人間との共生
(うーん、あの孤児院色々となんとかならないかなぁ。)
定期的に孤児院行くのは良いが、シュウ君の健康面が不安である。後、初めのうちは警戒していた子供達も定期的に遊びに来てくれるお姉ちゃんという認識になったのか…私が行くと絡んでくるようになっていた。孤児院の先生は何人かいるようだが、下手に絡まれて花を傷つけられると私の命に関わる。その事は先生方に伝えておき、子供達に花だけは触らないように何度も伝えていた。私は魔物である。身の危険を感じたら反撃して殺してしまう可能性さえあるのだから。そうなってからでは遅い。
(服なんて前世以来だけど…意外と邪魔ね。)
なお、服装についてだが、普段森の中で過ごす時には光合成しにくくなるので服を脱いでしまっている。ブラジャーもどきも全部葉っぱである。服があるだけで効率が悪い。ただ、私の身体構造が本当に10歳ぐらいの胸が膨らみかけた女の子なので、半裸で街に来るのは流石にやめて欲しいと色んなところから言われてしまった。それゆえ街中では孤児院から貸してもらっている服を着ている。だが、前世も今世もゴワゴワした服は違和感だらけであまり好まないのである。孤児院の服はまさにそれであったため、慣れるまではかなり苦労した。孤児院に行く度に先生方が服を洗ってくれて別の服を貸してくれるのはありがたいのやら申し訳ないのやらで一杯であった。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!今日は何して遊ぶー?」
「鬼ごっこがいいー!」
殺す気か!私は走れない。走ったら転んでしまう。こういう時には、逃げる側の時は木の上に登り…追いかける側の時はツルを使って捕まえていた。まあ、怪我させないように注意はしたが…対人もいつかは考えられる。子供相手とはいえちゃっかり修行するのであった。
「うふふ、皆んな元気で良いことですね。」
「すいません。私魔物なんですけど。どうして、子供の…しかも人間の子供の面倒を見なくちゃいけないんですか?」
「あら、貴女も楽しそうじゃない。それに皆んなもお姉さんと遊ぶと楽しいとか言っていますよ。」
ハンターになるには10歳以上が条件である。学校とかも10歳かららしい。孤児院には自立するまで面倒を見るという義務があるが、10歳ぐらいを境に自分でも稼げるようになるため卒業指導兼卒業するというかさせるらしい。どうしても孤児院に残りたい場合は入居住費を取るとのこと。最も、ハンターイコール魔物退治ではなく薬草採取とかもあるだろうから、ちゃんとお金は稼げるらしい。孤児の場合学費など払えるわけがないので大体がハンターになるとのこと。どの世の中も貧乏人に人生を選ぶ選択肢などないのであった。
(シュウ君が10歳になったらしばらくはハンターとして尽くすのかな私。)
個人的にはもっと安全な職業についてほしい。そう祈るばかりである。私は襲ってきた魔物を駆除しているだけ、自ら相手をやりに行く必要はないのである。何も食べなくても生きていけるのだから…下手なリスクはゴメンである。そう思いながら数ヶ月間生活していくのであった。今度の私の拠点は人間の街道が近いということもあり、人が側を通っているという警告はちょくちょく植物から上がっていた。ただ、こっちに敵意はない…と言うより気付いていないとのことなので無視することにしている。それは私の方が人間の居住地の側に住んでいる方が悪い。なので文句を言える立場ではない。ただ、森の中に入ったとか夜間歩いているとか言われたら警戒すると決めている。一般人がすることではないからである。逆に言えば、魔物の報告は殆どなかった。全くではなかったが、やはり人間が住む場所に近いと言うこともあり駆除されているようである。
『姫様。誤解をしておりました。』
「どうしたの?」
『姫様の体質上では、逆に敢えて魔物の敵である人間の側に住み着いた方が安全でしたのね。』
「うーん、まあ人間達の居住地そのものには住めないんだけどね。」
『あーそれ気になる。姫様人間の子供とはいえ仲良くやってるようじゃねえか。そこに住み着いちゃえば良いんじゃねえの?』
「人間の土地は森に比べて痩せてるの。と言うより、舗装されている道に長時間いると養分が全然吸えなくて違和感があるのよね。故郷の枯れ果てた土地より酷い。」
故郷の土地は土の養分が減っていた。無くなった訳ではない。しかし、街道では養分が吸えない。そのため、体への影響が大きいのであった。他にも人間に対して拒絶反応があったりと、私はあそこに住むにはかなり荷が重かった。
『まあ私達は姫様の意見を尊重します。姫様が今の生活を満足しているのであれば良しとしましょう。』
「うん。助かる。」
こんな感じのたわいのない毎日を過ごしていた。ただ、いよいよ事件が起こる。私の命の源であるてっぺんからちょっと左側についている大きな花。人間にしてみれば花の匂いなど、そばに行かないと分からないし…或いは大量にあって初めて気づくものである。しかし、魔物にとっては必ずしもそうではない。私自身もそこら辺はもう嫌と言うほど理解しているし、街中を歩いていてもたまに植物から警告がくる。
『姫様。おそらく姫様に気づいた魔物がいます。』
「わかった。」
森の中ならすぐ駆除である。しかし、ここは街の中。他の魔物使いの魔物となるとすぐ駆除というわけにも行かない。襲われたら別だが。とりあえずは、警告が来たらそこの側に行かないとかすぐ上に逃げれる場所がないかとか探している。ツルで巻くことが出来ればどこへでも登れる。これは一種の強みである。ただ、テイマーの魔物。ちゃんと教育されているようであり、側に行かなければ襲ってくるということはなかった。じゃあ、側に来たらどうか。事の発端である。
ここら辺から本編が始まります。起承転結で言うところの「承」ですね。




