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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
グルトナ領立学校
357/365

初めての通学

(さてと…何処だったかしら。あ、ここここ。)


 私は学校ではなく、どこぞの宿の前に来ていた。本来魔物が単独で街中を歩くのは良くない。何か問題が起きたとき誰が責任を取るんだとなるからである。その為、私を含む従魔は基本的にはテイマーと一緒に行動することになる。なので本来であれば、守衛のところで私はテイマーが来るまで待つのが帝石だが…私の扱いが女の子のため完全スルーであった。宿の中に入り少し経つと5人が上から降りてきた。剣士のリールさん、盾のベイルさん、弓のウィリーさん、魔術師のメリーさん、そしてテイマーのシュウ君である。本来シュウ君は利便性が良いこの宿で泊まれるほど贅沢は出来ないのだが…彼ら栄光パーティーの一員として優遇されていた。


「あ、お姉ちゃん!おはよう!」

「おはよう。今日は全員正揃(せいぞろ)えですか?」

「ああ。今日からシュウはリグルト学校に入学なんだろ?流石に保護者として学校に付き添うことは出来ないが、途中まで一緒に行こうと思ってな。」


 栄光パーティーリーダーのリールさんがそう言った。この時間帯では既にハンターの依頼はある程度底をついているはずである。普段なら、シュウ君とのみ合流で他のメンバーとは予定を合わせたりしない限り会えないことが多いのであった。シュウ君はまだハンターEランク。初心者向けの依頼は選ばなければ何かしらは転がっているため、私がこの街に来る時にはシュウ君は待っていることが多かった。まあ、先に依頼を回収して待っていることも最近は増えてきた気がするけど。


「あー、ありがとうございます。じゃあ、シュウ君?準備出来た?」

「うん!大丈夫!」


 入学式において一番厄介なのは…必要なものを揃えることであった。いや、ここは日本ではない。正装とかそう言ったものはないし…教科書的なものは何もなかったので多分別途指示があるとか配られるとかそんなものだろうが…必要なもの自体が良く分からない。シュウ君は簡単に言えば売られた男の子。保護者はいない。要は助けてくれる人がいないのである。私は魔物のためこのデレナール領の子供について良く分からないし、栄光メンバーもハンターであるため親としてのサポートは出来ないのであった。


「確か学校はこっちだったわよね。」


 魔術師のメリーさんはシュウ君を除いて一番若くまだ20歳前後。更に、今日からシュウ君が入学するグルトナ学校の卒業生である。学校については彼女が一番詳しかった。


「お姉ちゃん。僕…学校生活大丈夫かな。」

「うーん、まあ私もいるし…なんとかなるんじゃない?」

「俺思うがさ。何でマイ、お前も入学するんだ?お前、入学する意味ねえだろ。魔物の癖に既にそこいらの人間の大人より優れてるじゃねえか。」


 ベイルさんが私に突っ込んだ。


「うーん、優れてるかは分からないけど…魔物が学校に行く意味は分からないですね。ムサビーネ夫人にでも聞いてください。」


 私が学校に行く…いや、行かされる理由は細かいところは全部捨てて、全部この街の領主の夫人が悪いと私は勝手に考えている。取り敢えず、あの夫人が何考えているか良く分からない。私は前世他者に振り回されることにうんざりしていた記憶があるのだが…今世…魔物になってでさえも同じ運命になっていることに苛立ちを感じているのであった。


「ここが学校?」

「あー、懐かしいなぁ。」


 ウィリーさんと、メリーさんが呟いた。ウィリーさんはシュウ君と同じく孤児院出身である。本来孤児院は学費を一切払ってくれない。親がいない子供が孤児院に行くので孤児は学校に100%行けないのである。いや、学校は基本無料らしいが…孤児院が貧乏のため、自分で稼げる10歳になると孤児院から追い出されてしまう。シュウ君も被害者である。その為、孤児院出身は10歳になったらハンターになり自分で稼いで生きていく以外選択肢がないのであった。


(はぁ。まあ、シュウ君の生活費は私がなんとか稼いで…学校には行けるようにはしたんだけどね…どちらにしても、今後を考えてシュウ君はハンターとして働きながら学校生活と言う可哀想な立ち振舞いになっちゃったけど。)


 そもそも論、シュウ君は私が助けなければ森の中で魔物に食い殺されるか餓死するしかなかったのである。それを拾ってしまった以上、私にはシュウ君を育て上げると言う責任感が生まれてしまっていた。それこそ、マイ自身の固定概念であり、それ故、マイを振り回す原因なのだが…本人は気付いていないのだった。


「じゃあ、用が済んだら俺らはギルドにいるからな。いなかったら宿にいる。」

「うん!ありがとう。」


 かくして栄光の4人は帰っていった。彼らにとってシュウ君は栄光のメンバーなだけなのだが…若干親バカ要素が混ざっているようであった。


「はぁ。まあ、じゃあ行きますか。」

「うん。お姉ちゃん、行こう!」


 かくして、10歳の男女…一人は見かけだけ…は学校の門を(くぐ)るのであった。

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