子供の発想力
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。こんなのはどう?」
シュウ君が何かを閃いたらしい。私はもうギブアップで、領土から少し離れてるし誰も見ていないからと言う理由で全裸になっていた。帽子や服はシュウ君が持っている。魔物として生きている時間が長すぎるため人間の時とは違い服を来ていることが違和感なのである。太陽光も出ていたので光合成もしていた。
「うん?どんな感じ?」
私はシュウ君に近付く。シロやアースもやって来た。ここには人間は一人しかいないし、子供一人しかいない。残りはA,Bランクの魔物や妖精のみ…外から見たら物凄く危なっかしいが、シュウ君は逆に飛んでもないレベルの護衛があるのであった。蛇足だが、ムサビーネ夫人はここにはいない。帰る際になったら守衛経由でシロを迎えに来るらしい。
「えーっとね、うーん…とりあえず言った通りにやってみて。」
「あ…うん。分かったわ。」
どうやら実践的にやるらしい。…で、結局どうなったかと言うと…
(マジか。)
私はシロに乗るのではなく、シロの左脇腹と言うべきだろうか。そこに背中を着け…ベビーシートと言うべきだろうか…両肩から反対方向の両腹にツルを通し、そのツルはシロの体に巻き付くみたいな構造になった。シロの大きさの場合、この方法では私の疑似足や疑似スカートが若干地面に擦れているのであるがフェンリル様の大きさなら大分余裕があるだろう。
「シロさん。歩けそう?」
「やってみよう。」
シロは歩き始める。若干バランスは悪いが…私の足も擦れてるが…動けるみたいである。
「そうだな…バランス的に反対もあった方が楽かもだが…出来なくはないが…フェンリル様がなんと言うかは分からないな。フェンリル様は予想よりおおらかだったので妥協してくれるかもだが。」
「よーし。じゃあ、僕も反対側についてみる。」
「じゃあボクもー!」
「アース、お前関係ないだろ。」
「あれー?狼なら3匹ぐらい運べよー。」
「なんだと?!」
「ストップ。」
やはり白銀狼と駄妖精はそばに置くのは不味そうであった。再びシュウ君もシロに縛り付けて実施してみる。
「うーむ。両方だとガサツクな。フェンリル様とは言え、これでは運びにくいだろう。」
「うーん、僕お姉ちゃんと同じ方向向いていたい。お姉ちゃんが急に攻撃されたりしていなくなっちゃうのは嫌だ。」
シュウ君の意図がいまいち読めない私だが…回りに植物がいる限り私に情報は常に飛んでくる…奇襲されることはあり得ない…まあ、シュウ君にも事情があるんだろうと言うことにした。
「マイお姉ちゃんはどうでも良いけどー、やっぱり背中に乗りたいよねー。」
「アース?どう言うことよ。」
「そういうことー。」
「シュウ君。アースの妖精の羽、触り心地良さそうだしさわって良いかな。何なら一緒にどう?補足だけど、妖精にとって羽は触られたくない場所の1つみたいだけど。」
「え…えーっと…お姉ちゃんが良いなら…」
「ちょっとシュウお兄ちゃんー?!マイお姉ちゃん忠告してるよねー!なんで許可出すんだよー。」
アースが本気を出せば私は対応出来ない。それでも弄れると言うのが互いの信頼関係を物語っていた。
「うむ…大分遅くなったか。今日の訓練はこれまでだな。明日…何とか騎乗について丁度良い方法が分かると良いのだが…。」
仕切り役は白銀狼のシロになっていた。従魔が子供とは言え人間を仕切るのも変な話である。昼休憩はとったが…フェンリル様が帰った後は全員ぶっ続けで騎乗訓練かつ、私の対策検討だったので全員疲弊していた。私達は私達で大変だったが…色んな所で他にも問題は起きていた。