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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
「花」の結婚式
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雄花と雌花の結婚式

「おいカリン。そろそろ始まるぞ。雌花をつれてこっちに来い。」


 どうやら結婚式が始まるらしい。カリンと私は立ち上がり会場に向かった。いや、会場と言っても目の前で若干開けた場所だけなのだが。


「結婚式って結局何するの?」


 私は前世結婚した記憶がないし、誰かの結婚式に行った記憶はあるが他人に無頓着が故記憶が曖昧だった。しかも、今回は魔物の結婚式である。全く無知である。


「それが…僕も知らないんだ。結婚式なんて数千年に一回位らしいし。」

「へぇ。生態系維持云々言ってたけど私以前の問題じゃないの?」

『姫様。確かに雌花の数が少ないがゆえ結婚はめったに起きませんが、あくまでここの雄花達はの話です。各地雄花の拠点は点在しておりますので合計すればもっと多数に渡ってあります。』


 植物の言い分をまとめると…私は前世宇宙好きだったのでそれで例えるが…超新星爆発が起きる星など寿命が1000万年単位なので本来100年も生きれるか分からない人間が観測できるわけがない。しかし数は膨大である。その為宇宙のあちこちで爆発が起きれば観測出来ると言うわけである。それと同じ原理らしい。


「まあ取り敢えず勉強がてら見学しましょうか。」

「うん。」


 私とカリンは他の合間をぬって新郎新婦を見ることにした。私達は見かけ年齢が12-13歳の為回りより小さい。それを配慮してか知らないが、他の雄花が前を譲ってくれた。


「では、お2人の結婚式を始めます。」


 司会者なのか?の雄花が話を進めていく。この2人が何処で出会ったとかそんな話が流れていた。私は興味がないのでボーッとしていた。そして人間との式典と似たような点と異なる点の違いでも探していた。私達は魔物である。しかし、うろ覚えでしかないが共通点もあったりして面白いなぁと考えている私であった。そして最後の最後になって飛んでもない相違点があり一気に目覚めた。


「最後にお2人にはここで受粉をして貰い種子を作って貰います。片方はここへ埋めると言うことで宜しいですのよね?」

「ああ、俺はここに残る。彼女については兄弟に任せる。頼んだぞ。」


 初めはボーッとしていたが意味を理解し始めると「え、え?どう言うことどう言うこと?!」となってしまった。人間換算で受粉イコール…いや分かるだろうから言わないし、第一私の知ってる植物は受粉して直ぐ種が出来るわけがない。突っ込みどころ満載であった。


(しかも新郎はここに残るってどう言うこと?兄弟に任せるってどう言うこと?結婚したら一緒に過ごすんじゃないの?)


 人間換算で別居と言うことなのだろうか?しかし、そうであっても大々的にそう発言するやつがいるのだろうか?謎である。


「ねえカリン?ここで種を作るの?」

「そうみたい?」


 カリンも良く分かっていないようである。たかが数百年程度生きただけでは結局生態系は理解出来ないようであった。ちょっと離れたところにケリンさんがいて彼を見つめたが、彼はこっちをチラッと見て…植物が伝達したのだろうか…まあ見ておけ程度で新郎新婦の方を向いてしまった。私は嫌な予感しかしないが…彼らを見ることにする。雄花は自分の手に自身の花粉を着ける。そしてその花粉を雌花の中にある雌蕊(めしべ)の先…柱頭にくっ付けた。雌花は「アウッ」っと出してはいけない声を出した。


(はい?冗談じゃないわよ!私達にとってそこは急所の1つよ?!それをこんな大所帯のところで触られるわけ?!)


 人間換算で何をしているかはここでは言ってはいけないレベルなのである。私はかなりの怒りを露にしていたのか、カリンから声をかけられた。


「お姉さん、どうしたの?」

「え…あ、なんでもない。」


 そして更に思ったことだが…どうやら雌蕊の先を触る行為は雌花にとっては大惨事だが、雄花にとってはそこまで気にしないことなのかと思った。実際雄花の雄蕊や(やく)など雌花は興味もないし触ろうとすら思わない。なので雄花に雌花の気持ちなど分からないのではないかと思った。


(うん。私は絶対に結婚しないわ。)


 私は再度生態系崩壊に向けて勝手に舵を切ったのであった。その時、目の前が色々光始めた。


(え、何々?!)


 雄花は全体に、雌花は花だけ光始める。黄色い光。黙視するのが精一杯レベル。私は目を細めながら何が起きているか確認する。まずは雄花。雄花は花から体のありとあらゆる部分が光輝きちょっとずつ消えていった。


(違う…消えたじゃない。雌花の花に吸収されていってる?!)


 雌花の柱頭に雄花の手が触れたままだった。そこを吸収の起点として雄花はどんどん吸い込まれていく。例えが間違っているかもしれないが、交尾したカマキリの雄が雌に養分として食われるのと同じように…。


(雄花が結婚すると…末路は雌花に食われるの?雄花ってそれを望んでいるの?長生きしたいんじゃなかったの?)


 私は矛盾だらけの結末に頭がクエッションマークだらけになるのであった。更に驚きはまだまだ続く。雄花を吸収した雌花の花が変形を始めていた。


(あれは…花じゃない?実がなってるの?)


 どういう原理かは全く分からないので説明しようがないのであるが…気付いた時には光っていた光沢が消え…雌花の頭には顔の半分ぐらいある木の実と言うものなのだろうか?が2つくっついていた。重いのかどうかは私には分からなかった。

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