栄光と奴隷少年
「ハァ〜。」
『姫様どうされましたか?』
「お姉ちゃん。お腹すいたよ…。」
私のシナリオではギルドに所属すれば最低限の資金調達が出来ると見込んでいた。そうすれば、野宿はまだしもシュウ君が生きれるぐらいの収入は出来るのではなかろうか。そういう見積りだったが、シュウ君が若すぎるという課題を忘れていた。また詰んだわ…それに人間と関わるという、精神的にも魔物本能的にもダメージを与え続ける状態に今も居続けている。椅子に座り私は机に突っ伏していた。
「シュウ君。今日朝取った木の実まだ残ってる?」
「うん…後ちょっと…」
「今はそれで凌いで。打開策考えるから。」
「お姉ちゃんも食べよう?」
「大丈夫。私は魔物。平気…」
「でもお姉ちゃんも疲れてそう。」
シュウ君の気持ちとして、お姉ちゃんと一緒にご飯を食べたいというのが密かな願いであった。ただ、私はそもそも論食べずに生きれる。むしろ、光合成が出来る腐葉土がある場所を求める。シュウ君の気持ちも分からなくはないが、食べ物はシュウ君のお腹に入れた方がよっぽど価値があった。植物達に聞いていると…このギルド内に観葉植物があるのは助かった…やはり、孤児院に行くべきという結論にしかならなかった。孤児院の場合、運営費は国なり領主なりが出す。子供はお金が払えないからね。孤児院はあるとのこと。少し休んでからの方針は決まった。本当に植物様様である。
「お前達大丈夫か?」
私が休憩のため及びシュウ君がなけなしの木の実を食べていると、流離のハンターだろうか?多分4人パーティーかな?そのうちの1人が声をかけてきた。
「うーだいじょばないですね。」
私は机の上で伸びてしまって不貞腐れている。床は木造。栄養供給も無理。光合成も室内だから出来ない。外へ出るのが得策だが、シュウ君が木の実を食べているのでちょっと待っている状態である。
「お兄さん達…誰?」
「私たちは『栄光』っていうパーティーメンバーよ。さっきから見ていたけど、流石に見かねていてね。あまり声をかけるのは良くないんだけど。」
「ほら、ちょっと食いもん分けてやるよ。」
『栄光』パーティーの堅いの大きな男性が骨付き肉をシュウ君に差し出していた。
「いいの?」
「シュウ君、やめておきなさい。貴方の両親から学ばなかった?知らない人について行っちゃいけないとか、知らない人からの食べ物は食べちゃいけないとか。」
「う…」
シュウ君の手は止まったが、顔は食べたいというのが目に見えて見えた。
「毒物とか入っていないわよ。善意よ善意。」
「お礼に何かーとか企んでいたりしませんか?」
「ないない。俺らそこまで腐っちゃいないよ。」
「ふーん。」
植物達にこのパーティーについて聞いてみたが、まあ至って普通のハンターらしい。特に問題も起こさず地道に努力してるとかどうとか。ただ借り作ると返さなきゃいけないという思考があるんだよなぁ。
「お姉ちゃん…。お願い…。」
あーダメだこの子。待て!って言われて頑張って待ってるから早くヨシと言って!という様な立ち振る舞いしている犬にしか見えんわ。
「はぁ…今回だけだからね。たださっきも言ったけど、知らない人の勧誘は基本ダメ。わかった?」
「うん!」
そして、肉にガブリつくシュウ君であった。私は確かに魔物を捕獲は出来るが、一応捕食も出来るが料理なんて出来ない。寧ろ火は燃えるのではないかと怖い。人間の時は結構火は生きている感じで好きだったんだけど、どうやら私の魔物の本能が受け付けない模様。まあ、そんなこと昔から知っていたので対策はしているが。
「で、なんでそんなにボロボロなんだ。お前なんて服すらろくに着てないじゃないか。」
「僕…えっと…」
何故かシュウ君が私を見た。
「言いたいこと言っていいよ。ちょっと調べたけど、悪い人たちじゃなさそうだし。」
「調べた?」
「うん。僕…売られた子だから…。」
「売られた?」
シュウ君の声はそんなに大きくないので、多分この『栄光』パーティーにしか今までの経緯は聞かれていないであろう。途中、メンバーの1人が私にも食べ物を分けようとしてきたがどうしても分けたいならシュウ君に渡してくれてと言った。私はそんなことより光合成なのだが、向こうには優しいシュウ君の姉と思われたかもしれない。
「おいおい、話を聞く限り奴隷売買だろそれ。どこの場所だそこ?ギルマスに報告した方が良いか?」
「シュウ君と言ったわよね。貴方何処で売られたの?」
「報告は優先だな。まあ、それ以上については俺らじゃ何も出来ないがな。大変だっただろ。よく一山越えて生きてこれたものだな。」
まあ、話を聞く限り人身売買は犯罪とのこと。これは多分、売った側も売られた側も投獄だわ。シュウ君のご両親も多分見つかったら終わりだろう。可哀想なものである。父親の話しか聞いていなかったが、シュウ君の父親は子供に森に入るなとちゃんと伝えている良い親だったという印象である。それを考えると、余程金銭に苦しんでいたか誰かに脅迫されたか…まあ結局は金絡みである。私はかれこれ150年以上そういうものに関わらず本当に良かったと考えていた。まあ、森で明日我が身という状況が良いかと言われるとなんとも言えないが。シュウ君は躊躇いもなく生まれた場所とかについて話していたので…ここから相当遠い場所らしくみんな唖然としていたが…罪人確保は時間の問題だろう。どんな理由があっても小さい子供にここまで酷い仕打ちをしてはいけないのである。
サブタイトルが意味深になってしまいましたが、あまり意味はありません。