そう言えば、大地の妖精って奴がいたなぁ…
「陛下お時間です。」
「うむ。では、今日の会談は以上とする。午前に話した魔物の襲撃の件、並びに今の伯爵の話をもとに各々対策を案じて頂きたいと思う。わしからも別途王令を出す。以上だ。この後は簡単な懇親会をしながら聞きそびれたこと等があれば質問すると良い。」
この後は部屋を移動し、前世日本換算で飲み会みたいなことになっていた。別に会談と言う名の会議から始まっているため披露宴みたいな物ではない。私達はムサビーネ夫人と行動していた。子供3人が好き勝手に動いて良い場所ではない。リグルト伯爵はしばし、陛下と会話し戻ってくる。
「マイ。捉えられていたアルビトラウネであるが…陛下の方から危険な魔物として処理する前に何故捕まっていたのか、何故王都にいたのかについて調査するよう要請をするとのことだ。彼女が問題を起こしていないと分かれば釈放になる可能性もある。その際は、我々が帰る時に途中まで連れて行こうと思う。なに、手を出していないと確認するのは容易いだろうから今日明日にはなんとかなるだろう。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「マイ。後頼みがあってだな。お前達の住処に簡易的で良いので対策を実施していると報告して欲しいのだ。会談中も話を出してはいたが…直ぐに効果が出るとも思わん。何せ、早々に盗賊を殲滅出来ているのであれば誘拐事件はアルビトラウネ以前問題発生しないからな。だが、効果が出ず奇襲されてしまうとデレナール領全員が危機に晒されてしまうしな。」
「訂正ですが、私は独り身です。私はあそこの拠点出身ではありません。」
「………」
「後、私はただの従魔です。命令ならシュウ君にしてください。」
「分かった。」
リグルト伯爵は安堵の顔をしていた。マイはシュウの命令は大半聞く。裏を返せば、シュウへ命令しろと言うことは話はちゃんと通してくれるだろうと言うことである。マイが嫌ならシュウは出さずこの場で拒絶する。一先ず、デレナール領は崩壊の危機を免れたのだった。
(うるさいわね…)
貴族から物珍しさから私への質問が後を絶たない。先日からの魔物襲撃を起こしたのは私と同種のアルビトラウネである。それに伴い、人間はアルビトラウネを危険視するはずなのだが…貴族らは自分達の館にいた為直接的な被害を被った輩が少ない。しかも、テイマーがおり、テイマーの信頼性も厚い。そして魔物でありながらの人間としての立ち振る舞い。手に入れたいという貴族が多かったのである。その為には、犯罪手段を除くとするならば…まずは交流である。テイマーと従魔を引き離すのはリスクが伴うが、デレナール伯爵と私達を引き裂くのは別に悪いことではない。それを狙っているのであった。
「2人とも。耳を貸してはダメよ。どちらにしろ、会談は終わったし…明日には帰るから王都を出るまでは仲間のハンター並びに私達以外にはついていかないこと。アリアのこともあるし、今日だけは連れ去られないか1日中警戒しておきなさい。」
伯爵夫人もここまでマイを公表する気はなかっただろうが…リスクが伴うし…昨日の今日である。こうなってしまったからにはしょうがない。早急に王都を後にしようと考えたようである。とはいえ、伯爵としてのマナーもある。この懇親会も会談経由でありアルビトラウネ誘拐を抑圧するためのもの。色々交流し他の貴族に「対策ちゃんとやれよ?」と念を押すため早々退散出来ないのであった。
「あ!」
シュウ君が小声で叫んだ。
「どうしたの?」
「お、お姉ちゃん。僕、昨日アースちゃんに会ってない。」
「あー。」
シュウ君は王都にいる間、いつ帰るのか妖精のアースに連絡する仕事を任されていた。アースにも伯爵一家の護衛を頼んでいるのだが、妖精のアースは人と関わりたくないらしく…その癖、道端で人に会うと悪戯を仕掛ける意味不明さであるが…王都に入ることが出来ない。そのため、夕方頃毎日シュウ君がアースにいつごろ帰るとかの状況を報告しに王都の正門外で報告することになっていた。しかし、昨日の夕方はシュウ君自体が誘拐され他の栄光メンバーも仲間割れだのでそれどころではなかったはずである。
「まあ、仕方ないんじゃないかしら。今日、この懇親会が終わったら行きましょう。」
会議も長く続いたが、この懇親会が数時間も続かないなら合流時間には間に合うはずである。とは言っても、服装とか色々あるので懇親会が終わって直ぐ向かうことが出来ない。最終的には伯爵家だけ残り私達は先に帰ることになった。馬車は2往復することになるが…公爵家に戻り服装や髪型を整え、私達は正門へ向かった。若干遅れたらしくアースは
「昨日来ないしさー、今日も遅れるしさー…妖精馬鹿にしてるでしょー!」
と、泥をかけられ散々であったが…まあ許して貰えたらしい。意外と懐が広い妖精であった。どちらにしても昨日はちゃんとした理由があるし…今日も一応だが…え、忘れてた?知らないなぁ…と言うよりそれはシュウ君の責任であって私の責任ではない…明日出発するとだけ伝えておいた。何時ごろかは不明瞭であるため…聞き忘れたため…ポンコツ二人組である…アースはイラッとし、私の花を触ろうとして出してはいけない声を出しながら私が転倒したこともあったが…明日早朝から正門から少々離れたところの街道で待ってくれるらしい。そしてギルドに向かうのであった。余談だが、私は植物達に事情を説明し…まあ、説明するまでもなく…狙ってくる輩はいないか常に警戒度を上げているのであった。
(今回も散々だったわ…帰り際からは森に近くなるし…王都で食べ物は食べたけど、やっぱり光合成の方が良いかな私は…)
と、植物の魔物っぽく考えていた私であった。いや、私は既に百年以上植物の魔物として生きているのであるが…。ギルドに向かった後は栄光と合流し、事情を説明。翌日伯爵一行はデレナール領に旅立っていったのだった。蛇足だが、当日の深夜…マイは宿で誘拐されそうになったとのこと。しかし、シュウ君が機転を聞かせて植木鉢をまた購入し寝室部屋…マイが魔物のためシュウとマイは同じ部屋で寝ている…の扉の前と窓際に設置。それだけでもどこかしらから来たら植物がアラートを出してマイが気付けるのだが…更に栄光が代わる代わる起きて扉やら外から見張っていたとのこと。ここまでガチガチであればマイは直ぐに気づいて窓から逃げ出す或いは外で反撃の準備が出来るし、と言うよりマイが気づいた時には刺客は当に捕まっているのであった。最終的にはやはり貴族発端で後日処理されるのであるが…。王都にはしばしマイの居場所はなさそうである。
(はぁ…私、余生を自由平和に満喫できるのかしら…)
寿命的に1万年以上生きなければならないマイの苦労は始まったばかりであった…。
漸く王都編が完結です。とんでもなく長かった…多分、ここまで長いものはもう作らないと思います。なお、現状在庫が1/3以上処理出来た感じです。明らかに投稿速度の方が、作成速度より速いので…何れ投稿速度を遅くすると思います。…まだ、かなり先になるとは思いますが。




