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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
遥か彼方への遠征
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聖女の居場所と聖女の残虐さ

「遅すぎるわよ。何してたの?」


 到着すると夫人から一喝である。


「伯母さんー。なんで怒ってるのー。マイお姉ちゃんから聞いたよー。フェンリル様が早くに来てしまったってー。そこから色々準備してたらー、無理に決まってるじゃんー。ボクだってーまあ、これぐらいかなぁーでマイお姉ちゃんの住み処へ行ったらー既にマイお姉ちゃん出掛けてたしー。」


 私はいつもデレナールへ出掛ける時間に出発する予定だった。アースも来るとかだったので、そのぐらいの時間帯に私が普段通る街道近傍にいるように伝えていたのであった。


「だったらもっと早くに出れば良いことでしょう?」

「予測不能の時間でー、予備で早くから出るのー?マイお姉ちゃん真夜中に出ないと行けなかったみたいだよー。」


 アースはその場で大笑いしていた。完全にムサビーネ夫人を馬鹿にしている。


「アース。笑うのは止めて。喧嘩売る相手を間違えてる。」


 私自身も理不尽による怒りは溜まっているが…相手は貴族である。最悪シュウ君に被害が被る。魔物を制御出来ていないとか何かで。ここは日本ではない。上層部が処罰と叫べば投獄されてしまう。裁判官などいない。


(そんな都合良く朝早く起きてフェンリルの行動を予想して動けるか。)


 私は内心やはりカンカンだったが…アースへの忠告の後、シュウ君のそばに行った。まだ涙の後が残っていると勝手に思った私は…シュウ君を撫でるのであった。


「珍しい魔物だな。」


 フェンリルにさえ呟かれてしまった。私はフェンリル様とは目を合わせないようにした。今までのミサさん辺りとのやり取りから「うるさい!」と言う目で見てしまいそうと思ったからである。


「それで、聖女の情報は何か得られたのか?」


 フェンリルは私の方を見た。いや、全員が私の方を見たと思う。


「結論だけ先に言います。おおよその場所は分かりました。そして、ここデレナール領ではありません。」

「何だと?」


 フェンリルは驚いた声をあげた。そして人々からは安堵の顔が見られる。極論を言えば早くこの街から遠ざかって欲しいであった。


「何処なのだ?」


 フェンリル様が私へ問いただす。私はシュウ君を見てシュウ君を撫でながら呟くように言った。


「何処と言うのは難しいです。大体あっちの方角へ…うーん、遠すぎて植物達も曖昧みたいですけど…大体1000km弱と勝手に考えています。」


 私が指を指した方角は山だった。デレナール領は王都から孤立した辺鄙(へんぴ)な所にある。ほぼ回りはどっちを向いても山。王都へ続く道のみ山ではなく街道に成っている感じなのである。そして、聖女の位置は街道とはほぼほぼ反対側であった。


「ふむ…なら行くしかあるまいか。」


 蛇足であるが…日本換算で1000kmは東京から福岡の距離を超える。とんでもない距離である。フェンリル様は私が指差した方向へ行こうと足を動かし始めて立ち止まる。周りの人間は「ようやく…」という一息をつき始めていたが、再びフェンリルを見る。


「向かったとしても具体的な場所は再度探さなければならないな。そこの魔物よ。植物の力を使えば詳細の場所まで全て分かるのか。」


 フェンリル様は私を見ながら言った。


「そうですね。その山の先が何かは分かりませんが…砂漠のど真ん中とか海のど真ん中とかじゃなければ分かるとは思います。」


 聖女の場所を植物達が断定出来たのであるからそんなところには聖女はいないはずではあるが…私なりの意見であった。


「そうか。であれば道案内を頼む。」

「え?」


 私は予想外の展開に硬直した。勝手に行ってくれると思っていたのである。


『姫様。行かない方が宜しいかと。第一この距離です。行ったら最後帰って来れません。』

『聖女がいる場所はどうやら結界が貼られているらしいぜ?魔物避けみたいだ。そばに行っただけで姫様がどうなっちまうか分からねえぞ。』

『聖女は魔物に対して残虐との情報も入っております。聖女がいる街に来た魔物など、魔法で一突きらしいです。更に結界を貼った時も元々その中にいた魔物…従魔もいたらしいですが…全員問答無用で浄化されてしまったと。要は殺されたとのことです。それ故一時期街中で反発が起こったとかどうとか。』


 植物が言ったことに嘘はない。しかし、植物達の情報は日本のスマホとかではなく伝言ゲームで伝わってくるのである。要は、内容が事実であっても植物達の都合良い様に内容が書き変わっている。距離が遠ければ遠いほど尚更…。私も勿論150年も生きていればそれぐらい分かるが…本当の情報を読み解くのは不可能に近い。その為、私は疑うよりそれを信じて行動する癖がある。寧ろ信じたお陰て今まで生きて来れたので疑うことが出来ないのである。前世人間が全く信じれなかったと言う経験が更に植物へ依存させていた。現段階で聖女の意図で魔物を排除したのではなく、他の人々を守るために仕方なく…とか、教会の上層部にやれと言われたから細かい弊害を知らずに…偶々街中に来ていた異国の民の従魔等含めて…やってしまったとか…そう言う聖女の事情などマイには届かなかったのであった。

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