したとき、濡れたタオルで鍋を隠蔽して火を消すと言うものがある。それと同じである。
『姫様。どうやら火は消えた模様です。まだ煙は出ているようですが…姫様、ありがとうございます。』
「いえいえ。襲撃を教えてくれてありがとう。念のためだけど、他の2人の状況は?あいつら4人組らしいし…どっかに構えていたりしないよね。」
『ここいら一体に他の人間の気配はありません。ただ、詳細までの情報は入っておりませんが…姫様を誘拐するための戦略を再度検討していたと言う情報は入ってきております。お気をつけた方が良いかと。』
「ありがとう。じゃ、私は寝て大丈夫?」
『大丈夫だ。姫様が捕まえた奴らはどうする?』
「放っておいて大丈夫。夜間森の中に入って魔物に襲われたら自分達が悪いし…そもそも論、夜間守衛どうやって抜けたのかしら。門しまってるでしょうに。」
『門前の植物によると、色々口八丁で守衛を騙して出てきたみたいです。』
私自身は呆然としてしまった。後々マイは彼らの知恵によって地獄を見るのだが、どちらにしてもその頭脳を別の方に使えよと思う次第であった。
(とりあえず寝ますか。)
直感でわかった。多分明日何かしら起きる。本来ぶっ続けで街に言ったりしないが、行かなきゃならないなぁと頭を抱えながら寝るのであった。そして翌日、捕獲した奴らの報告のため街へ向かう。