白昼堂々の侵入者
シュウマイストーリー第一部ラストストーリーです。第一部だけでも片付けるのに数年ってどうなってることやら。なお、在庫としては現段階で第二部記載完了。第三部記載開始という状況です。
舞台は一度200年以上先の未来である。私はとある森深くの木々が少ない場所でいつも通り光合成をしていた。年齢が350歳を越えているため体格も大分変わってきている。大分と言っても、見かけ年齢は12-13歳ぐらいの少女であるが。胸は多分Bカップぐらいかな。前世男性であったためそこら辺が疎いのが残念であった。
(よし、今日も光合成は順調ね。)
体格が大きくなるに伴い必要な養分も増えてしまう。その為、腐葉土を求めて定期的に移動する羽目になっていた。定期的と言っても数十年に1回程度で十分だが。拠点が出来れば、動くことが出来る植物にとってそこら辺一帯を占拠できる。1ヶ所に留まり続ける必要性はないのだから。拠点近傍の腐葉土が壊滅したら大幅な移動である。
(うーんー、やっぱり身体全身の光合成は素晴らしいわねー。)
シュウ君と一緒に過ごしていた頃は帽子やら服やらが原因で満足に光合成が出来ていなかった。シュウ君は人間のためこの時代は生きているわけがない。森の中で楽しく一人で生活しているのであった。
(まあ、強力な魔物は時折襲ってくるけど…襲われる前には駆除しているし…強いて言えば毎日が暇なぐらいかしらね。)
元々私は植物の魔物なのである。地面に生えることが仕事。要はそれ以外することがない。そんな日常なのだが…時折面倒事はやって来る。長寿の生命体は私だけではないのである。
『姫様。姫様の拠点近傍に急に人間の気配が生じましたがどうしますか?』
「あん?またアイツ?懲りないわね。」
ここは森深く。人間のハンター換算でBランクの魔物など、うじゃうじゃいる。一般人が入ってくることは不可能なのである。しかも急に現れるはあり得ない。一面植物だらけ。植物の監視下である以上何処かからやってきたなら分かるが急に出てくるはない。
(全く、暇だからって追跡は止めて貰いたいわね。)
私はそう思いながら、植物が指定した場所に隠れながらツルを用いた雲梯で向かっていった。木々の隙間に登り枝の上から地上を見る。前世私は木登りなんて出来ない。しかし、今は腕に巻き付いたツルを手首から伸ばすことにより簡単に木に登れてしまうのであった。勿論、生まれた直後からそんな器用なことは出来なかった。潜在能力があっても経験がなければ無理である。植物の魔物として生きていく上では必須の技術であった。
「あら、そっちから来てくれたのね。」
「私のテリトリー近傍に勝手に来ないでくれませんか?」
「良いじゃないー。つい先日も同じ発言を聞いたわよー?」
「はぁ。」
私は植物の伝達網から侵入者を即把握出来る。そして、侵入者は探知魔法で私を引っ掻けていた。私は侵入者の側に降りる。
「それで実験材料さんは今日も拠点へ連れていってくれないのかしら?」
「嫌ですよ。光合成中に急に横に現れたら心臓がいくつあっても足りません。」
「あらーあなた心臓いくつあるの?解剖させてよー。」
「勝手に殺すな。第一大昔に話したでしょ。私達は植物で心臓らしいものはなかったって。」
「実物見てないとねぇ。ねえ誰でも良いから保存状態が良い死体ってないのー?」
「まず死体を探すな。まさか作ったりしていないわよね?」
「うんもう。そんなことしないわよ。精々森の中探して他にもいないか確認したぐらい。見つけるの至難の業なのよ。ねえ、拠点のありか知ってるんでしょ?」
「聞きましたよ?どっか仕掛けたって。返り討ちだって?」
「あら?魔女の私が返り討ちなわけないじゃない。引き返してあげただけよ?」
この魔女、やはり人間が命名したアルビトラウネを調べているっぽいのである。ただまあ、彼女は強すぎる。植物の声が聞こえる私達は彼女がそばに来れば間違えなく逃げるのである。既に死んでいるおばあちゃん木やおじいちゃん木なら動かないが…彼らの根による攻撃はどうやら魔女でもかなりきついらしい。また、アルビトラウネは頭に大きな花をつけているためそれを狙われることが非常に多い…と言うよりそこだけを狙われる。そのため、アルビトラウネの死骸があっても上半身がないとか…結局全部食べられているとか、体部分は燃やされている等で滅茶苦茶とか…思ったようなものを入手出来ないという話も聞いた。
「それに言ったでしょ?貴女は雌花って聞いたけど…稀に見つけたとしても雄花なのよ。何よその目は?特徴についてはこれだけ月日が経つと色々情報は転がってるから分かるからね。で、ご存知私は転生者を探しているの。雄花なんて貴女達の中ならレアでもなんでもないんだから意味ないってさ。」
「他に雌花がいたらどうするんですか。誘拐ですか?」
「どうしましょうかしらねー。」
「雌花に喧嘩売ったら雄花が総勢で仕掛けて来ますよ?」
「でも貴女にこうやって触れても平気じゃない。」
「花には触れるな!」
私はツルを使って後退した。私達アルビトラウネにとって花は急所である。見られるのも嫌だし、触られるは論外であった。




