妖精から見た人間の評価
「後どれぐらいだろう。」
「もう入り口見えてるから直ぐー、あー人間の街入るのやだなー。」
結界を突破した後…心配事が無くなったアースはやりたい放題をしていた。簡潔に言えば、すれ違ったり追い抜いたりする人間に対し悪戯である。どうやらこの駄妖精は人間に悪戯しないと生きていけないらしい。しかも、急にどっかへ飛んでいき、泥を足元へ投げつけたりゴーレムで脅したりとやりたい放題である。しかも、やられた人間は犯人を特定出来ないと言うおまけ付き。アースの技量は意味不明であった。マイもいつぞやで「何処鍛えてるのよ?」と突っ込んだことがあったと思う。
(お姉ちゃん…僕、アースちゃんの面倒見れないよ…)
やりたい放題のアースに対しシュウは完全放置であった。いや、急にどっか飛んでいっちゃうのだから無理だろう。マイもお手上げであった。ただ、マイの場合…シュウへ迷惑が掛かりそうだと止めに入ることもある。シュウは完全にお手上げだったのであった。
「アースちゃんは、どうして人里とかは駄目なの?」
「うーんー、人間ってさー気になるものには直ぐ仕掛けるじゃんー。妖精だってー人間怖いんだよー。マイお姉ちゃんと同じさー。」
「うーん、でもお姉ちゃん何だかんだでデレナール領で皆と話してるよ。」
「マイお姉ちゃんは特殊だよー。シュウお兄ちゃんは知ってるー?マイお姉ちゃんって人間嫌いなんだよー。だけど、シュウお兄ちゃんのために無理してるんだよー。」
「え?」
「さっきも言ったじゃんー。マイお姉ちゃんも魔物だよー。人間じゃないんだよー。人間拒絶してるんだよー。だけど、それをシュウお兄ちゃんに見せちゃうとー心配かけるーっていういわば…強がりと言うかープライドっていうかー。まあ、だからマイお姉ちゃんは変な魔物なんだよー。シュウお兄ちゃんはーマイお姉ちゃんが一番信頼してるからー、たまには癒してあげてよー。たまっちゃうとー壊れたりー暴走するよー。」
「………」
シュウ君は幼いながらもその助言の意味を理解しようと噛み締めているのであった。アースは見た目4歳だが実年齢は2800歳を越える。山の中に引き込もっている妖精だが…何故か…いや、たまにマイと話してマイが愚痴っているのかもしれない…的確な指摘が出来ていた。
「うーん…」
「おや?」
教国の入口付近まで差し掛かったとき、シュウ君が考え込んでいるととあるおじさんが声をかけてきた。どうやら商人か?連れも連れている。先程も言ったが、この2人は物凄く目立つのである。子供2人が街道を歩くだけでも目立つが…1人はどう見ても妖精と一発で分かるのだから。今まではフェンリルがいたので…フェンリルと分かろうが分かるまいが狼がいたので…全員恐怖で避けていたが、この状況ではそのストッパーもいなかった。
「これまた…妖精なんて始めてみた。」
アースは顔がひきつった。警戒しているのであった。アースは今までの経験から知っているのである。第3者の人間に絡まれると何が起きるのかぐらい。それが原因で森の中でも悪戯は仕掛ける癖に合流は絶対避けているのである。
「その妖精は君が捕まえたのか?」
「捕まえたなんてー失礼だぞー人間ー。」
「え…えーっと、お姉ちゃんのお友達。」
「お姉ちゃん?」
「お前にはー関係ないだろー。」
アースは余程嫌なのか会話を妨害していった。シュウは人見知りが強い。マイ無しではなかなかうまく喋れない。
「これから教国に行くのかい?」
「う、うん。」
「聞きたいのだが、その妖精は何処で…」
「仲間をー捕まえる気かー?妖精はそんな簡単にー人間になんて捕まらないよー。」
アースは手から魔方陣を展開していた。
「アースちゃん、ストップ!駄目だよ、お姉ちゃんに怒られちゃう!」
「ムムムー。」
アースは詠唱途中で止めた。商人は危険を察知したらしい。
「まあ、教国はあまり人以外は入らない方が良いと思うぞ。じゃあな。」
そして商人は仲間を引き連れて立ち去っていった。妖精を見て興味本位だけだったらしい。商人自体に戦力はない。仲間が護衛の為に雇っているハンターであれば、襲ってきてもないのに手は出さない。アースの魔法で若干警戒していたようだが。
「なんだったんだー。全くー。」
「アースちゃん。大丈夫?」
「物珍しさだけで捕まえてくるー人間が多いんだよー。全くー。」
シュウは黙った。実際、同じようなことをシュウの従魔もやられている。なんとも言えないのであった。かくして、守衛前についた。やはりアースが妖精で飛んでいることがあり目立ってしまう。アースは物凄く嫌そうな顔をしていたが…マイが死んでしまうのは頂けない。早く聖女を取っ捕まえて帰ろうと考えていた。
「シュウお兄ちゃんー。ボクはこの街の中は入れないよー。聖女を極力呼び寄せてー。」
「あ、うん…やっては見る。」
「ボクもサポートするよー。」
そしてシュウの番がやってきた。




