矛盾と矛盾と矛盾と矛盾と…
「でも、お姉ちゃん。お姉ちゃん他にも悩んでない?」
「あー、最近私を見るのも上手くなったわね。」
「えへへ。」
「褒めてな…いや、まあ私のテイマーだから良いのかな。」
「やった!」
「よしよし。で、あれ…なんだっけ。あ、そうそう。あの受付嬢が言ったこと、矛盾してるのよ。」
「矛盾?」
「要は話が噛み合わないの。シュウ君。あの受付嬢は超簡単に言えば私達を雑魚と言った。なのに、この街を出たら私達でも対応出来ないであろう凶悪な魔物がいるみたいなことを言った。」
「えーっと、うーん?」
「要は、彼女の話をまとめると…私達はここに到着する前に魔物に殺されていなければいけないと言うこと。」
「え?」
「シュウ君、シュウ君。一回私達の概念を捨てましょう。フェンリル様とか私が遠距離射撃で相手を倒せるとかそう言うのなしね。私が…面倒臭いからアリア様ぐらいの普通の女の子としましょう。アリア様は魔法を魔女に鍛えられてるけどそれもなしで。」
「う、うん。」
「そんな男女2人が仮に…そうね…この街の結界近傍にドラゴンが5匹ぐらいいたとしましょう。」
「え?」
「もしもよ。だって、凶悪な魔物がいるんでしょ?ドラゴンじゃないにしても。そんなところに男の子と女の子が近づいたらどうなる?」
「そんなことしたら死んじゃうよ。」
「そう。受付嬢はまさにそれを言ったのよ。多分受付嬢も無意識で言ったのね。じゃなきゃあんなすらっと言えないでしょ。」
「うーん、じゃあ受付嬢さんは嘘をついたの?」
「いや。そもそも論、嘘と言う概念が不明瞭だけど。ただ、受付嬢の話の要点を3つにまとめると「私達は弱い」と「外には凶悪な魔物がいる」「私達は外からやってきた」と言うこと。そこは大丈夫?」
「「僕達が弱い」と「凶悪な魔物」?僕ってやっぱり弱いのかなぁ…。」
「さぁ。同年代ならどうなのでしょう。まあそこは置いておいて…この3つを総合すると「私達は凶悪な魔物の側を通ってしまっている」の。そんなわけないでしょ?だから、何かが間違っているとした時に…どこが間違っているでしょうか?」
「えーっと…僕達ってドラゴンより強いの?」
「うんなわけないでしょ。私達が強い弱いは受付嬢が勝手に見て勝手に判断したことよ。シュウ君はこの街の外の状況を見たわよね。」
「うん。」
「魔物いると思う?」
「うーん…お姉ちゃんが倒れちゃったし…いないと思う。」
「そう、正解。」
私はシュウ君を撫でてあげた。シュウ君は嬉しそうである。これが私のやり方である。
「と言うことは、あの受付嬢はいるわけのいない凶悪な魔物が外にいて聖女様がそれを守っていると考えているわけね。そして、そんな魔物は存在しない。」
「聖女様が結界を貼る前はいたのかも?」
「あー、確かにいたかもね。じゃあ、聖女様がくる前は対策出来なかったのかしら。出来ないならこんな街、当に消し飛んでそうだけど。ドラゴン5匹とか?」
「ドラゴンさん怖い!」
「と言うより、聖女によって結界が貼られた結果どうなったかちゃんと説明されたのかしら。結界を貼ったからもう魔物は来ません、で終わりなの?」
最後シュウ君に若干論破されてしまい不機嫌な私ではあったが…それを認めれない私も私なのだが…なんかこう、聖女が色々やって来ているのに教国民は聖女を冷たい目で見て治療や結界を貼るのは当然だみたいな扱いをされている状況が気に入らないのかもしれない。私は言葉に表せないもやもやを抑えながらシュウ君の買い物に付き添うのであった。
「お姉ちゃん。」
「うん?」
「えっと…携帯食ってここに売ってるの?」
「うーん、植物達曰くここの商店街でハンターはそれらしい物を買っているって聞いたんだけど。」
ハンター達の情報を植物がかき集めてくれたのだが…どうしても携帯食を売っていそうな店屋がないのである。
「植物さん。本当にここら辺でハンターが持ち運ぶ携帯食を売ってるの?」
『例えばあそこの店屋はどうでしょう。今丁度買っている人間がいます。』
よくよく見てみると…今の日本換算で焼き鳥みたいなものであった。
(あ…そう言うことか…)
私は勘違いしていた。「携帯食専門店」なんて物はないのである。携帯可能な食べ物を探さないといけないのであった。
「マジか。」
「お姉ちゃん?どうしたの?」
「勘違いしてたわ。どうやら携帯食専門店みたいなのはないみたい。店屋によって携帯出来るか否かこっちで考えて買わないといけなそう。」
「うーん、区別つくかなぁ。」
「私食べ物に関心無いからなぁ…植物にまたお願いしますか。」
「うん!」
私は植物の魔物。日光と腐葉土と水があれば何でも良い。万一魔物を捕食すると言う最終手段でもツル団子で吸収なので現地調達が可能なのである。最も前世の時から食べれれば何でも良いと言う思考回路があったと言うこともあるだろうが。シュウ君は人間のため、そこら辺の魔物を狩ったところで食べれない。料理する技術が私達はどちらもないのである。そのまま食べたら腹を壊すだろう。何度も言うがシュウ君は人間である。
(ハンターって色々大変なのね。)
シュウ君の出張準備は栄光メンバーが勝手に手際よくやってしまった。慣れだろう。しかし、私達にそのような経験はない。植物のフォロー便りになってしまった。
考えすぎは良くないね。