何気ない世間話(だと思う…)
(聖女様ってやっぱり優しいのね。そしてそれに漬け込むのが人間か。どこ行っても変わらないわね。)
私はどう人間をしばくか考え…無理ゲーなので…まずシュウ君が許してくれない…フェンリル様に投げつけるかと思った。
「キャシーさん。助言ですけど、聖女として他人を守るのは勝手ですが…先ずは自分を守った方が良いですよ?そのうち使い倒されて殺されますよ?」
「うーん、分かってーはいるのでーすけど、なかなーかそうなーらないでーすね。」
私は何となく思った。多分それは彼女の今までの性格から来ているのではないかと。今までとは前世込みである。私は前世人間を嫌って憎んでいた。それがそのまま魔物としてこの世界に降臨してしまったのではないか。アユミさんも何かしら前世抱えていて今世魔女として暴れているのではないだろうか。要は、魔物だからとか聖女だからこのような性格…ではなく、前世このような性格だったから今こうなっているが正しいのではないだろうか。そんな感じがしてならない。
「取り敢えず全部フェンリル様に報告してくださいね。私が暴れても良いですけど…ねぇ。」
私はシュウ君を見る。シュウ君は「うん?」と私を見たが、少しして「お姉ちゃん。人を攻撃しちゃダメだよ。」と投げ返されてしまった。心が読めるのだろうか。
「分かりまーした。フェンリル様を信じーてみます。」
少ししてベランダのテラスに私達は着いた。恐らく神父様だろうか。お偉いさんだと思う1人とフェンリル様、後は多分聖騎士だろう…何人かいる。フェンリル様を恐れているのだと思う。ここは貴族ではない。しかし、聖女様はいる。ただ、この国の聖女の価値など使い勝手最強の失っては困る労働者。神々しいとかそう言ったものは皆無だと言った扱いだと思う。
「キャシーだったな。随分遅かったではないか?」
「申し訳あーりません。お客様ーとのお話が弾みまーした。」
「そうか。」
フェンリル様はそれだけを言うとテラスの少々離れたところでしゃがみこんだ。何をしたかったのだろうか。
「キャシー、早く座るのじゃ。フェンリル様もお待ちじゃ。客人にも待たせるわけにか行かなかろう。」
「はーい。神父様。」
かくして護衛を除けば4人と1匹…私は今回は人でカウントしよう…魔物だけど人型だからややこしいんだよなぁ…で、昼食を取ることになった。フェンリル様は食べる必要性がないのだが何らかの肉だろうか…与えられている。神獣にそれは逆に失礼な気がするが…まあいいのかな。私もシュウ君同様昼食が与えられたが…食べれなくはないが…と言うより無限に食べれるが…花の密貯蔵がキャパオーバーして溢れないようにするとなるとあまり食べれないのである。
(残すと怪しまれるかしら?でも、漏れたら地獄を見るし…少食と言う形で行きましょう。)
私自身もちょっとずつ自分の体について分かってきていて安心していた。厳密にはまだまだ知らなければならないことがあるが今は保留で良いだろう。
「ほうほう、態々一山越えて…しかも子供達だけで…大変でしたな。」
「厳密には妖精がもう一匹いたんだけどね。」
「ほう。」
「うん!アースちゃんがいて心強かったんだよ!」
私は内心「私は?!」と思い、後でアースを始末すると決めた。身勝手の末路である。一応だが、近距離で私はアースに勝てない。死んでしまう。無理ゲーであった。
「しかしフェンリル様。何故、彼らのような子供を使いに?」
「道案内に選んだだけだ。他には何もない。」
「道案内ですか。でしたらそれこそ、ここの教国に詳しい大人の方が…」
フェンリル様は神父様を睨んだ。それ以上追求してはいけないと判断したらしい。神父様は話題を変える。フェンリル様は先ほどの結界からこの国が魔物を嫌っていると推測したらしい。私達のプライベートに携わる内容を避けようとしてくれているようである。聖女様が私が魔物であると知っていると理解はしているはずである。まずそれが成り立たないのであれば、私はこの教国には入れない。死んでしまう。
(なんだろう。最近一歩間違えたら私死ぬような事象多くない?)
私は心の中で最近出会った私の命を脅かすメンバーを想像しているのであった。そして、想定より多いことに絶望していた。
「ところでキャシーよ。お前はそこの小僧と小娘と何の話をしていたのだ。」
「あ…世間話でーす。私、あまり国を出たことなーいです。気になりまーした。」
うーん、嘘はついていないが…世間のレベルが今世ではなく前世なんだよなぁ。
「そうか。であるならば、この教国の課題について何か分かったか?」
「課題でーすか?」
聖女様は黙る。暫く続く。私は疑問に思った。多分この聖女様は色々理解している。しかし、黙認なのである。そして私は納得した。前世の私に似ていると。いや、今の私にも似ていると。自分の強さなど関係ない。立場上上の人間に対し思ったことを言えないのである。