若年雄花の接待
「あ、マイお姉さん。久し振り。ずいぶん早くない?結構遠くに住んでると聞いたし…こんな早く来るなんて。」
「ああ、それがね。」
私は経緯を話した。但し、この女が魔女と言うことは伏せている。この世界について大分分かってきたが、魔女は魔王ではないがそういったポジションであり魔物から見ても危険なのであった。
「マイお姉さんっていつも思うけど、何て言えば良いんだろう。結構変わってるよね。」
「それブーメランでしょ。」
カリンは私と同じアルビトラウネ。アルビトラウネ含む魔物は基本的に人間を恐れている。だから白昼堂々廃れ始めているとは言え、この村に乗り込むなどあり得ないのである。しかし、カリンはこの村の人達と物の売買をして生活すると言うどの魔物もビックリ仰天な生き方をしていた。
「でもあれだよ。マイお姉さんがこんな早く来るなんて誰も思ってなかったから準備が出来ていないよ…。精々1週間ぐらいかと。」
「おい、私森の奥の奥に過ごしてたんだけど。寧ろ一週間と言う見積もり立てる方がおかしい。」
「ぼ、僕が立てた訳じゃないもん。」
「子供同士で何ダベってるのよ。私も混ぜなさい。」
「子供?300年は生きてるわよ?!」
「見かけがチビで私よりも若い実験材料は大人しくしてなさい?ねぇ?」
「………」
魔女の笑みが物凄く怖かった為、私は硬直した。カリンも悟ったらしい。彼にとってみたら雌花に被害が被るのは非常に不味い。人間の女性ではあるが、嫌な予感がしたカリンは話題を変えることにした模様である。
「とりあえず、立ち話もあれだから…確かあそこに僕の行きつけのお店があるからそこで話そう。丁度お昼時だし、人間さんもお腹空いたでしょ。」
カリンが先導して歩いていく。何度も言うが、カリンは雄花であり魔物である。小さい村とはいえ白昼堂々歩いて良い訳が無い。しかし、村の人々は何も抵抗がなく…人によっては「あら、カリンちゃん。今日は何を持ってきたの?」とか声をかける人までいた。
「あ、今日はお姉さんが来てくれたからお出迎え。」
「あら、珍しいわね。貴女のお仲間は私達と相性が悪いって。」
「うん。だけど、マイお姉さんは僕と同じで人間に対してもそこまで嫌悪とかしてないから。じゃあ、僕はあそこのお店に行くね。」
カリンは帽子や服と言ったものを一切つけていない。要は魔物の姿で歩いている。それでいてここまで馴染んでいるのはもはや奇跡レベルであった。
「貴方…本当に人間と馴染んでいるのね。」
「うん。マイお姉さんもそうだったよ。」
「そうだったかしら…。」
私が疑問視をしている間に、とある店屋に着いた。質素な村である。店屋もそんなものであった。
「お邪魔します。」
「お、カリンじゃんか。おや、珍しいね。いつもは1人なのにさ。」
「今日は特別。いつもの頼める?」
「あいよ。他のやつはどうするんだい?」
「えーっと、じゃあいつものもう一つで…人間さんはそこにメニューがあるから注文してください。」
「あら?何故私はマイと違って注文してくれないのかしら?」
「…僕やマイお姉さんには合うと思うけど、人間さんには合わないものだから。」
「…?まあ良いわ。メニューを貸してくれないかしら。」
私もカリンが言った意味が分からなかったが、注文したものが来て直ぐに分かった。結論を言えば、一般の大人が食べる量の三分の一以下の量であった。私達の体格は子供であるが、それだけではない。満腹という概念がないという特殊な体であり、しかも食べ過ぎると花から蜜が溢れてしまう。人間換算で蜜が溢れるはおむらし状態。大量に食べるということは放尿しながら物を食べるということになってしまうのである。私達は人間の大人が食べる量の半分でさえも場合によっては漏れてしまうのであった。カリンは幾度もこのお店で食事をとっているためもはや店員の方がそれを理解してアルビトラウネ特注の料理を作ってくれているのであった。
「なるほど。確かにこれは私には全然足りないわね。」
魔女も理不尽な理由ならカリンを火祭りにしようとしていたみたいだが、納得したようであった。
「へえ、質素の村の割には食べ物はちゃんとしてるわね。」
「一応ここは2領の貿易中間地点だから。ただ、村長曰く最近売れ行きが低迷らしいけど。」
「そうなの?」
「うん。2つの領が貧困になってるんじゃないかって。どっちの領も昔に比べて来る量が減ってるらしい。」
「ふーん。」
そもそも論この村は、デレナール領ともう片方の領が交易をするために作られた村である。要はその2領が貧困で交流困難になったら自ずとここはやっていけないのである。或いはここよりやはり王都の方が売れるとなれば同じ。そもそも当時ここを開拓するメリットが個人的曖昧に聞こえたので…長い目で見るとこうなるのも仕方ないのかもしれない。
「貴方は食べてはいけてるの?」
「一応光合成も出来るけど…ここら辺の土地は枯れちゃってるし…魔物も少ないし…うーんって感じ。」
「だったら私の拠点の側にでも来る?土は保証するわよ?」
私は何気ない流れで言ったつもりなのだが…カリンは顔を赤らめた。
「ぼ、僕…お姉さんにそぐわないし…マイお姉さんの住みかじゃ僕死んじゃうし…お姉さん頼りになっちゃうよ…。」
「別に良いわよ。私暇だし。」
「うーん、マイちゃん?あんた男の使い方なっちゃいないわね。」
「どう言うことですか?」
私は魔女が何を言ってるか分からなかった。そうこうしているうちに植物から連絡が着たらしい。この村はアルビトラウネが訪れると言うことで室内に敢えて観葉植物を置いているらしい。アルビトラウネが植物と会話しやすいようにである。カリンが30歳ぐらいの時には植物と会話するのはまだ早すぎて会話不能の植物も多かったみたいだが、今は私と同様誰とでも話せるみたいである。
作中一番しっかりしているんじゃないんですかねぇ。この雄花。まあ書いている私もわかりませんが。




