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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
とある教国の異質なシスター
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教国の認定儀式

(お掃除ーは、これぐらーいで…あー、子供達を軽く見ていこうかーしらね。)


 連れてこられた、清らかな心の持ち主…は建前、白魔法を使える人材はここの教会で徹底的に鍛えられる。将来、癒しの魔法で民を救うため…裏を返せば宗教団体の資金源となるためだが…キャシーも同じ道を歩んだ。ただ、彼女は色々特別だった。と言うのも、見た目だけではなく…白魔法の質も全然違ったのである。


「あらーら、貴方ー怪我してますーね。」

「うう…キャシーお姉さん有難う。」

「いえいーえ。」


 子供達…厳密には、ここの教会での跡継ぎの子供達…の1人が転んだのを見てキャシーは治療を行っていたが…これぐらい、この教会であればあれば誰でも出来る。ただ、キャシーのレベルはこの程度ではない。昨年とかでは、大型の魔物に襲われ片腕を損傷した冒険者に対し…腕の修復を実施していた。…要は、無くなった腕を再び生やしたのである。また、別の日…もっと過去に遡って彼女が白魔法をまだ完全に制御しきれなかった頃は…治療ミスで担当負傷者だけでなく別室で治癒している人まで一緒に治癒してしまったこともある。


(昼食の後ーは、儀式なーので…早めに昼食ー取りましょう。)


 彼女の恐ろしいところは…ハンターの後ろ楯として…治療役として出向いたはずなのに魔物を彼女の白魔法で駆除してしまえることであった。キャシー自身は「不味いでーす、怪我するー人、見たくありまーせん。」だったようであったが…ハンター達の間では、彼女は少なくともハンターレベルでもBクラスは優に越えるだろうと噂されているのであった。最も、ハンターと一緒にシスターが行くことは早々無いので噂話はキャシーの耳まで届いてはいない。


「これより、今年の聖女認定儀式を始める。候補者は全員前に出るように。」


 キャシーのほか数名の女性が前に出た。教国…と言うより、この世界では年に一度宗教関係者で聖女を洗い出すと言う儀式を行っている。ただ、最終試験がこの場と言うだけでありそれまで多大な関門を突破しなければここに立つことすら出来ない。それまでの試験も物凄く難しく…昨年この儀式に参加出来たから来年も参加出来るとは限らないのであった。


(私はあまりー興味ないのですーが。)


 聖女と言う地位は言わば教会の中でのトップクラスとなる。神に最も近い存在として扱われることとなり…教国においても最高位レベルの力を誇ることになる。その為、教会に勤める女性は全員が狙っているのであるが…聖女は早々なれるものではなかった。キャシーは権力など興味0であったため、参加したくなかったのだが…キャシーの実力が誰が見てもキチガイなため半ば強制で参加させられて…とんとん拍子で聖女認定儀式までたどり着いてしまったのであった。


(聖女はーここ何百年も誕生していないーと聞いています。これをやる必要性ーが、分かりまーせん。)


 何故最終試験までは数名たどり着けるのに、最終試験の聖女認定儀式を誰も通過出来ないかは直ぐ分かることになるが…この儀式を通過出来たものはこの教国では歴史がない。それこそ何百年前に何処かの国で一度誕生したことがあると文献が残っているだけであった。


「聖女認定儀式は、この宝石に候補者が各々祈ることによって決まる。この宝石は神の化身と言われている。宝石が祈ったものを聖女と認めれば白く光り輝く。では、儀式を始める。」


 要約すれば、神に認められて初めて聖女になれるのである。ただ、キャシーにして見れば…教会にいながらあまり神と言うものを信用していなかった。昔からハブられ、ここでもハブられ…神がいたら既に助けてくれただろと言う考えの持ち主である。元々連行されなければここで生活すらしているわけもないのだから。連行されて以降、両親とも一度も顔を会わせてすらいない。自分から会いに行かないのも原因かもしれないが…所詮私とはそういう価値だったのだろうと考えているキャシーであった。


(やっぱーり、誰も光りまーせんね。)


 キャシーは今年初めて儀式を受けるのだが…見るだけなら誰でも出来る。今日も教会所属者が何人も見に来ている。この儀式を知ってからとりあえず毎年見には来ていたが…誰も聖女になることは出来なかった。


「次は…今年最後となる。キャシー。前へ。」

「はーい。」


 野次馬達からの注目が走る。何せ、ここまで肌白で銀髪であれば目立つ。勿論、キャシーは教会でシスターとして働いている。見たことがあるものは何人もいるだろうし…この独特性から良い意味でも悪い意味でも相手を振り向かせている。実際のところ、あまりにもこの教国で浮きすぎた存在のため避けられているのであるが。


「キャシー。この宝石に手をかざし…神に向かって聖女と成りたい旨をお祈りしなさい。」

「分かりましーた。」


 この神父は舐めていた。確かにキャシーは聖女としての気質がある。しかし…どちらにしても、その鈍った口調が聖女とどう考えても結び付かなかったのであった。


(お祈りでーすか。困りーました。私は聖女その者に心の奥かーら成りたいわけでーはないです。)


 今までの教会のお祈りは、ざっくり言えば世界平和なり教国平和であった。どんなに周りから罵倒されたり虐げられても、その願いはキャシーの根本その物だったのである。しかし、聖女に成りたいと心から思っていない…先程も言ったが、この儀式は半ば強制参加…以上、心の奥から祈れないのであった。

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