先輩雌花の限界
(元々こんなに少なかったかしら私達…?)
気付いたら夜。その日も山の中で休み…更に数日が過ぎる。雄花の数も初めは何十人といたのに、気付いたらちゃんと生きている雄花は1匹のみ。花がもげた雄花も1匹いるがそれでも計2匹だけであった。雌花は私は健全…そして、一番重要であった雌花は既に限界を迎えようとしていた。
「雌花様?大丈夫ですか?」
「う…きついかも…」
雌花さんの体に着いている葉っぱはぽろぽろ取れ始めている。辛うじて歩いている様子が分かるが…私の今までの経験が、今日中には歩けなくなると物語っていた。
「後どれぐらいの距離なのですか?」
「…半日?」
『姫様。彼女は往路の時間を考慮しこれぐらいなら持つだろうと言う前提で計画しておりましたが…想定よりも体力の限界が早く来ているようです。おそらくこのペースでは間に合いません。』
「マジか。」
移動中悪天候もあり移動が遅くなった時期もあった。多分色々な事象と体力の温存見積もりを間違えてしまったのだろう。
「雌花さん?植物さん達が間に合わないのではと…」
「…そう…近道がな…いか、聞いて…れる?」
『ツルを使うしか方法はないんじゃないかな。』
植物はそう返事しているが、雌花さんは反応を示していない様に見える。私は色々察した。
「雌花さん?」
「…うん…?」
「植物の声…聞こえていないのですか?」
「…ああ…そう言えばそうね…忘れてたわ…ガタ来ると…聞こえなくなるのね…」
「…取り敢えず、近道はないそうです。」
「…分かった…わ…。…急ぎま…しょう。」
雌花さんは最後の力を振り絞ってか、前へ進んでいく。私も、生き残った雄花もそれを心配そうに見ながら前へ進んでいった。
「俺も、他の仲間や雌花様みたいに…」
既に花が捥げてしまった雄花はそう呟いていた。私的に花が粉砕した雄花や雌花が完全に復帰する方法はないのではないかと思っている。いや、今後技術が発展すればあるのかもしれないが…とにかく私達にとっては花が心臓。取れたら終わりであった。そして、午後大分遅くなり…最悪の事態が起きた。私は少々前を歩いて周りを警戒している。雄花がもう殆どいない上、敵はとんでもなく強くなっている。雄花に頼ってはいられない。雌花さんも満身創痍。私がやるしかない。そんな時、後ろから「ドサッ」と言う音が聞こえたのであった。
「雌花様!!」
私が振り向くと雌花さんが倒れていた。体は枯れ葉状態。動けるだけでも凄いのであるが…やはり限界みたいである。
「く…」
雌花さんは手を使って何とか前に進もうとするが、動けなかった。
「後どれぐらいの距離なんですか?」
私は誰でも良いので取り敢えず聞いてみた。
『姫様。先ほどからペースが大分遅くなっています。このペースでは徹夜して深夜になるかと。』
「マジか。」
残り6時間弱か。私の経験が言っている。無理だと。間に合わんと。
「このままだとどうなっちゃうの?」
雌花さんには聞こえないだろうが…雄花さんには聞こえてしまうだろうが…小声で聞いてみる。
『雌花が枯れる前に種を植えないと種を植えれないため木に成れません。どこぞの情報だと…確か…雄花が代わりに持っていくこともあったみたいですけど、その途中で襲われて目的の場所で植えれないことが多く…中途半端なところで植えてしまい枯れたり子孫が残せなかったりする時もあるとか。』
要は目的地に着く前に雌花さんが力尽きたらゲームオーバーなのであった。万事休すなのか…雄花さん達2人もどうすれば良いか話し合っている。背負ってごり推すかと言う案も聞こえた。
「しかし、俺はもう彼女を担いでツルで引っ張れる程、力は残ってねぇ…。」
花がもげた雄花さんはツルを制御出来ないみたいである。もう一人については食料不足で体力があまりないとのこと。ここら辺は魔物が強いため、追い払うので精一杯。要は食事をしていないのである。私達は植物のため光合成で養分を作れるが…普段から光合成だけで生きている雌花と違い、狩りをメインとしている雄花ではどうやら地面がどんなに腐葉土でも十分な養分を蓄えることが出来ないみたいである。いや、やり方を知らないのかも知れないが…どちらにしろ移動速度重視だったし…休憩も少なかった。
(森の奥地は雄花にはきついのね。)
私は極力ちょっと脇道を通ってでも日が当たる場所優先で歩いたりしていた。この微妙な立ち回りの違いが結構出ているようである。




