聖女との交流
「貴方達でーすか?聖女様に会いたーいとおっしゃっーてる方達は?」
暫く待つと目の前に女性…と言うより少女と男性3人が現れた。男性は騎士なのだろうか、色々重装備を携えている。少女に声をかけられたときシュウは失言してしまった。銀髪の白めの肌の少女だが…あまりにも美しすぎるのである。そして服装から只者ではないオーラを放っていた。
「え…う、うん。」
シュウは色々取り乱していた。
「そうそうー、でー聖女来たのー?」
アースは所詮は人間と言う態度で少女に接する。
「おい。話は聞いていたが、そこの妖精。聖女様に向かって失礼だぞ!」
「聖女様?!」
シュウは目を見開いて何歩か後ずさりした。シュウは権力と言う人間が勝手に作った暴力にも弱い。
「シュウお兄ちゃんー。何ビビってるのー?たかが人間じゃんー。」
「アースちゃん!聖女様だよ!きっと偉いんだよ!先生と同じなんだよ!」
シュウの頭の中では「聖女=偉い=先生(伯爵夫人)=鬼」になっているようである。
「それでフェンリル様がいらっしゃっていると聞いたが何処だ。聖女様はお忙しいのだ。」
従者の騎士が早くしろと言わんばかりで2人に催促する。
「え、えっと…」
「フェンリルはここからちょっと遠くだよー。どっかの誰かがー結界なんか貼るから来れないんだってー。」
「なんだと?お前、それは聖女様に…」
「落ち着いーてくださーい。私は妖精様と喧嘩をしーに来たわけではあーりません。」
「………」
騎士は黙った。
「自己紹ー介が遅れまーした。私はキャシーでーす。」
「あ…僕はシュウです。」
「アースだよー。」
「Earth?地ー球?」
聖女様は何かを呟いたはそれが何を意味するのかはまだ誰にも分からなかった。
「いえいーえ…ではー、フェンリル様の場ー所まで案内を宜しーくお願ーいします。」
「う、うん。」
とのことで移動が始まった。聖女様ことキャシーは気になることを2人に聞いた。
「フェンリル様は何ー故お2人に遣いを託したのでーすか?」
「遣い?」
「そうでーす。フェンリルー様は神獣ー様です。私には、意味があーって託されーたと思います。特に貴ー方です。」
キャシーはシュウを見た。
「妖精様であればー多少は納得しーやすいです。ただの男のー子と言うのは…失礼な発言かーもですが、理解がしにくーいです。」
「元々フェンリルが指定したのはボクでもシュウお兄ちゃんでもなくってーマイお姉ちゃんだよー。」
「もう一人いるのでーすか?」
「いるよー。ただ、今動ける状態じゃないと思うー。」
「何故でーすか?」
「お姉ちゃん苦しそうなの!聖女のお姉ちゃん。僕のお姉ちゃんを助けて!」
「…大丈夫でーす。私に任せてくーださい。」
キャシーはそう言いながらも色々疑問に感じていた。とりあえず2人が言っている姉の存在である。何故動けない程苦しんでいるのか理解出来ない。守衛の話を聞く限りだとどうやらフェンリル様が教国を襲撃するのを止めてくれているようだが…相手は神獣である。この2人の姉はそんなに強いと言うことなのだろうか。
(関係性も気にーなります。人間と妖精の姉とはどうー言うことですか。)
妖精から人間が生まれたり人間から妖精は生まれない。人間と妖精のハーフなど聞いたこともない。謎だらけなのであった。更にもう一つ気になることがあった。
「貴女は妖精でーす。名付け親もいーるのですか?」
「名付け親ー?」
「はーい。妖精は基本は名前がないと文献ーで読んだこーとがあります。そしーて、誰かと共に過ごそうと決めた時に名ー前を頂くとかです。そのアースという名前ーが、聞き覚えのあーる名前のような気がしーます。」
「聞き覚えー?無いんじゃないー?ボク、別に君とも他の聖女ともあったことないよー。この名前も、マイお姉ちゃんに付けてもらっただけー。」
(うーん…マイと言うお姉ちゃんでーすか。フェンリル様が指定しーたのもその姉でしーたよね。何者なーのでしょう?)
キャシーは頭の中でアースと名付けたマイと言う人物像を思い描いていた。おそらく女性だろうが…フェンリル様を抑えれるぐらい強力…何故、見た目が女の子の妖精にわざわざ「Earth」と言う女の子っぽい名前ではないものをつけたのか。腕を組みながら考えていると護衛の騎士から声がかかった。
「聖女様。ご存じかと思いますが、そろそろ結界の領域を抜けます。魔物が襲ってくることがある旨ご了承ください。」
「大丈夫でーす。結界を抜けても直ーぐには魔物はーいません。」
「結界が魔物全員追っ払ってるもんねー。」
アースが皮肉った。アースは妖精の為、本来魔物は恐怖の対象であり…魔物は魔力を求めて妖精を襲うことが多い…この結界はありがたいはずなのだが、お気に入りの魔物が傷つけられている為そのような考えでは無いようである。
「アースちゃん。お姉ちゃんが心配だから早く行こう。」
「だねー。」
2人が加速する中…聖女は何が起きているのか疑問の中…残りの騎士は何様だと言う表情で…2人を追うのであった。