国王達への報告
(ここが王宮ね…)
散々、公爵家にいたが…王宮は格が違った。馬車を降り、私達はリグルト伯爵についていく。伯爵様が色々手続き等を実施し…客間に案内された。
「マイ。帽子を取りなさい。流石に陛下の前でそれはアウトよ。」
さっきは被れ、今度は脱げである。ムサビーネ夫人にしては外で魔物とばれると不味いとか、匂いで魔物を誘き寄せると言うことを知っての注意であったが…マイにしてみれば自分からではなく他人に命令され…しかも嫌いな夫人に…と言うのがありイライラなのであった。
「マイさん。崩れた髪を直しますね。」
メイドが簡単に修正してくれた。他にもメイドは最終調整を実施していく。
「マイ。花についてはそのまま見せておきなさい。少なくともそれが本物偽物問わず会談中に触る貴族は存在しないから安心なさい。あくまで飾りと言う態度で。」
「………」
私はむっつり顔のまま頷いた。まあ、前世換算で打ち合わせの日に相手の女性が頭に花飾りをつけていたとしても…百歩譲って気になったとしても初対面なら声をかけにくいだろうし、触る輩はいないと言うわけである。第一印象は知らないが。それにアリア様も花のアクセサリを頭につけていた。カモフラージュ的なことを意図しているのだろうか。大きさは全然違うが…。
「よし、じゃあついてこい。ムサビーネ、あくまでここから先はそこまで親族云々じゃない。俺が指揮を取らないと不審がられるから多少は慎んでくれ。」
「頼りないと私が判断しなければだけど。」
個人的思いだが…ムサビーネ夫人は伯爵夫人であると言う立場を勝手に上げまくって他人と接している。デレナール領や、姉が公爵夫人とかなら多少は融通が効くが…効いて良いのか?…流石に国王の前では良くないとのことである。いや、そっちの方が通常だろう。そして、会談部屋に入っていった。
(広い…)
長いテーブルに既に色々な人が座っている。お誕生日席は国王だろう。後は多分親族やら…公爵夫妻もいた。誰の子供か分からないが子供もいる。流石に幼すぎる子供は来てはいないと思うが、貴族である以上最低限の情勢は知っておけと言うことか?公爵令嬢のマリア様も生きていればいらっしゃったのだろうか?アリア様程度の年齢はアリア様含め、私とシュウ君のみなので、本来は若すぎるのかもしれない。
「すまない。少々遅れてしまったようだ。」
「いや、まだ全員来ていないし時間には余裕がある。早く座りたまえ。」
伯爵が声をかけると公爵様が返答した。リグルト伯爵に続き、私達も着席する。どうやら席は決まっていなさそうだが…前世日本でも暗黙のルールで上座下座があるのと同様、おそらくそのようなものはあるのだろうとは思っていた。そして全員が集合した後、本題に入る。自己紹介については私が名前を覚えれないのでカット…人数がある程度いたので、ほぼ名前のみであったが…ムサビーネ夫人だけ特殊だった。
「妻のムサビーネです。宜しくお願いします。」
彼女はお辞儀する。
「横にいるのが娘のアリアと今日この後の会談で証人となるハンターになります。ここでは3人の自己紹介は略させていただきます。」
夫人の気遣いか、この場で子供3人が…私は150歳を越える魔物なのだが…見かけは10歳だが…自己紹介をするのは酷と考えたらしい。とりわけシュウ君はビクビクだったし私も緊張している。アリア様は貴族の娘と言うこともあり、色々特訓や実践もしている可能性はあったが…やはりこの規模には無理があるみたいである。
(回りの目が気になるわね。)
アリア様はまあ、いてもおかしくない人間だが…ハンターがここにいるのはおかしい。あくまでここの会談は貴族のみの筈である。しかも、ハンターとは言えどう見ても10歳ぐらいの子供が2人のみ。違和感がない方がおかしい。
「では本題に入る。リグルト伯爵。本来はこの規模にする予定では無かったのだが…午前で昨晩から発生した事件において上層部で緊急の話し合いを実施したわけでな。午後の会談を申し立てたところ急遽参加する貴族が増えてしまった旨、予め謝罪しておこう。」
「いえ、陛下。問題ありません。」
「そうか。では、話の主導権をそちらに譲る。皆のもの。わしの勘に狂いがなければ午前中に別途話した内容に付随するものと思われる。話の後、質問時間を設ける上、何かあればそのときにの。わしは途中で話が遮られるのを好まん。」
「陛下。ありがとうございます。では本題に入りたいと思います。」
国王の話を聞く限り、ここまで人数が増えるのは想定外だった模様。おそらくデレナール夫妻はあくまでアルビトラウネを襲うなと言う再警告と襲った盗賊がデレナール領ではなく王都や他の領土出身であること。更に誰が襲うにしろ最初に被害が被るのがデレナール領になってしまうので早急に取り締まって欲しいと言うことだけを伝えたかっただけだと思われる。
(それでも十分多いけど。まあ、言っただけで解決するなら誰も困らないでしょうけど、少なくともシュウ君も動いているとおじいちゃん木やケリンさんに堂々と言えるから反撃とかは来にくくなるハズ…。)
また、本来なら国王とムサビーネ夫人の姉に当たる公爵夫人とその一派、後は伯爵家のみの参加だっただろう。他にもちらほらいるかもしれないが…。しかし、アルビトラウネの襲撃事件が起き、掘れば掘るほど貴族が問題を起こしていると分かってきたのだろう。国王が機転を利かせてこの時間に他の貴族も呼んだのかもしれない。




