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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
遥か彼方への遠征
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えーっと、私…股開けないんですけどどうしたら良いですか?

「こ、死んじゃうか…と思ったよ…。」


 シュウ君は吹っ切れるかのようにまた泣き始めてしゃがみこんでしまった。私はシュウ君を介抱し撫でてあげる。


「よしよし。シュウ君、良く頑張った。偉いよー。発想も良かったし、この調子ならまた私は帰ってこれる。」

「マイお姉ちゃんの言う通りだよー。シュウお兄ちゃんなんてボクやマイお姉ちゃんと違って戦うことすら出来ないのにー、フェンリルにあそこまで対峙するなんて凄いよー。あいつ等なんかとは全然違うよー。」


 アースは夫人やら栄光の保守的メンバーや守衛やらを見ながら言った。個人的、アースはいつも一言多い。


「だが…色々大丈夫なのか。フェンリルとの旅など前例がない。何を準備すれば良いんだ?」

「先ずはフェンリル様がどのようなルートを通るか想定し…食料や雨の対策などを考える必要性があるかもしれない。それに…」


 リールさんは私を見た。


「仮にフェンリル様に乗るなら騎乗訓練もした方が良いかもな。寧ろ、必要そうな準備は俺等が何とかするとして、2人はそっちの方が良いだろう。フェンリル様に馬車を引っ張れなど言えないし…ムサビーネ夫人。シロを暫く借りれないか。」

「…シロ。彼らの手伝いを任せて大丈夫かしら。フェンリル様に下手な乗り方をして刺激をした場合、私達は恐ろしい損害を得ることになる。」


 損害の意味が、アルビトラウネの伝達役としてなのかデレナール領全体としてなのかは分からないが…シロは了解してくれた。そして、今日から暫く私とシュウ君は狼を使った騎乗訓練が始まる。当たり前だが座る場所など無い。フェンリル様に装備を装着など不可能なので(じか)に座ることになった。そして大問題が発生する。


(待って…私どうやって座れば良いの。)


 正確には股がれば良いの?である。シュウ君の足は人間の足。馬に股がることなど容易である。動いて落とされないかは一度おいておこう。何故か面白半分で来ているアースも股がることは可能。アースは魔物を毛嫌いしている。野生の本能で、魔物は魔力の塊である妖精を襲うことなど日常茶飯事なのである。その為、妖精も野生の本能で魔物から逃げたり攻撃したりするのであるが…知らぬ間に私だけでなくシロにおいても抵抗がなくなっているらしい。…いや、嫌ってることには変わり無さそうか。隙を見ては殺し合いをしていた。こっちに来たら私が死ぬので関わらないようにしている。


(足が…開けない…)


 私の足はいわば根である。そして葉っぱで出来た疑似スカートも形が固定しており人間のスカートと違い、股を開けば開くなんてことはない。そもそも私の根で出来た足は歩いたり曲げたりは出来るがそれ意外基本不可能と思った方が良い。その為、開くことが出来ないのであった。


(参ったわね。どうしましょう。)


 フェンリル様の横を歩くではまず追い付けないし…往復など論外になってしまう。ツルとかを上手く使って白銀狼であるシロの上に乗るのは良いのだが…跨げないのであればほぼ立つ状態になってしまう。それだけでアンバランスで落ちそうなのに…いや、幾度も落ちたが…動かれたら不可能だった。


(頭から落ちなくて良かったわ…。)


 蛇足だが…マイはもうちょっと体を…自分の花を大事にした方が良いと思う。狙われると過剰反応するが、自分の行動で花を何処かにぶつけそうに成る行為については鈍感であった。強いて言えば、マイの花もツル同様…攻撃には弱いが衝撃には強いのが原因かもしれない。最も、今はデレナール領近傍の草原で練習しているため帽子は被っているのではあるが。


「マイお姉ちゃんー、この狼に乗ると早いよー。」

「うるさい!」


 既に、シロに乗って騎乗を楽しんでいる奴がいるのがまた気に入らなかった。と言うより妖精は飛べるだろ。馬…ではない狼…に乗る意味が良く分からない。


「シュウ君ー、助けてよー。私泣いちゃうよ。うぇーん。」


 元々が10歳の女の子っぽい行動を一切していない魔物である。見掛けだけ10歳の女の子。泣いても…初見では可哀想な女の子だが、素性(すじょう)を知っているシュウ君やアース、シロには効果がないのであった。


「うーん、ちょっと考えてみる。」


 ある程度の時間を有したため、シュウ君も大分シロに乗ることに慣れてきていた。子供の成長は早いものである。後は私だけであった。寧ろ、アースが訓練に参加している方がおかしいのだが。


(魔物の私が、フェンリル様に乗る運命に成るとは…世の中分からないものね…。)


 シュウ君を助けなければ私は今でも永遠と森の中だっただろう。刺激が少ない平和な世界…魔物には襲われるが…。どっちが良かったのか時折明け暮れるのであった。

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