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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
人間の領地
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孤児院

「あ、シュウ君。ちょっとだけ、ちょっとだけで良いから寄り道して良い?」

「え、うん。」


 見かけたのは農家の畑。もう秋の半ばということもあり、殆ど何も植わってないが…土の端に乗っかるだけで、養分が吸い取れることがわかった。


(真ん中入ったらそれこそやばいけど、端っこなら大丈夫よね。)


 養分吸収と光合成は私の場合別物である。同時が一番良いが、人間が住むこの街だと、道が舗装されすぎて土からロクな養分を吸えない。そのため、5分ぐらいでも良いから養分が吸えそうなところがあれば吸い取っていた。歩きながら光合成すれば良い。まあ、年がら年中晴れているわけないが、出来る時には光合成なりなんなりして養分を蓄えておきたいと思っていた。実を言うと、私の体は生まれた時と比べるとかなり大きくなっている。それは5歳児と10歳児の違いレベルである。それだけ違うと言うことはそれだけ養分を必要とすると言うこと。だから本来は動物や魔物を狩ってそれも養分にしなければならない。しかし私が狩る魔物は今までの生活圏の都合上大きすぎてキャパオーバーであった。それが原因で、私自身は本来の魔物としての生き方をせずほぼ植物の生き方をしているのであった。狩り技術を除いては…。これが良くも悪くも追々影響してくることは今の私には知る余地もなかった。


「うーん。やっぱり腐葉土は気持ちいわねぇ。あ、シュウ君。もう大丈夫。畑の主に見つかる前に行きましょう。」

「うん!」


 端っことは言えそこに突っ立っていたら怪しまれる。長時間はいれない。


「どこ行くの?」


 シュウ君は久しぶりの満腹感からか、かなり元気そうであった。逆に私は思ったように回復が出来ず若干イライラしていた。


「えーっと、孤児院ね。場所については植物達が案内してくれているから大丈夫よ。」


 植物は冬になると一気に量が減る。森の中であれば、木々はちゃんと会話してくれるが、雑草は少ない。まあ、全て枯れるわけではないからそこは問題ないが、情報量が減るのは問題である。とりわけ森の様に針葉樹林や広葉樹林がない場所では。とはいえ、シュウ君を真冬森の中で生活させるとか言ったら凍死してしまう。どっちも最適解となる生き方はあるのだろうか?そんな疑問を抱きながら孤児院へ向かっていった。


「ここ?」

「かしら…」


 まあ結論から言う。ボロい。本当にここ人住んでるの?


(あ。)


 嬉しいお知らせ。勿論人が固めた道はあるが、そこのそばには草原があった。まあ多分、子供達が走り回るのであろう。ただ、森に比べればダメではあるが、草原があると言うことはある程度栄養がある土があり、日光があると言うこと。砂漠の中のオアシスというのが元人間から見た体感であった。


「どこから入るんだろう?」

「あそこかしら。ほら、扉がある。」


 私は日光浴しながら建物の周りを歩いていた。周りと言っても、入り口近傍だけではあるが。シュウ君はとりあえずと、入り口の扉を叩く。


「ごめんくださーい。」

「はい。」


 中から声が聞こえたかと思うと、40代ぐらいであろうか、いわゆるおばさんが立っていた。


「君!大丈夫?」


 第一声がこれである。食べ物は食べた。ただ、服はボロボロであった。


「うん!さっきいっぱい食べてきた!」

「そういうことじゃなくって、こんなに服汚して…ご家族の方は?」

「えーっと…お姉ちゃんならあそこ!」

「あら。」


 おばさんがこっちを見たので向かっていく。ちょっとの時間ではあったが、日光浴最高である。


「貴女もどういう格好してるの!!」

「と言われましても…」

「とにかく入りなさい!話は後で聞くわ!」


 ということで、私もシュウ君もおばさんに連行されてしまった。そして孤児院の中。何人かの子供がこっちを見ている。服は確かにシュウ君に比べればマシなのかもしれないが、ザ貧乏であった。


「えーっと、あ、あったあった。とりあえず2人とも。向こうに着替えるところがあるから、これを着なさい。」


 ボタン式のポロシャツである。サイズもピッタリであった。ただ問題が一つ。シュウ君は良い。私、スカート履けないんだけど。私の擬似スカートは私の体の一部である。脱げない。脱ぎようがない。


「着替え終わった?あら、お姉さんの方。そのスカート気に入っているの?」


 私の擬似スカートは葉っぱを組み合わせて強引に床まで届くスカートになりました的なものである。遠くから見ればあまり問題ないが、近くから見れば違和感丸出しである。


「うーん、脱ぎようがないというか…」

「え?」

「おばさん!お姉ちゃん魔物なの!だからこれお姉ちゃん自身の葉っぱなんだって。」


 森の中にいたときに最低限のことはシュウ君に伝えたつもりである。


「ま、魔物?!」


 おばさんの声に一部の子供がビクッ反応した。私は仕方なしに、左腕を捲ってリストバンドもどきを見せる。


「あ、この子の魔物なのね。びっくりしたわ。で、君。おばさんじゃない。お姉さんよ?」


 言っておく。その発言をしている段階でおばさんである。

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