聖女を拒む聖女
「さてと…ようやく邪魔が消えた。」
「フェンリルー様。そこまーでして私と話さなけれーば行けない理由は何でーすか?」
キャシーとフェンリル様は教会の中庭で会話していた。フェンリル様は人払いを実施しており回りには誰もいない。フェンリル様は探知魔法が使えるので盗み聞きもあり得ないのであった。
「キャシーよ。今すぐ全部を話すのは無理だが…先ずは我の質問に答えてくれぬか。」
「大丈夫でーす。」
「正直に答えて欲しいのだが、この国はお前のことをどう思っているとお前は考える?もっと踏み込むのであればお前はこの国を本気で守りたいか?」
「えー?」
キャシーは考えた。そして答えを出す。
「私につーいては、聖女様でーはないのですか?教国を守るのーは聖女である私の務めでーす。」
「我が違和感を覚えたのはこの国に入ってからだ。お前は本当に世間から聖女と見られているのか?」
「………」
「我を見て警戒する輩はいるであろう。我の方向を向く輩がいて驚きとかの顔が出るのは頷ける。だが、どの国民もお前に対し無関心…いや、何と言えば良いのか…恐れや異物として目線を向けられていると判断した。他の聖女も見てきたが、敬うはあっても拒絶は前例がない。」
キャシーは少し黙った。
「私は見て分ーかる通り、外見が他とーは違いーます。それ故、生まれた直後かーら家族にさえ一目置かーれてます。教会に入っても同ーじです。」
「そうか。国民はお前が聖女と認めてるのか?」
「一般公開は色々あーって出来てーいません。教会かーら流れた情報だーけだと思います。」
「それでお前は満足しているのか?人間の女性は聖女と言う立ち位置を狙っているのではないのか?」
「私は何故か聖女になーりました。私の回りは聖女に成りーたい方が多いですが、私は今のまーまで良いです。」
語弊だが女性が誰しも聖女に興味があるわけではない。そこら辺はフェンリル様の偏見である。
「うーむ。しかし、聖女に成るための関門は厳しいはずだ。お前はその素質があるから聖女に選ばれたはずであるが。」
「分からなーいです。」
「では念のために聞いておこう。お前の回復魔法はどこまで通用する。腕が切断されたとか、重篤な病気とかだが。」
「そうでーすね。生きていれーば何処が欠けても完全復活ーは可能でーす。」
「では更に突っ込んでおこう。お前以外でそれが出来るやつはいるのか?」
「無理でーす。大体全部私ーに流れてきーます。」
「全部?」
「他の治癒医達は忙しーいらしいーです。皆さん重たーい病気軽い怪我云々関係なしに私が見て治すーことが多いです。」
フェンリルは悟った。暫く聖女を見続けないとダメだと。最も、聖女様はそう言った面で使われやすい。優しすぎるためである。それを制御するのもフェンリルの仕事なのである。勿論、行き過ぎた保護を抑制する人間がちゃんといればそれで問題ないのであるが…キャシーは最悪の環境にいるのであった。
WantとCanとMustの関係性があります。私は思います。WantとCanが見事に一致している人は早々いないと。