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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
残虐な聖女の正体
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結界の落とし穴

「あ、そうだ。まだ時間ある?」

「大丈夫でーすよ。」

「じゃあひとつ聞きたいんだけど…今ある結界について、植物から苦情が来てるのよ。」

「植物かーら苦情でーすか?」

「予め、私は植物の魔物だから植物の声が聞こえるんだけど…貴女の結界が原因で太陽光とか雨が遮断されて育ちにくいとかどうとか。このままだと、農作物が大ダメージを受けるわよ?」

「そうなーんでーすか?!私、知りませーん。」

「まあ植物の声なんて聞けないでしょうからね。後、フェンリル様から呼び出されていたみたいだけど…多分その件だと思うわよ。この結界強引過ぎるとかどうとか。私は魔法使えないからそこらへんよく分からないんだけど。」


 その時聖女様の顔がより青くなるのが分かった。


「わ…私は、早くやーれと脅されまーして…急遽ー書籍の主要ページのみ読んーで結界を作成しーました。副作用とーか、他類々を見る余裕がなーくて、ほったからーしに。」


 私はしまったと思った。どうやら、彼女の急所を刺してしまったようである。誰しも言われたくない言葉というものがある。恐らく彼女は聖女になってしまったが故、使い倒され貢献しようと必死だったのだろう。周りが彼女を罵り、迫害しようとも。しかし、そこまで必死にやっても外部からはダメ出しを出される始末。やられてみないと分からないと思うが、私は前世似たような経験がある。精神的に致命傷なのである。彼女は急に涙を流し始めた。


「大丈夫。泣かないで。キャシーさんは悪くないから。無茶を押し付ける周りが全部悪いと思って大丈夫よ。ね、シュウ君。キャシーさん頑張ってるよね。」

「え…」


 シュウ君は急に振られて困ってしまったようだが…シュウ君は辛かった時何度もマイにフォローをされている人間である。それ故、人を褒めるのが上手い人間に育っていた。シュウ君は力的には雑魚だが…それ以外でもマイの育成が原因で抜けまくっているところもあるが…優しく育てられた彼は優しい心を持っているのであった。マイみたいに前世に振り回され人間を拒絶するようなタイプではない。


「う、うん。聖女様のお陰でお姉ちゃんは助かったって知ってるもん。お姉ちゃんだって、聖女様が悪い人じゃ無いって認めてくれたもん。だからフェンリル様だって聖女様のことを思って迎えに来てくれたんじゃないかな。」


 シュウ君はキャシーさんの頭を撫でた。私はそんなこと出来ない。シュウ君にだから出来るのである。ただ、こう言ったボディータッチは時と場合で良い方向に刺さることもある。キャシーさんは数分で復帰し、腕で涙を拭い払った。


「それにしても、脅しねぇ。シュウ君。なんならそこいらのクズ絞めてこようか?聖女が危険と思ってたけど、どうやら聞いた限り聖女よりその周りの方を駆除した方が良さそう。」

「だ、駄目だよ。そんなことしたらお姉ちゃんが殺されちゃう。」

「うーん、キャシーさん。あれ、それこそそこらへんはフェンリル様に言った方が良いんじゃない?あのフェンリル様、意外にちゃんと人の話聞いてくれるし…先代の聖女についても知ってるみたいよ。先代の聖女がどういった外見かは知らないけど、同じような悩みを抱えてたならどう打開したかヒントをくれるかもね。」

「そうでーすね…。聞いてみーます…。」


 少し沈黙が続く。シュウ君のお腹の音が聞こえたのでそろそろ昼ではないだろうか。シュウ君は顔を赤らめたがそれを発端に聖女様が喋った。


「それにしーても、危うかったでーす。」

「危うかった?」

「はーい。今日ーは、素敵な出会ーいがあーりました。私の心にあっーた雲に光が灯ったよーうに見えまーす。その日差しーを、危うく殺しーてしまーうところでーした。申し訳なーかったでーす。」

「あー、良いのいいの。私も固定概念で聖女イコール悪と決め付けてたし…今後、アユミさんじゃないけど他の転生者がいないか探してみようかしら。」

「お姉ちゃん?探すって?」

「胡椒臭いのよ。本当に転生者がチラホラ生まれているとなって、転生者が何かしら力を持っているとすると…何かしらとんでもないことが起きる予兆じゃないかなってさ。」

「一理ありまーすね。マイさーんは良い魔物でーすが、悪いー魔物或いは悪いー人間に誰かが転生しーたら…」


 その時客間の扉がトントンとなった。どうやら食事の時間になったらしい。


「シュウ君。再度忠告だけど、この話は他言無用よ。大丈夫?」

「うん!お姉ちゃんとの約束だもん。守る!」

「2人とーも。昼食が出来たみーたいでーす。フェンリル様と一緒にとのことなーので、外に行きーましょう。」


 キャシーさんが言伝の人から昼食について聞いたらしい。私達はキャシーさんについて行く。


「ふと思ったんですが、聖女ってこんなにフリーなんですか?」

「フリー?」

「いや、見ず知らずの客人がいて護衛なしとか…どうも私の固定概念的に誰かしらが見ていると思っていて。」

「どうなーんでしょう。私の扱いはこーんな感じです。元々教会ーのシスターでーす。今でも仕事は変わーりません。」

「変わらないって?聖女になって結界とかの管理あるんじゃないの?」

「あー、ありまーすけど…今までの仕事はそのまーまで、聖女の仕事ー増えました。」

「あん?」


 普通にブラック企業じゃねえかと内心キレた私である。つい先ほどまで聖女イコール敵と思っていた私であるが、類似点等が見つかれば見つかるほど庇いたくなってきていた。

 これは小説だから他人事…ですか?会社ってスピード重視で性能なんて五の次にようにいつも見えますが…。

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