出発します
(よし。取り敢えず、光合成はバッチリね。)
数日後…いよいよ再度フェンリルが街に来る日…マイこと私はどっかのババアが原因で朝早くから街に繰り出されプンプン丸なのだが…それ故、街の出入口近傍の草原で日光浴をしていた。前世も日光に当たることは嫌いではなく…今世に至っては日光に当たるだけで生きていけるので…腐葉土や水も必要だが…変な心配をしなくて良いと言う意味では私は幸せなのであった。
(フェンリルがいなければだったんだけどね…)
と思いながら、私は守衛のところに向かっていく。既にシュウ君とは待ち合わせをしており、シュウ君も勿論いた。他のメンバーも集まりつつある。…ただまあ、貴族はいなかった。いや、寧ろ今までいる方がおかしいのであるが。伯爵夫人も変わり者であった。
「さて、結局どうなった。」
フェンリルも到着し問い合わせる。勿論シロもいないのだが…コミュ力壊滅のシュウ君と謎で定義される妖精が説明を始めた。私はシュウ君よりもこう言うところでは発言力が乏しいと言う短所がある。逆にシュウ君は私の側だと発言しやすくなると言う長所があった。
「えっと…取り敢えず、僕とお姉ちゃんと…後…」
「ボクも行くよー。面白そうだしー。」
「アース。任せて大丈夫なのか?」
「任せてー。」
栄光達はフェンリル様と一緒に行くことは出来ない。ただ、2人は心配なのと…実力的に申し分無い大地の妖精アースが同行することになった。予めだが、アースは対面では私より圧倒的に強い。仲間であるなら心強い。他にも役立ちそうな場面があると私は考えていたが…それはまた後程とする。
「で、出発は出来るのか?我として十分待ってやったつもりだが?」
「えーっと…シロさんに言われていて…3人が全員乗れるか確認したいです。」
「フェンリル様。シュウに旅路の荷物も持たせています。極力軽くなるようにしましたが…一緒に運べますでしょうか?」
シュウ君とリールさんからの注文である。
「構わぬ。」
とのことなのでいよいよ出発に向けて準備が始まった。シュウ君は荷物を背負い…大人にとって、ベテランハンターにとって軽いはシュウ君にしてみれば重いのだが…そのままフェンリル様の背中に乗る。風圧を考慮し、乗った後うつ伏せでしがみつく。その後にアースが鞄にしがみついた。アースの方が小さいが…妖精の羽があるためシュウ君の前に行けないのである。更にツルを使って2人をフェンリル様に固定した後、私はフェンリル様の左横に固定する。右横は、私と同じぐらいの重さの石…岩か?…を縛り、バランスを保った。私は人間の10歳ぐらいの容姿だが…10歳の子供より体重が軽かった。
「フェンリル様?行けそうですか?」
シュウ君が不安そうに聞く。シロはちょっと重すぎると言っていたのだが…フェンリル様ならなんとかなるのではと楽観視していた。
「ふむ。問題ない。速度は落ちるが…人間の子供が耐えれる程度の速さしか出せぬしな。」
私は不安が過った。当たり前だが…時速1000kmなんかで飛ばされたら私達は即死である。現状フェンリル様の最速は分からないが。そして意外に…いや、想定内か…私達が死なない程度に手加減はしてくれるらしい。
「フェンリル様。シュウ達を頼む。」
「うむ。我は恩を仇で返すことはしない。では行くぞ。」
フェンリル様はいよいよ移動を始めた。どんどん加速していく。風圧がドンドン上がっていく。
(これ…耐えれる?!)
私は手で帽子を押さえつける。私は前世早い乗り物には乗ったことはあるが…電車や車に置いては基本窓があったところで箱に入っているのである。今回はそれが直に体に当たる。かなりヤバかった。
(ジェットコースターかな…)
体感でどれぐらい速度が出ているか等分からない。ただ、流石に飛行機レベルは出ていないだろう。全員死んでしまう。仮に時速100kmだとすれば10時間程度でつける。その速度を維持出来るだけでフェンリルは化け物であった。
(く…私が一番姿勢的に辛い。)
シュウ君やアースはフェンリル様の背中にうつ伏せになっている。その為風圧の影響を浮けにくい。しかし私は横である。もろ受けであった。
「ふぇ、フェンリル様…一度止まって貰って宜しい…ですか?」
「うむ?構わぬぞ。」
フェンリル様は速度を落とし、止まった。既にそろそろ山を登るための麓まで来ていた。
「お姉ちゃん?どうしたの?大丈夫?」
「ちょっとツルが食い込んじゃって…。」
風圧の影響をもろ受けの私はツルで縛った部分が体に食い込みすぎて痛かったのである。人間の体ならどうなっていたかは分からないが…魔物の私は死にはしない。ただ、食い込みすぎであった。
(ツルの本数を増やしましょうか。)
1-2本では食い込んだとき痛い。太いツルは流石に巻けないので、細いツルを横に並べるようにして再度巻き直す。地面からツルを出すと、フェンリル様を地面に固定してしまうので、始めは地面からツルを出し、簡易的に体を固定した後…両手からツルを出し体を固定して地面のツルを撤去すると言う結構難しい作業を実施していた。
「そのツルは変幻自在なのか。」
「うーん、限界はありますけど…イメージさえ出来ればなんとかなります。」
シロを使っての騎乗訓練によってかなり私のツルを扱う技量は向上していた。
「意外に便利なのだな。」
「便利かぁ。逆に私の武器はこれだけなんですけどね。」
私のツルは変幻自在である。それ故幾度もの襲撃に適応してきた。いわば私のツルは自己防衛特化なのである。私も再度縛り終えたので再び加速する。既に山の中を駆け巡っている。飛んでもない速さであった。