迫害された銀髪幼女
暫くメインストーリーはお休みです。
(今日はー、判定儀式ーですか。)
時は数ヶ月前に遡る。ある教国でとある16歳ぐらいの少女…キャシーは教会にある寝袋で目を覚ました。髪は銀髪…目はブルー、肌は他の人より若干白め。髪を除けば白人とかなり酷似した美形の少女である。
(今日もー、お仕事ですーね。)
彼女はこの教会のシスターとして仕事をしている。ただ、彼女にも苦い過去があり…今でも影響は続いている。
「おはようー、ございまーす。」
「あ、おはよう。」
そのまま、別のシスターは通り過ぎた。他の人に挨拶しても変わらず素っ気ない対応。神父やら聖騎士、他もそんな感じなのである。
(やっぱりー、私ーは、周りから嫌わーれてるのでしょーうか。)
彼女は人間であるが…生まれて言葉を覚えたときから声が上手く発せれないのである。感覚的に、アメリカ人が日本語を覚えた直後みたいな感じ。全くそれと同じではないが…。それだけではない。周りと比べ明らかに肌白い体…青目、銀髪は目立ち過ぎていた。
(とりあえーず、今日はお祈りしたー後、掃除をしーて、午後から儀式でーす。)
シスターである。祈るときはちゃんと心を込めてはいるが…掃除をするときはいつもモヤモヤが強かった。
(何故ー、私ーは、ここで働いてーるのか。)
彼女は一般家庭に生まれたが、当初からの見た目で親族総出で拒絶されてしまっていた。いや、両親はそれでも我が子だからと…初めての子供だからと初めは接してはいたが…周りからの「なんだあの子供?」的な態度によってそのストレスのボロが子供に流れてきてしまっているのである。キャシーも幼いながらもそれを察し出来るだけ良い子として生活していた…が5歳ぐらいの時に転機が訪れた。
「お母ーさん、子猫さーん。」
キャシーが道端を両親と歩いていたときに怪我をした子猫が道端でうずくまっているのを見付けたのである。
「そうね。予めだけどお世話は出来ないわよ。」
母親は、娘が色々な生き物に対し愛情を注いでるのは知っていたが…それが拍車となり連れてきてしまうことがあった。そうするとそれを追い出さなくてはならず大変なのである。一度許可してしまうと、家が連れてきた生き物で崩壊してしまう。両親はそれを懸念していた。
「はーい。」
とはキャシーは言ったものの、猫が気になるようで怪我しているであろう足の部分をなすってあげた。すると…彼女の手が光り、猫の足が光り…猫は怪我など無かったかのように立ち上がって「にゃぁ」と鳴いて立ち去ったのである。
「え?」
母親は驚く。父親は「ま、まさか…」と、意味深な表情。そしてキャシー本人にしてみればそれが「当たり前」であった。同じようなことは何度もやっていた。ただ、彼女の能力がバレた瞬間である。5歳の彼女にはそれが何を意味するのか分かっていなかった。
(あのー時、治療してあげなーければ…いやいやーそれでは可哀想でーす。)
教会の窓拭きをしながら彼女は考える。それから数年が経ち…ある人物が家にやってきた。今いるこの教会の神父である。この教国は教国と言うだけあり、宗教国家である。その為、流石に国の統治は教会は不可能なので王なり貴族なり何なりなのだが…トップには神父様含めここの教会がかなり絡み込んできていた。言わば、逆らえないのである。
「どなたかいらっしゃいませんか?」
余談だが…本来他の王国等では教会が有ったとしても国の政策には関与出来ない。日本換算でどこぞの宗教に入っていただけで問答無用で国会議員になれないのと同じ。この教国では日本換算である宗教団体に入れば選挙云々無しでいきなり国会議員に成れ、自分が少数派意見でもその案が通って仕舞うことさえあると言った感じだろうか。日本では到底考えられないが、この国ではそれが成立してしまいかつ安定なのである。
「話はお伺いに上がっております。我らの教会は純度正しき魔法を使える人材を集めております。お宅の娘様を是非とも教会に紹介して頂けないでしょうか。」
キャシーのいる教会は悪徳団体ではない。ただ、シスターなり神父なり…この世を清らかにする力を持ったものを集めている。その力を利用し、病人を治療したり場合によっては害悪の魔物を駆除したりもしていた。駆除と言えど…駆除そのものはハンターの仕事なので怪我の治療がメインであろう。キャシーは本来であれば普通に学校へ行って普通の子供として生活…のはずだったのだが…外見からご近所にハブられ、両親もそれに悩み…家から半ば追い出す形で教会へ連れていかれることになってしまったのであった。




