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テイマー少年の進路について

(さて…シュウ君はどこの学科を選ぶのかしら。)


 説明が終わった後…希望を提出する紙を生徒達各々に配り始めた。そして…私だけは何故か渡されなかった。私はイラッとする。


(あー、うーん…確かに私は魔物だし…私は従魔である以上問答無用でシュウ君と一緒にいさせるつもりなのか。だったらそれこそ面倒臭いから学校通わせなきゃ良いのに。)


 私はどうすることも出来ないのでシュウ君がどこを希望するのかジーッと見ることしか出来ないのであった。最も、確かに先生に聞けばそう言った返答は返ってくるだろうが…それ前提で先生に聞かない辺り、やはりマイの前世からの人間拒絶は持ち寄ってしまっているようである。


「うーん。」

「シュウ君どうしたの?」

「えーっと、あれ、お姉ちゃんはこれ書かないの?」


 私の机に提出用紙が無いことに疑問を思ってかシュウ君が聞いてきた。


「あー、私は結局従魔だから選択肢はないみたい。シュウ君が行く場所に行かされるんだと思う。」

「え…うー…」

「うん?」

「ぼ、僕…何が良いか分からないから、お姉ちゃんの行く先を参考にしたかったんだけど…。」


 あちゃ。これはこれで不味い。シュウ君は人間である。魔物ではない。私が生きたい方向が仮にあったとして、それに付いていくなど不可能である。


「はぁ…まあ、仕方ないかー。」


 シュウ君とは逆の方向から声がしたが、アリア様がため息を付いていた。


「どうかしたんですか?」

「あ、マイさん。私魔術科確定だからなんだか逆に疲れちゃって。」

「え?」

「私、シュウさんが羨ましく思います。だって自分で自分の道を選べるんです。私は師匠もいますし…お父様、お母様からも貴族として魔法は使いこなせるべきと言われていますし…」

「えーっと、私は人間についてあまり分かりませんが貴族の場合って、何と言うか…立ち振舞いとかそう言った物とかも学ぶのでは?」

「それは勿論です。ただ、グルトナ学校は平民の学校です。そう言うものはありませんし、既に講師として学んでいます。寧ろこの学校では魔法を学ばされるだけに来ている感じですし。」

「そうなんですね…。」


 貴族事情は前世今世含めて私は分からない。ただ、自由がない。これは人生として致命的…そう考えざるを得ない。私も現状振り回されている感じしかしないが…ぶっちゃけこの成長スピードなら100年後でも挽回は効くとは思う。更に、私は他は気に入らないがシュウ君の側にいると言う根本目的は果たせている。そのレールは自分でひいた。アリア様には自分で選んだものが全く無いのだろうか?


「うーん…」


 かくしてシュウ君は未だに悩んでいる。それに気づいたのか…先生がシュウ君の側にやって来た。


「おや?まだどの欄も埋まっていないじゃないか?」


 記載欄は行きたい学科だけではなく何をしたいかも書く欄があった。ミスマッチを防ぐためだろうか?


「うーん…僕、どこが良いかいまいち分からない。」

「…確か君は令嬢様の護衛も任されているんだっけ?」


 先生は小さく声をかける。やはり、ムサビーネ夫人が色々面倒臭い情報を先生方に流しているらしい。小声と言うことは生徒には秘密なのだろう。


「一応…」

「確か既にEランクハンターとしてお金も稼いでいるみたいだし…だったら無難に武術とか魔術とかを学ぶのはどうかな?別の先生からも聞いたけど魔力もあるみたいだから魔術科に進んで令嬢様の護衛をしながら学ぶと言うことも出来る。ただ、令嬢様自身が魔術を極めておられるようだし…近接護衛としては武術かもしれないね。」

「あーうー。」


 シュウ君は難しい文字の羅列処理が尽く苦手である。理解してしまえば色々早いのではあるが…これではパニックを起こすだけである。いや、私にしてみれば以前問題な感じがした。


