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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
生後100年の歴史
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祖母の木

(うーん…)


 結局全くよく分からず、ただ呆然としていると何処からか声がした。


『…の子…』

「だれー?」


 頭の意識は大人の人間ではあるが、声に出そうとすると何故か幼稚になる。


『妾の394番目の子…妾の声聞こえるか?』

「え?」


 声がどこからか聞こえる。どこからかが分からない。あたりを見渡しても人間はいない。


「どこー?」

『お主の横じゃよ。』

「えーっと…」


 横と言ってもあるものと言えば、私がさっきまで付いていた枯れかけた木であるが…


「おばあちゃん、ここー?」


 まさかとは思うが、この木がしゃべっていたりしないよね?


『そうじゃ。妾は…うーむ、とりあえずここじゃ。』


 音的に間違いなく木がしゃべってる。色々突っ込みたいが全部飲み込む。


「木って、喋れるのー?」

『妾は唯の木ではないんじゃが…まあ、そうじゃのお。今は無理でも生きていればお主も聞き取れるようになるかもしれんのお。』


 何それ?と言うことはこの木は唯の木じゃないし、他の木とかもしゃべってるってこと?少なくとも人間の知識は通用しないらしい。


「おばあちゃんは特別ー?」

『どうじゃかのお。ただ少なくとも…いや、なんでもないわい。』

「えーききたいー。」

『今はまだお主は幼いからのお。時が来れば話してあげるぞい。』

「ムーイジワルー。」

『フォッフォッフォ。』


 喋っているであろうこの木は結構気さくみたいである。まあ教えてくれないならとりあえずは無視するとしても…


「おばあちゃんー、ここどこー?」

『はて?山の中じゃのお。妾もそれ以外はわからぬ。』


 それは答えになっていないんだよなぁ。ただわからないらしいのでしょうがない。その時、ちょっと気を抜いた拍子に頭が若干重たいことに気づいた。手を当ててみると、花弁に触れた。さらに中央にはおそらく雄蕊なり雌蕊のようなものにも触れれた。頭の左上にくっついている感じなので直接みることはできないが、大きさ的に私の顔の半分ぐらいはある大きな花である。


『その花が気になるのかぇ?』

「うん。バランス崩れそう。」

『慣れじゃな。ただ、お主。その花はお主の命そのものじゃ。下手に触って傷つけないようにの。』

「命?!」

『そうじゃ。だから大事にのお。』


 おいおい。そんな急所のようなもの頭の上に大きくつけておいていいのか?もちろん予想は出来たが取り外しとかは出来なかった。どんな生態系してるんだよ私。目に見えない範囲は手で触ったりして大体の輪郭は掴んでいく。やっぱり擬似ブラジャーや擬似スカート、後は左上の大きな花以外は多分人間の女の子と同じ構造である。スカートの中は知らない。


(うーん。。。)


 現状ツッコミどころ満載だが、突っ込んでいても始まらない。これからどうやって生きるかである。とりあえず、周りを調べようと今まで見下ろしていた木々の方へ向かおうとした。


『394番目の子よ。約束があるのじゃ。決して木々の奥へは入ってはいかん。』

「え?」


 首を回すことが出来たので一望を見渡すことが出来るようになったが、このおばあちゃん木を中心にある程度の広さが草原になっている。その草原の奥に草原を囲うかのように木々が連なっている。


「どうしてー?」

『森の中は魔物だらけじゃ。今のお主が草原を抜けて仕舞えばあっという間に餌食になってしまうぞい。』


 何それこわい。動けないじゃん。


「ここにも魔物くる?」

『妾の周りなら安全じゃ。だから森へ行ってはならんぞい。約束じゃ。』

「わかったー。」


 ここも山の中。むしろここだけ草原だから魔物にあっという間に見つかって終わりそうな気がしてならないが…頼るものも何もない以上、今はこの枯れ果てた木…から私は生まれたと考えるべきなのか?…に従う以外選択肢はない。


『不安そうな顔じゃな。じゃが安心せい。お主がこの森で生きるための方法を妾が教える。なーに、時間はたっぷりあるんじゃ。そんな身構えなくて良い。お主のペースに合わせるぞい。』


 頭の中に何かがよぎった。人間の頃の記憶。上司に指導という名のパワハラを受けた記憶。。。


(私、大丈夫かな。体が怯えている。何か忘れてはいけないことを忘れている感じがする。。)


 私の頭は色々受け付けていなかったが、私には選択肢なしでこの未知だらけの体で未知だらけの場所で生きていくことになる。そして100年の歳月が過ぎた。それまでの間に色々起きたが時系列までは覚えていない。ただ、100年と言う歳月は物凄く長い時間でありそして気づいたら通りすぎていた。身長も少し延びた気がする。人間の女の子換算で8歳ぐらいかな。100年なんて人間ならばおばあちゃんだし、それこそ生きていることすら希レベルなので…自分はやっぱり人間じゃないと確信せざるを得なかった。

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