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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
人間の領地
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淀めく記憶

「お姉ちゃんが助けてくれたの!」

「お姉ちゃんって…と言うことは本当の姉じゃないのね。」

「ええ…と言うより私自身、何故ここまでしてこの子を助けようとしているのか謎ですよ…」


 私はさっきからずっと、うつ伏せで机に突っ伏していた。その状態で左手を上げ下げする。テイマーの魔物として登録された証のまあ、リストバンドの様なものをかざした。


「お前、魔物なのか?」

「どう思います?私は自由に行きたいのに、気づいたらこの子を助けるためにここまで身を売ったんです。バカらしくないですか…。」

「………」


 ハンターのメンバー達が黙った。何を考えているかは私には分からなかった。ただ、女性の1人が私に手を伸ばしたのは分かった。


『姫様!危険です!花が狙われています!』


 横目で見ると、手を伸ばした先はどうみても私の花の方だった。


「ヒャ!」


 咄嗟に反射神経で避けようとする。頭を上げれば花が手にぶつかる!当たり前だが、手に花びらがぶつかったぐらいで花が枯れていたらとっくの大昔に花など枯れている。しかし、私は妹の花が魔物にもぎ取られ妹が枯れ果てて死んでいく様子を見ている。一度受けてしまったトラウマは早々拭い取れない。なんとか避けようと体を強引に横にずらしたら、バランスを崩し椅子ごと右側に転倒してしまった。それでも私は体を起こし、お尻で後ろに下がりながら『栄光』メンバーから離れようとする。


「コナイデ!サワラナイデ!コワイ!コワイ!!」

「おい!どうした!」


 椅子から誰かが転倒すれば大きな音がなる。場は取り乱し始めていた。その時シュウ君が椅子から立ち私の前に立ち塞がった。


「お姉ちゃん…お花、触っちゃダメ!お姉ちゃん…お花、大切にしてる!」

「あ…え…」

「何があった?」

「あ、大丈夫です。俺たちがちょっと何かしてしまったみたいで…大丈夫です。はい。」


 ハンター数名が場を沈めていった。私はまだ、頭の上からちょっと左側についている花を庇っている。『栄光』メンバーのリーダーっぽい男性が、私の花を触ろうとした女性に何か言っている。


「ごめんなさい。ただ、可愛らしいお飾りだと思ったからつい触ろうとしちゃって…。」

「………」

『姫様大丈夫ですか?』

「…大丈夫。」


 私はゆっくり立ち上がった。そして倒れた椅子を戻し、そこに腰掛ける。


「すまない。俺のメンバーが迷惑をかけた。」

「いえ、大丈夫です。人間で言うところのこの花は心臓です。迂闊に手を出すと…場合によっては反撃します。」

「そうなのか…いや、俺たちも見たことない魔物だからなお嬢ちゃんは。他人の魔物に手を出すことはマナー違反だ。反省している。」

「分かってくれれば良いです。ところで、皆さんも私がどう言った魔物なのか分からないんですね。」

「あ、ああ…見たことないな。まず、ちゃんと会話出来るだけでも驚きだしな。」

「そうなんですか。」


 私のおばあちゃんの寿齢は2万歳を越えていた。要は私も殺されなければそれぐらい生きることになるとは思われる。今はシュウ君がいるから別にどうでも良いことではあるが、自分探しの旅をするのも良いことかもしれない。


「シュウ君?もう大丈夫?」

「うん!お兄ちゃん達ありがとう!」

「おう、坊主!大変そうだけど、頑張ってな。」

「でも、貴方達これからどうするの?年齢的にハンターは厳しそうでしょ?」

「普通に考えたら孤児院よねぇ。」

「ですかね。あ、コップか何か持ってます?」

「コップ?」

「簡易的にお礼します。」

「良いって。」

「借り作ったままだと私が嫌なので。まあ大層なことは私には出来ませんけど。」


 貸してもらったコップを花弁に当てて首を左へ傾ける。この体感は一生慣れそうにはないが、シュウ君の空腹を満たしてくれたお礼ぐらいならしょうがないだろう。


「はい。」

「なんだこれ。」

「花の蜜です。毒物じゃないですし…」

「あーお兄ちゃん達ずるい!お姉ちゃんの花の蜜!僕も飲む!」

「シュウ君はまた今度ね。」

「はーい!」


 子供は純粋で助かる。


「飲んでも大丈夫なのか?」

「毒物ならシュウ君既に死んでます。」

「…ありがたくもらっておくよ。」

「じゃあ、ありがとうございました。シュウ君いくよ。」

「はーい!お兄ちゃんありがとうー!」


 私達がさった後の話であるが…


「これ凄い甘い匂いがするわね。蜂蜜かしら。」

「いや、ただの蜜だと思うぜ。」

「うーん。まあ、あの子供も飲んだことあるみたいだし、ちょっと舐めてみるか。」


 『栄光』のパーティーリーダーが意を決して、指を突っ込み舐めてみた。


「な、なんだこれは!!美味いぞ!」

「嘘?私も私も!」


 更に数日間、この蜜を舐めた4人はいつも以上に体調良くハンターの仕事をこなすことになる。当本人も知らないのだが、光合成で作られたこの花蜜は自身の機動力として消費されている。何も食べなくて良いと言うことはこの花の蜜自体の栄養だけで生きることが出来るという意味である。それゆえ、シュウ君が数日間碌なものを食べず生き延びれた理由もこの蜜を過剰摂取していたからという事になる。それだけ貴重なものであるということをこの時はまだ誰も理解していなかった。

 区切りがよく分からないので暫く同じ章で行きます。

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