伯爵による警告
「伯爵夫人。何かあるのかね。」
「はい陛下。陛下にはお見せした方が良いと思いまして、今日そのアルビトラウネとそのテイマーを連れてきた次第になります。出来れば、余り大勢に公表したくはなかったのですが…実際に先日殺された侯爵様はアルビトラウネを闇取引で購入したと言う情報も聞きましたし…と言うわけで、2人とも立って自己紹介。」
結局自己紹介させるのかよ!シュウ君はビクビクである。
「あ…えっと…シュ、シュウです。えーっと…お姉ちゃんの…テイマーです。は、以上です!」
そのままシュウ君は座ってしまった。余りにも可愛そうである。
「じゃあ、マイさん。あとは宜しく。」
「よろしくってなんですか?」
私は不機嫌ながら立ち上がる。私の足は根っこで出来ているため、葉っぱで出来た疑似スカートに更にドレス付きのため、椅子に座ったりたったりも大変なのだが…なんとか立ち上がる。
「えっと、見た目はこんなんですが…アルビトラウネのマイです。よろしくお願いです。」
「ちょっと待て!」
誰かが発した。
「なぜ魔物がここにいる!コイツは危険じゃないのか?!」
他にも「どう見ても人間の女の子では?」や「言葉を喋れるのか?」と言う発言もあったが、そこは「アルビトラウネは見た目や知能が殆ど人間である」と言う説明で事足りた。第一、アルビトラウネと言う種族名自体は何ヶ月も前に既に王都へ来ている。種族名でなくても、突然変異体が発見された…それが人間に近い…と言うことはもっと前に情報が流れているはずである。その為、ここにおいての論点は早めに執着している。
「リグルト伯爵?そこはどうなのじゃ?」
「陛下。この魔物は既にそこのシュウにテイムされている魔物です。また、見て分かるように人の話を理解することも出来ます。既にマイは数年間デレナール領に滞在し、アルビトラウネ族の他の魔物との連絡役もしております。危険はございません。むしろ、彼女を傷付ける方が危険になります。」
「そうなのか?」
「陛下。彼女はアルビトラウネと人間を仲介するような役割を培っております。アルビトラウネはある意味でそれを知って彼女を派遣していると言って良いでしょう。そこに手を出せば…相手方もそれ相応の対処をしてくると言うものです。」
「ムサビーネ。陛下の前だ。話を勝手に進めないでくれ。」
夫人は黙った。
「構わぬ。今我々が気にしているのは先日の事があるゆえ、ここで暴れられたら困ると言う話じゃ。」
「ここにいるテイマーも優秀です。まだ10歳という若さではありますが、アルビトラウネを大分制御出来ております。皆様がここで下手な刺激をしないのであれば襲うことは先ずありません。」
伯爵の発言にシュウ君が若干顔を赤らめ「そ、そんなこと…ありません…」と小声で言った事だけは分かった。可愛いので後でお持ち帰りしよう。冗談はさておきだが、夫妻はどちらも100本当の事は言っていないと私は思う。第一私はおじいちゃん木の派遣でデレナール領や王都に来てはいない。ただ、この場を荒らさないように多少は「うん?」と思うことはあるが、堂々と言うことによって、この場を治めていた。実際デレナール夫妻も想定より人が多くて困惑はしているかもしれない。ただ、それを一切見せない辺り恐ろしいなとさえ私は思っていた。
「制御出来ているだと?では何故昨日の事件は起きた?制御出来ていないではないか?」
「シュウの従魔はマイ1人でございます。テイマーは自身の魔物をコントロール出来るようデレナール領では教育を施しておりますが、同種であっても別の魔物は対象外になります。寧ろ、どのような魔物も制御出来るテイマーは存在しません。魔物にも個性がありテイマーとも相性もあると魔物に詳しい妻も申しております。」
ムサビーネ夫人が魔物オタクと言うことは一部の貴族では既に知られている様である。寧ろ、そうでなければあんな辺鄙な場所に嫁ぐ意味もないだろう。貴族の邪魔物として流されたなら別だが。
「シュウ。アルビトラウネの苦手なこととか刺激すると狂暴になるところとか話しなさい。」
「え…えーっと、お姉ちゃんを例にすると…とにかく、花は触ったり攻撃したりしちゃダメなの。お姉ちゃんは…物凄くいやがるし…。」
「お姉ちゃんとは?」
「すいません。シュウがどうやってマイをテイムしたかがちょっと特殊でして。それ故、シュウはマイを姉のように接する事があリます。それはさておき、アルビトラウネは花に物凄く敏感である事は理解して頂きたいです。シュウの話では、花を触られた場合テイマーのシュウでさえ制御出来なくなることもあるとのことですので。」
「それでは意味が…」
「その為、シュウは予め回りに注意喚起しております。それを違反したらどちらが悪いか目に見えると思いますが?」
リグルト伯爵がどんどん話を進める。
「アルビトラウネの危険性については始めに述べた通りです。それ故があり、人間からの接触は控える並びに、刺激は絶対にしてはいけません。先ほども言いましたが…その事を出来るだけ早めに国民、領民問わず通知して頂きたいです。また、盗賊らがそれを狙っているのであれば取り締まりもして頂きたいと考えております。ましてや、知能が高くマイみたく可愛げ云々という理由で勝手に捕獲したり監禁するのは論外です。」
一部の貴族が座り直した。大体何を考えていたかは分かる。いわば、手を出すな。市民等には周知は勿論、貴族も例外じゃないぞと言うわけである。




