伯爵夫人はもう暴君で良いんじゃないかな?
「えっと…これからどうしよう。」
「シュウさん。マイさん。ごめんなさい。お父様、お母様がいる公爵様のお屋敷まで護衛をお願い頂けないでしょうか。道もうる覚えですが…私は両親の元へ帰らないといけません。」
「うん。お姉ちゃん。大丈夫そう?」
「はぁ。シュウ君の命令とあらば…。植物さん達、話は聞いていた?」
『姫様。情報共有や襲われそう等あればご連絡致しますが…その前に伝えておかなければならないことがございます。』
「うん?」
単結にまとめる。雄花が一匹大暴れしたのが原因で死者が何人も出たらしい。雄花のツルの強さは私には劣る。また、夜と言うこともあり街中にはそこまで人はいなかったが…長い年月をかければ前世のコンクリートでさえ破壊出来るのが植物。それが魔物となったのが私達。室内の人間も殺されたパターンがあったらしい。更に私達は超遠距離攻撃型。ツルで奇襲されても本体を見つけるのは難しかっただろう。最終的には…奇襲し暴走した雄花は殺されてしまったとのこと。人間が原因で王都に連れてこられ奴隷より酷い仕打ちを受けたのに最後は善人の人間に殺されるのは理不尽である。植物達も恐らく人間の始末に協力したのであろうから、どうせ殺されるなら最後まで復讐しろとのことだったのかもしれない。
『侯爵家の地下牢に雄花がもう一匹いた様ですが、その雄花も連行されたとのことです。同位種ですので次期に処理されると思いますが…。どちらにしろ、姫様は人間に擬態しているとはいえ下手にバレると連れて行かれてしまう恐れがあります。極力人目を避けて頂きたく存じます。』
「あい。」
私はまたもや不機嫌になった。結局逃げながら公爵家の館に行かなければならない。シュウ君がそばにいる以外状況が変わっていない。
「2人とも。お願いがあるんだけど大丈夫?」
「うん。」
「はい。」
別に人々は洗脳されているわけではない。であれば、私の腕についている従魔の証となるリストバンド的な腕輪とアリア様という貴族という盾を使うことにした。第一、従魔に人間は攻撃出来ない。シュウ君が自分の魔物と言う限り勝手に連れて行ったらそっちがアウトである。その代わり問題が生じたらシュウ君の責任になるのではあるが…今回暴れた魔物も別にシュウ君の魔物ではない。私と同族ではあるが。そのためシュウ君にお咎めはないはずだし、私もシュウ君の影に隠れれば逃げる事が出来る。更に、まだ子供とは言え貴族の娘が色々言えばそこら辺の連中も何も言えまい。まあ、アリア様はここら辺に住んでいる貴族ではない。不審がられる可能性はあるが、だったら公爵家へ全員連れて行って正誤を確認しろと言えば良いだけである。そうすれば到達するまでは逆に見張り役として護衛してくれるし、嘘はついていないので問題ない。この戦略とした。
「うん!僕、お姉ちゃんのテイマーとして頑張る!」
「私もご協力いたします。どちらにしても、私もお父様やお母様の元に行かなければなりませんから大丈夫です。」
とのことで…多少揉めることはあったが…余談として街中の建物の中には魔物が壊したのか、乱闘で壊れたのか…痕跡が残った建物もあったが…まあ、戦略通りに公爵家の門まで到達する事が出来た。ただ、内部に敵がいるのは想定外…いや、想定内か。門番には「また連れ去られてしまったのですか?!」と驚かれるわ、デレナール伯爵夫妻の元へ連れて行かれた挙句…話し的にはアリア様が外を歩いていたのを見つけたため連れてきたとはしたが…アリア様だけでなく何故か私もシュウ君も夫妻にガミガミ怒られるのであった。アリア様を引っ張ったのはアユミさんだし、助けたと言ったのはシュウ君なのだが…怒られた3人全員理不尽であった。
「全くもう!本当に心配したんだから!王都では暴動が起きた挙句、魔物が暴れたで死人や倒壊騒ぎだったのよ?私達には直接話は来なかったけど、姉経由で知った時は心臓が止まるかと思ったんだから!!」
ムサビーネ夫人はもはや感情的にアリア様を叱責していた。アリア様も黙ることしか出来ない。
「申し訳ありません。」
夫人は令嬢に再会した直後抱きついていた。まあ、この夫人に私は恨みだらけだが…母親としての感情もしっかりあるのであった。
「あ、そうそう。丁度いいわ。貴方達。」
「は、はい!」
シュウ君は散々怒られビクビクである。私は不機嫌であった。私の中に前世人間という血が入っていなかったら本能で襲っていたかもしれない。
「昨日の襲撃事件にどうやらアルビトラウネが関わっていると聞いてね。更に1匹侯爵家の牢から捕まったと聞いたわ。襲撃については貴女を疑ったんだけど、今貴女はここにいるし…事情を知らないかしら。マイは植物と会話出来るのでしょ?」
「………」
私は腕を組んだ。結論から言えば、デレナール夫妻に話すと何か面倒事に巻き込まれる感じがしたのである。
「シュウ。貴方はどうなの?どっちにしても、私達に逆らったら貴方達どっちも反逆罪として打首にするから…何かしら答えておいた方が良いわよ。騙せないと思っておいた方が良いし、正直の方が身のためよ?」
相変わらずの暴君である。これで今まで罪を犯していない…提案とかはしてはいるが…植物の情報から…のが不思議である。むしろ、伯爵家は誰が仕切っているのか謎である。夫人の方なのであろうか?
「お姉ちゃん…」
「はぁ…シュウ君の選択肢は2つ。このまま黙って殺されるか、私に情報共有をするように促すか。」
「流石マイ。よく分かってるじゃない。」
「私はシュウ君の魔物ということをいい加減理解して下さい。」
「あら、理解してるわよ?」
「………」
だったら、選択肢がない選択肢を提示するなと言いたかったがもう面倒臭かった。




