神獣の決断
「分かった。この話は予想より深刻のためおいおい我が正しい道へ導こう。後は先ほどにもあった結界についてだ。話し的にあの小娘に聞いているのだろう?」
「聞いていーます。」
「気づいていなかったのか?」
「はーい。申し訳あーりません。」
「構わぬ。知らないなら今後知れば良い。強いて気になるのは、あれを貼ると決めたのはお前か。それとも誰かにやれと言われたのか?」
「後者でーすね。国を魔物かーら守ります。」
「誰から教えて貰ったのだ。聖女の能力であれば結界を貼ることは可能だが、結界を見ている限り中途半端だ。本来貼り方をしっかり学べばあのようにはならぬ。」
「神父様達に本を渡さーれました。それ通りにやーれと。」
「それ通りにやったのか?」
「出来まーせん。本を読むだーけで1ヶ月以上はかかりまーす。それを数日でやーるように命じらーれました。」
「それを受けたのか。」
「でーす。」
「無理とは言わなかったのか?」
「言えまーせん。私の居場所はここでーす。逆らったーら追い出さーれます。」
「数日であれだけのものが出来るだけで相当なものだが…作った後様子は見てるのか?」
「はい。ただ、書籍が中途半端でーすので直しーたい部分もあるのでーすが…時間が取れまーせん。」
フェンリル様は黙った。要は聖女様は皆が楽するためにやって貰いたいことをやらされ続け本業に着手出来ていないのである。実際、キャシーは今までのシスターとかの仕事に聖女の仕事を押し付けられてるだけである。とりわけ、聖女イコール完璧のため国民も聖女に集まってしまう。それでいて外見の問題で敬われるより恐れで接せられる。国民全員がそんなことないかもしれないが、キャシーは内心何処かでそう思ってしまっているのだろう。
「最後に聞こう。お前はあの小娘を見てどう思う。我でも良い。お前は知っているだろう。あの小娘の正体を。」
「私は話せーて嬉しかったでーす。またお話ししたーいです。悪い子でーはありーません。ただ、この国は間違いなく彼女を殺そうとすーると思いーます。」
「お前はそれでも良いのか?」
「嫌でーす。」
どうやらフェンリル様の方針が決まったらしい。
「我は何度も聖女を見てきた。聖女に課せられた使命もな。まず暫く、お前については我と共に行動して貰う。キャシーよ。聖女に任命されただけでは聖女には成れない。先ずは我から知っている限りで指導を施す。運命には逆らえん。素質がある以上お前は聖女に成るために切磋琢磨しなければならん。そこだけを先ずは意識することだ。弊害は最終的には自分で退ける必要性があるが暫くは我が排除するから自分を磨くことに専念せよ。」
「…分かりまーした。」
キャシーはフェンリル様の意図がまだ分かっていないようではあったが…神獣であるから従ってみようと考えているのであった。その考えが間違いではあるのだが…先ずは自由になることからのようであった。
(あの小娘、この聖女について何か知っているのか?)
彼女がマイの話をしたとき本音で嬉しそうな声をしていたのであった。それに互いに聞いたこともないような言葉を喋っていた。フェンリル様の直感は長寿が原因か色々冴えているようである。
「フェンリル様?本気ですか?」
「ああ。」
「しかしそんなことをされては教会は回らなくなってしまいます。」
「たかが数日聖女が席をはずしただけでそうなるわけがなかろう。本当にそうなるのであればこの国は聖女に頼りすぎだ。今の聖女には足りないものがある。それも踏まえ暫く彼女を借りる。」
フェンリル様は先ずは教会から引き離して現実を見せようと神父に交渉していた。具体的に何をするかは後程分かるが、キャシー自身も何処に連れていかれるか分からないのであった。
読者に補足です。貴方は王様でも女王様でもありません。今回の聖女様みたいに待っていれば勝手に神獣(のような助っ人)が来ることは一生ありません。課題解決は残念ながら「自分からアクションする」ものです。主人公に優しい小説に騙されないようにしましょう。




