聖女と転生者
「後程ー客間にも行きまーすが…見て貰いたいものがありまーす。」
彼女は机の中から何かを取り出した。本っぽい。そしてそれを開けると…英語の文字が引っ切り無しに書かれている。
「貴女ー読めますかー。」
「えーっと…読めないです。」
「え…先ほどおー話…」
「いや…流石にこの単語とかは分かりますけど…この単語は知りません。」
私は前世英語はダメダメだった。読めと言われても無理である。
「それでも十分でーす。要は私と同ーじ境遇でーす。」
「同じか…。」
「ねえお姉ちゃん。後聖女のお姉ちゃん。お姉ちゃん達はこれ読めるの?見たことないよ。」
シュウ君の突っ込みに2人は顔を見合わせる。見合わせると言っても、聖女ことキャシーさんは16歳ぐらいの少女の体型、私は10歳の体型である。彼女は下を見て私は見上げている。
「うーん…」
「取り敢えーず、客間に行きーましょう。ここーに、貴女達がいるとバレると面倒臭くなりーます。」
だったらここに連れてくるなと突っ込みたかったが、保留にした。追い追い分かることだが、あの英文は彼女の日記らしい。英語の文字を子供の時に親に見せたことがあるらしく、その時「悪魔の文字」見たいな扱いをされたらしい。恐らく万一を考慮し部屋から本を出したくないのかもしれない。
「ここが客間でーすね。」
客間といえど、貴族の家ではない。日本換算で会議室とか強いて校長室や社長室みたいな感じだろうか。
「恐らく食事が整うまーで何もないはーずですが、えーっと。」
キャシーさんはシュウ君を見ていた。まあ、心を読むのであれば邪魔なのだろう。
「聖女様、先ほどの文字の件ですか?」
「そうでーす。」
「シュウ君。シュウ君はあの文字について知りたい?」
「うん!お姉ちゃんも知ってるんだよね!教えて!」
私は黙認する。極論はどこぞの魔女じゃないが追い出したりするべきなのだろうが…ここでそれをしたら色々おかしくなる。時間を止めるなどあの魔女ぐらいしか出来ないだろう。
「聖女様。話しても大丈夫ですか?予めですが、彼は違う分類です。」
「そうでーすね。あの文字が見られたとき…嫌な思いでしかないでーす。拒絶されーるみたいな…」
それ以降聖女様も黙る。ぶっちゃけこれは聖女云々の話ではない。私や聖女…魔女とかの話なのである。
「シュウ君。」
「どうしたの?」
「いい?これから聞く話は絶対に誰かに話しちゃダメだからね。」
「秘密ってこと?」
「そう。バレたら…私も聖女様も、シュウ君も…後はアリア様とかアユミさん辺りも最悪殺されると思って。」
「え?!」
「他にもいるのでーすか?」
「はい。取り分けアユミさんは警戒しています。」
「そうなんでーすか。」
あくまで最悪を考えてである。前世の私も異世界小説を読んだことがいくらかあるが…前世の知識や異界の民云々がバレて殺されたと言う流れを読んだことがあるのである。この世界でどうなるかは分からないが…危険が伴うと思った方が良い。
「シュウ君守れそう?あの文字に関わると言うのはそう言うこと。」
「………」
シュウ君は腕を組んだ。
「うん!守る!僕、お姉ちゃんについてもっと知りたい!そうしないとお姉ちゃん守れない感じがする。」
いや、それはテイマーと従魔の関係である。異世界云々ではない。ただ分からないだろう。
「彼が貴女を守るのでーすか?本来、従魔は人間ーの命令を…」
「聖女様。私達は例外です。それより先ほどの文字の件ですが…シュウ君口固いですし、誰にも言わないよね。」
「うん!誰も死んで欲しくない!」
「分かりまーした。では、誰かが来るまーで話しましょうか。」
それから本格的に前世の話に流れ込んだ。キャシーさんも私同様前世の記憶は曖昧らしい。ただ、英語ははっきり覚えているとのこと。
「前世って…?」
「私達も良く分からないの。ただ、恐らく別の世界から生まれ変わって私達はここにいる。余談だけど、アユミさん…キャシーさんにはぶっちゃけるけどあの魔女も生まれ変わりよ。あ、勿論魔女については他言無用。死にたくなければね。」
「魔女でーすか?本当に魔女はいるのーですか?人間を滅ぼす発端とーかそのようなことを教会で学んでいーます。120年ぐーらい前に一国が魔女の手で潰されーたとか。」
「あん?」
120年前ではアユミさんは生きている。本当なのか?
「うーん、あの魔女そのようなことをしないとは…あー、いえ。自分からはしないわね。やられたらやるんでしょうけど。私は大国相手にしたら間違いなく死ぬけど、魔女の力なら出来るのかもね。」
「そうなのでーすか?」
「ただ、ここら辺は私の推論範疇だけど…もしアユミさんが犯人なら…さっきも言った通りやられたからやったんでしょう。前世云々置いておいて、魔女とバレて人間から駆除されそうになったから一掃。まあ、端から見たらどんなに人間が先に仕掛けても多数決で魔女が原因となる。そのまま受け継がれているのでは?」
「なるほーどです。為になりまーすね。」
聖女様は首を横に振った。