「シュウ君?自分で考えた方が良いんじゃない?」

「あ、うん。考えます。」

「そうか。まあ、人生を考えるには時間が掛かるからね。まだ時間はあるし、ゆっくり考えなさい。」


 先生はそう言って立ち去った。私は仕方なしにシュウ君をフォローすることにする。


「どう?分かった?」

「全然。」

「じゃあ私が噛み砕くと…シュウ君は結局何がしたい?」

「え?」

「一回どっかのババアや先生や魔法やアリア様やハンターやテイマーや私も含めて全部消しましょう。」

「え…それじゃあ僕は何もないよ…?」

「違う。それは勝手にそうやって思い込んでるだけ。だってシュウ君はシュウ君だもん。いまここにシュウ君がいるんだから何もないはずがないの。」

「うーん。」

「取り敢えず…シュウ君はこれから何をしたい?それだけ。簡単でしょ。この際だから…学科も消しましょう。うん。」


 シュウ君は考えた。私は回りを見る。既に書き終わったのだろうか。提出しに行く生徒もいた。提出が終われば今日は解散。明日は学校紹介だろうか?見学みたいな?その間に先生方が配属とかを決めたりして学科が決まるのかな?前世一応教員免許は持っていたような気がしたが、使っていないのでそこら辺よく分からない。


(アリア様は決まっていると言った割には帰らないのね。)


 アリア様は何故かチラチラこちらを見ている。よく分からないが、シュウ君が気になるようである。


「僕は…やっぱり、お姉ちゃんについてもっと知りたい。」

「え?」


 シュウ君が独り言を呟いた。不意ところな内容的に私は驚く。


「僕は、お姉ちゃんに助けられたから生きてるの。だから、お姉ちゃんが困ったりしたら僕が助けるの。その為にはお姉ちゃんについてもっと知りたい。」

「あー、うん…とはいってもなぁ…私も私のこと全然だし…そんな学科無いでしょ。」

「いえ、あると思いますわ。」

「はい?」


 横からアリア様が乱入してきた。どうやら放っておけなかったらしい。シュウ君は回りから常に心配されているのだろうか?


「確か、グルトナ学校には生態科と言うものがありますわ。勿論、マイさんの種族について説明があるとは思えませんが…様々な生き物や魔物について学ぶ場所だと聞いています。」

「あー、そう言えばミサさんも似たようなこと言ってたかなぁ。」


 ミサさんとはデレナール領のハンターギルドに勤めている受付嬢である。簡潔に説明すれば過度の魔物オタク。確か彼女もこの学校出身であり…魔物について勉強するため生態科に言ったような話だったと思う。随分前の話のような気がしてあまり覚えていないが…。


「寧ろ私について説明があったら願い下げなんだけどなぁ。」

「生き物を学ぶ上では私達人間について学ぶ必要性もありますし、マイさんも勉強になるかもです。」

「あー、まあ…そう言うこともあるかぁ。」


 人間が私達アルビトラウネ族を現状何処まで理解しているか…それは知っておいた方が良いかもしれない。知りすぎてると悪用されるかもだし。


「うん!じゃあ僕それにする!」


 と言うことでシュウ君も手を動かし始めた。ただ、希望動機が「お姉ちゃんについてもっと知りたい!」と言う記載だったので流石に直させた。私が恥ずかしすぎる!別の意味で。


「うん?護衛をするのに生態科なのか?」


 先生に早々突っ込まれてしまった。


「私でしたら心配いりません。寧ろハンターとしては生態科は必要なのでは?」


 アリア様が突っ込んだ。まあ、先生も生徒の未来を決める資格はない。そのまま資料を提出し教室を出た。


「お姉ちゃん、アリア様。ありがとう。」

「うん?私何かした?」

「これぐらい朝飯前だから大丈夫です。」


 シュウ君はどんどん周りの女の子に依存していくのであった。

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