質疑応答
「デレナール領としての報告は以上となります。我々デレナール領は王都から離れたところに位置すると言うこともあり、午前中の陛下達の会議には参加しておりませんが…襲った魔物がアルビトラウネと言うことはお聞き致しましたので、何か欲しい情報等ありましたらこの後質問頂きたいと存じます。以上になります。」
リグルト伯爵は着席した。流石貴族と言うべきか、言いたいこと…個人的にアルビトラウネとして言って貰いたかったことも言ってくれた気がする。
「では質問に入る。わしは暫し、王都に於ける対策、並びに他の貴族に対する命令を考慮するため席にはおるが余り発言せん。皆のもので話を進めるように。」
国王は着席し、横にいる人と会話しながらメモを取らせていた。人間側がどう動くか。個人的興味もあるが…ケリンさん達にも簡易的に伝えておこうと勝手に考えていた。
「質問良いか?」
ある貴族が声をかけた。蛇足だが、伯爵はかなり位が高い称号だが…ここは王都。貴族が集まる場合、伯爵は中間よりちょっと高いだけのためここのメンバーの中では位が低いらしい。最下位ではないが。取り分け、伯爵と言う称号を持ちながら隅っこの盆地辺りの領土を治めている辺り若干下に見られているようである。
「構いません。」
「昨晩、お前らが数年前襲うなと連絡をしたアルビトラウネ…で良いんだよな?当時はまだ名前が決まっていなかったようだが…要は合計2匹捕まっている。いや、話では1匹は駆除されたようだが…。お前達の話を纏めると問題が起きた場合そっちの領土が先に襲われるのではないのか?それがあってこっちに来たなら分かるが、であればもっと慌ただしいと思ってだな。」
「はい。先ほどもお話ししましたが、本来であればこちらが先に被害を被ることになります。実際に我々と契約したアルビトラウネ族は既にデレナール領に警告しに来ております。ですが、話によるとどうやら王都の輩が王都で闇売買を実施し、アルビトラウネが王都に監禁されていた状態。であるならばこちらの方から襲われることも仕方ないものかと。」
「仕方ないだと?被害状況はまだ分かっておらぬが、国民で既に怪我人や死人まで出ておるんだぞ?!それを仕方ないと…」
「貴方、落ち着いて…」
発言した男性に対しその妻と思われる人がブレーキをかける。私はムサビーネ夫人を嫌悪の目で見たが、彼女は首を横に降った。多分、私がケリンさんとかだったらぶちギレて言い返すだろうし、もっとひどい雄花だとここで殺し合いが起きそうである。
「先ほども話しました通り、アルビトラウネ族は物凄く強力な魔物です。その為、デレナール領では殲滅ではなく和解と言う形で共に平穏を導こうとしております。アルビトラウネ族に攻撃する行為はそれを破る行為となります。その際、アルビトラウネは先ずデレナール領を叩きに来るでしょう。我々の領土では彼らを押さえることが出来ません。即ち、その次にはこの王都なり他の領地なりに侵食を起こします。いわばそれを抑えるためには王国含め全員でアルビトラウネを刺激しないようにし、かつ刺激したものは十分な処罰をする必要性があります。」
「とは言えどもなぁ。たかが魔物だろう?それこそお前ら見たく和解ではなく、他国と共同して殲滅に走れば良いではないか。」
「それはどのようにじゃ。お主はまだ若そうだからわしから発言するが…兵士やハンターを動かすと言うことはそれ相当の費用を要する。魔物が強力であればより人件費も嵩む。リグルト伯爵もそれを吟味し叩くのではなく和平にしたとわしは考えておるが。」
おそらくまだこういう現場に出たことが少なそうな貴族に対し陛下が注意に走った。
「陛下。それもありますが…一度調査隊を森に派遣したとき、調査隊並びにハンターが大被害を被りまして…対し、後程分かったアルビトラウネ族は無傷だったのです。力では不可能であると私は踏んでおります。」
「本当か?実際昨晩から暴れていたアルビトラウネは…確かにかなりの動員を派遣し、犠牲も出たとは聞いたが、無事処理は済んでいるとのことだぞ?」
「1匹ではそうかもしれません。しかし、我々の場合は住みかに乗り込みました。デレナール領も1匹ならばまだしも軍勢に対応出来るとは思えません。」
「なんだ?魔物だろう?そんなに団結力が高いのか?」
暫し沈黙が走る。その時、ムサビーネ夫人が挙手をした。




