雌花「貴方には指一本触れさせないから!」
「おや、坊主。こんなところで休憩か?」
マイが警戒していた男二人が直々にシュウに絡んできたようである。
「うん。お兄さん達はどうしたの?」
この段階でシュウは警戒しているのがバレバレなのだが…大人2人は子供1人を舐めていた。
「いや、お前もう一人いなかったか?」
「あー、お姉ちゃんは今お花摘みに行くって。」
「なら丁度良いな。」
その途端、男性の片方がシュウ君を突き飛ばした。
「うぅ…!!」
「おら、金持ってんだろ!その荷物もろとも置いて…」
結局シュウに指一本以上触れさせていたが…関係無い。気付いたら2人ともツルで羽交い締めになっていた。
(全く。愚かなものね。目先を気にすると他のことが見えなくなるんだから。)
私は裏路地から植物の伝で襲撃状況を見極め反撃していた。私自身、相手の状況を黙視しなくても襲撃出来るように上達していて嬉しく感じてはいるが…やはり不安感は残るので出来るだけ敵はそばにいない状態でやり合いたいのであった。
「シュウ君お待たせ。大丈夫シュウ君?」
「お、お姉ちゃん…痛かったよ。」
「ごめん、ちょっとタイムラグがあって…うーん、今後の課題ね。今度シュウ君に鍛えて貰おうかしら。」
「え、僕?」
その時モゴモゴ音が聞こえた。とっちめた2人が地面に縛り付けられ口を抑えられ苦しんでいる。どちらも何が起きたか分かっていないだろうが…耳は塞いでいないから私達の声は聞こえる。
「シュウ君?どうするのこれ。」
「うーん、誰かに声をかけて連れて行って貰うとか。」
「ツルで巻き付かれてるけど。大丈夫?」
「急に出てきたツルだから誰かが助けてくれたんだと思うんだけど…誰かが分からないから。」
「そう。」
時折シュウ君の演技力も凄いなぁと感じる私であった。盗賊にはツルが勝手に生えてきたものであり私達は関係ないと伝えれたと思う。かくしてそこら辺の人に襲われた旨を連絡して、良く分からないツルで束縛されていると適当に流した上で私達は残りを放置し立ち去った。いや、待ってとか言われたが急いでいるで逃げたのであった。待つと面倒臭いと共に理解していたのであった。
「シュウ君…逃げたいのは分かるけど…もうちょっとゆっくり歩いて…」
「あ、ごめん。」
私は身体の構造上、走れないし早くも歩けない。こんな身体で良く150年も森の奥で狂暴な魔物がいるのに生き残れたものである。
「そろそろ教会?」
「うん。そろそろ。」
教会は聖女がいるから…な訳ないか…ある程度大きいので目立つ。入り口の人達に戻った旨を伝え中に入っていく。聖女様は教会の中らしいがフェンリル様は庭にいるらしいので…植物に聞いた…そっちへ向かった。
「戻ったか。」
「ええ、お陰様で。この国治安が良いのか悪いのか…普通に襲われたんだけど。」
「そうなのか。」
「フェンリル様。聖女様がいるから皆んな良い人だと思っていた。」
「小僧。それは違う。聖女は確かに清らかな存在だが民の心を全て浄化するのが仕事ではない。」
「フェンリル様。逆に聞きたいのですが…あくまで私のイメージです。聖女様がいると言うことはそれに反する強力な敵がいるとかそう言うことだったりするのですか?」
「………」
フェンリル様は黙った。どうやら痛いところをついたらしい。私は絶対にそう言った下らないことには巻き込まれないようにしようと誓ったのであった。キャシーさんには悪いが、面倒事はキャシーさんに勝手にやって貰おうと思う。
「聖女ことキャシーが準備が出来次第…この国を後にする。お前達をもと居た場所に戻さなければならん。」
「準備?キャシーさんもお出掛けするんですか?」
「あの性格で、あの状態かつ我が刺激をしたのが原因で、あやつをここに残したまま我がこの地を離れるのは危険と判断した。」
「何をしたんですか…。」
フェンリル様は取り分けなにもしていないが…教会の連中の都合である…私にはそこら辺のバックグラウンドは分からないのであった。少し待つとキャシーさんがやってきた。取り分け準備と言う割りにはかなりラフである事に疑問を持つ。シュウ君なんて身丈に会わないリュックを持ってるのに。私は魔物だからそこら辺は楽で助かる。
「遅れーました。ちょっと捕まってーました。」
「どうかしたの?」
シュウ君が問い合わせた。
「神父様に数日出ーるなら引き継ーぎ云々言われてしまいまして、同僚や後輩でーも出来ると言ったのでーすが…なかなーか信用して貰えず。」
(やっぱり人間って面倒臭いわね。)
元人間は前世を悲観しながらそんなことを考えていた。やはりマイは人間向いていないのかもしれない。
「全く、話の限り聖女に頼りすぎた末路だけだろう。或いは聖女を良いように使いすぎた末路か。まあ良い。では出発するぞ。」
とのことで、フェンリル様を筆頭に出発した。私は気になったことを聞いてみる。
嘘はよくないですねぇ。。。




