魔女にとっての普通な行動
『姫様。丁度今伝言が届きました。』
「伝言?」
『はい。ケリンと言う雄花を御存知でしょうか?』
「ケリンケリン…ああ、いたわね。そんな奴。」
『彼が雌花の姫様にお見せしたいものが有るとのことです。』
「見せたいもの?何?」
『何でも姫様はまだ雌花として未熟だから雌花として知っておくべきものを教えるとかどうとか。言葉じゃ難しいから現物を見せたいとの事。』
「はぁ。また厄介事持ってきそうな感じかしら。あー、でもあの糞やろう逃げたら地の果てまで追っ掛けて来そうだし…善処だけするわ。」
『ではそのようにお伝えいたしましょうか?』
「うーん、行く行かないの前に…遠すぎるのよ。」
ケリンさんが拠点にしているおじいさん木はデレナール領から数日かかる距離である。そしてここは森の奥深くであり…私があそこを出てから100年単位が経ってるため…色々点在したし、言わばここが何処かわからない。植物の案内があれば行けるが、飛んでもなく遠いと言うことには間違いない。
『それはありますね。おそらく1000km以上離れているでしょう。今日の明日で行けませんが…見せたいものも早急云々ではないみたいです。』
「えー、流石にそんな距離無理なんだけど。フェンリル様連れてきてよ。」
無茶であるが愚痴った。どうしたものか。
「何?どっか行きたいの?」
「え…あー、植物から連絡が来てね。来て欲しい言われたんだけど遠すぎるのよ。」
「何処?」
「デレナール領って知ってるでしょ。昔私が居た場所。あそこから数日離れた場所。」
「何かあるの?」
「知らない。ただそこにいる雄花が…」
しまったと思った。魔女の目が輝いたのである。
「お、と言うことはそこに行けばサンプルに会える?」
「サンプルって?」
「貴女の仲間よ。」
「…いるいないと言えばいますが…止めといた方が良いのでは?昔の記憶なのであれですけど、あそこの森は人間が立ち寄ったら容赦なく殺されると思ってください。街道は例外ですけど。」
「それは面白そうね。私を殺そうとした奴らを根絶やしに…」
「止めてください。」
アユミさんならアルビトラウネの住みかを一瞬で焼き野原に変えれそうなので警告した。
「じゃあさ、そこら辺まで貴女を飛ばしてあげようか?転移魔法を使って。それなら楽じゃない。」
「で、本音は。」
「私も向かってサンプリングよ。貴女の側にいれば襲われないでしょ?」
「アユミさん。気付いていないなら言いますが…私を人質にして森を徘徊しようとしてませんか?」
「あらー、そんなこと一言も言ってないわよん。」
頭では考えていますと言う顔をしていた。この魔女も終わっている。本当に前世日本人なのかこいつは。
「はぁ…まあどうせデレナール領に幾度も出入りしていた魔女なら彼処には行ったこと有ると思いますし…ただ、何かあっても自己責任ですからね。」
「ホイホイ。じゃあさ、場所をイメージしてよ。記憶辿って転移ポイントにするからさ。」
「はぁ。むやみやたらにあそこへ行くのは止めてくださいね。死体まみれになるのだけは御免だから。」
「分かってるって、相手が何かしてこない限り火の海にはしないよー。」
こいつ絶対何処かで火の海を作ったんだろうなぁと思いながら、行きたい場所を思い出した。アユミさんが私のおでこに額をつけて…そのまま魔方陣を展開。2人は転移したのであった。…余談だが、ワイバーンは後日回収したらしい。
(あら、意外に整備は整ってるのね。)
超久し振りにここに着た。当時名も無き村だった場所は流石に何かしら名前がついているはずなのだが、昔過ぎて名前など忘れてしまっていた。転移した場所はその村からちょっと離れた街道の場所。誰かがいるとビックリしてしまうので、誰もいないところを狙って飛んだらしい。
「ああ、そう言えばここら辺にアルビトラウネの住みかがあったんだっけ。」
「やっぱり来たこと有るんですか。」
村に向かって歩いていく。私が昔身に付けていた帽子や服はもうない。疑似ブラジャーや疑似スカートは履いているが魔物換算で普通に全裸である。
「まあね。確か森の中はアルビトラウネが住んでるから立入禁止だったわよね。」
「ええ。入ったりしてませんよね。」
「どうかしらー。襲ってきた魔物を灰にした記憶なら残ってるわー。」
絶対入っていることだけはわかった。と言うことは、私が魔女に殺されないのは結局前世同じ日本人だからだけらしい。私はこの魔女に対して警戒心は解いては行けないと思った。
「この村は…ボロいわね。」
前…と言っても100年単位で前だが…に比べると、やはりやすれていると思う。まあこんな辺鄙な場所など生き残ってるだけでも奇跡である。
「で、どうするの?」
「うーん、まあ誰か呼べば良いんじゃないかしら。」
「ここに貴女と同じ魔物がいるの?」
「さあ。植物さん。誰でも良いからケリンさんから呼ばれたから来たって伝えてくれないかしら。」
『了解しました。ケリンと言う雄花ですよね。』
「うん。」
そして暫く待っていると…12歳ぐらいの雄花がやってきた。カリンである。私とは歳が地味に近い雄花である。まあ、私は350歳ぐらいで彼は230歳ぐらいなのでどこが近いと突っ込まれそうだが…ケリンさんが1800歳ぐらいだし、それと比較すればの話である。見た目なんて人間換算で1歳も変わらないんじゃないかと言うぐらい。見た目も私と同じ女の子。見た目は。ただ、雄花なので花の形は違うし、胸もまな板である。




