新郎と新婦
「で、肝心の雌花はどこに?」
「待て待て、今向こうで他の雄花が話し合っている。その後だな。」
「雌花優先にしてくださいよ。レディーファーストです。」
「なんだその良く分からない言葉は。とにかく、あんな雄花の群れに婚約者0の若い雌花が乗り込むのは危険すぎる。少し待ってろ。」
「えー。」
仕方なしに私はケリンと待つ。
「結婚式はここでやるのですか?」
「いや、それはない。ここで儀式をやると色々問題だからな。取り敢えず挨拶と言った感じだ。本来おばあさまの木にも挨拶すべきだろうが…あの雌花の住みかも相当ヤバイ場所らしいし…そもそもマイと同じく既に力尽きてるらしい。」
「ふーん。」
全部ではないが、大抵雌花が独立するときにはおばあさん木は力尽きていることが論理的に多い。この原理はマイの行動を見れば分かるが…現状は考えなくて良いだろう。
「お、仲間が減ってきたな。大体挨拶を終えたか。行ってみるか?」
「うん?」
とのことでおじいさま木の下の方に移動する。若干雄花が残っているが大分減っていた。
「あら、さっきまで向こうにいた子?貴方も人見知り…」
見かけ年齢30歳程度の雌花が私に声をかけてきた。1800年生きているケリンさんでさえ見た目年齢が22歳位である。この雌花は何年生きているのだろうか?
「え、貴女…雌花じゃない!なんでこんなところにいるの?しかもまだ全然幼そうだし…おばあさま木のところに帰りなさい!ここは危ないわよ!」
結構気が強いタイプみたいである。私は数歩下がった。こう言うタイプは苦手である。
「落ち着いてくれ。特別に招待したのだ。彼女とは長年の付き合いだからな。ただ、数百年前に彼女は既におばあさま木を失っている。だからここで教育と言うわけだ。」
「止めときなさい。雌花には雌花としての生き方がある。雄花が干渉すべきではないわ。第一成熟までまだ相当年数必要でしょう?」
私は今大体350歳。成熟は大体1000歳らしい。自立は別に1000歳と言うわけではない。私だって90歳ちょいぐらいで自立してる。2人で言い争いをしているため私に出る幕がないのだが…ある雄花がやってきた。
「どうしたんだい?」
「あ、ちょっと聞いてよ。この雄花雌花の育成方法なっちゃいないわ。」
「こっちも分からないことを吟味してやってるんだがそれにケチだけつけられても困る。」
「うーん…取り敢えず喧嘩は止めよう。この話は平行線な気がするし、本人が決めることじゃないのかな。」
私達の性別は胸の大きさと花の形でほぼほぼ確定である。厄介なのが全員見た目が女の子なり少女なり女性であると言う課題ぐらいか。知識の無い人間から見れば性別など分からないだろう。なお、この雌花はEカップはあるんじゃないか位の巨乳であった。私はB位だがそれでも前世人間の男性であったため若干邪魔になっている。これ以上は止めてほしかった。
「分かったわ。貴方がそう言うなら。」
「ケリンさん、お知り合いですか?」
「うん?ああ、俺の兄だな。人間で言うところの新郎にあたる。」
「あ、えーっと…お2人ともご結婚おめでとうございます。」
「あら、ありがとう。貴女も良い相手が見つかると良いわね。あー今はまだ早いか。」
そして2人は去っていった。雄花の方が若干若そうであった。
「ケリンさん。彼らはおいくつなんですか?」
「うん?」
「いや、結婚適齢期ってどれくらいかなって。」
「適齢期?あー、どれぐらいの年齢が良いかと言うやつか。厳密にはそんなものはないが…早く結婚した方が子孫は大量に残せるだろうな。外にも寿命とかあるから雄花は急ぐのだが。」
「寿命?」
「そうだ。雄花は大体3000年が限界と言われている。そこまで生きたやつを見たことがないのだが…あの兄が大体2100歳ぐらいで俺らのおじいさま木でかなり早く生まれた奴だからな。」
「3000年かぁ。途方もないなぁ。後2700年も生きてやること無いわ。」
「おいおい。さっきも言ったがそれは雄花の話だ。雌花は寿命が分からん。実際兄貴の新婦になる奴は聞いた限りで8400歳だからな。」
「は?」
年の差結婚にもほどがあるだろ。
「は、じゃないだろう。雌花は見つけるだけでも一苦労だ。しかもお前みたいな性格があいつにもあったらしくってな。出会っても結婚回避ばっかりだったらしい。」
「独り身の方が楽ですしね。」
「はぁ…お前が誰と付き合うかは知らんが…そいつも苦労しそうだ。」
ケリンさんは首を横に降った。私自身さっきの担当云々からおじいさま木はケリンかカリンを私とくっつけたいと思っているのではと考えていたが…なんか認識のずれが有るのだろうか?
「まあ、雌花の場合結婚するとその寿命を雄花と共有することになるからそれが嫌なのかもしれないがな。」
「共有?」
人間換算で結婚すると男性の寿命が伸びて女性の寿命が縮まると言うことなのだろうか?
「ああ、おじいさま木は既に12000歳を優に越えているが…雄花の寿命は3000歳位だと言っただろ。要は雄花から成長したおじいさま木は本来既に寿命が来ている。しかし生きていると言うことは、相方の雌花から寿命を分けて貰ったと言うことになるだろう。」
「あー、確かにそうですね。」
『分けて貰ったのう。雄花も雌花も子供を作るには最低でも1万年は生きる必要があるのじゃ。』
「は?」
「おじいさま。聞いておられたのですか。と言うよりマイ。おじいさま木に失礼だぞ?」
私は長すぎると絶望していたが…よくよくおばあちゃん木は2万年生きてるわけだし今さら驚くのはおかしいのであった。
(いや、寿命の話じゃなくて子供作るまでに1万年もかかるの?良く絶滅しないわね…。)
マイに突っ込まれたので返すが…仮に2万年が寿命として1万年から子供を産めるのであれば生産年齢は1万年間である。そこまで育てば早々殺されないだろうから子供など飛んでもない数産めるのであった。




