黒幕侯爵の実態
「誰かいないのかしらー。まあ、いないなら開けて良いわよねー。」
時間は少し遡り、アユミは侯爵がいるはずの部屋の扉を叩いていた。アユミは仕方なく扉を開ける。まあ、仕方なくの意味は魔法を使ってゴリ押し解錠なのだが。
「こんばんはー。」
魔女は探知魔法が使える。メリーさんとは比較にならない高性能レベル。一人しかいないことも知っているのだろう。
「誰だ。俺はこの部屋に来ることを誰も許可していないのだが?」
「ええ。許可してくれなかったから勝手に入っただけよー。」
「護衛は何をしているのだ!」
「護衛?いたかしら。ゴキブリぐらいならいたかもだけど。」
アユミにとって護衛などゴキブリ扱いらしい。
「あ、そうそう。ちょっと確認したいことがあってさ。それがなかったらこんなところ一瞬で焦土にしても良かったんだけど。」
「何?」
「どうどう。これこれ。私しがないの魔術師でさ。ある呪文を見かけたんだけど読めなくて…ここの侯爵様なら読めるんじゃないって聞いたのよ。」
「それだけのために乗り込んだのか?」
「あら?いけない?」
魔女は何か言葉が出かかったようだが…そのまま侯爵に紙を渡した。侯爵はそれを読む。
「これは呪文なのか?アルビトラウネ…は、怒っている…?」
「ハハハハ!やっぱり!貴方も日本人!いやーやっぱり固定概念って怖いわ!強大な魔力を持ってこその転生だと思っていたのに…それを取っ払ったらどんどん転生者が見つかる!」
「と言うことは、あんたも?」
「ええそうよ!これで全て私の思うまま、ハハハハ!」
急に大笑いし始めた女性を見て侯爵様は唖然とする。
「よし、ねえじゃあさ。故郷同じもの同士と言うことで手を組まない?」
「手?」
「そうそう。だって、転生者なんて普通いないんだからさ、一緒に生きようってことよ。悪くないと思わない?」
「まあ…それはそうだな。」
侯爵は勿論男性、魔女は女性である。まあ、この侯爵は家族持ちではあるが…20ちょいの色気がある女性となると違う意味で動いたのかもしれない。魔女の罠と知らず。
「よし。じゃあ、まず手始めなんだけどさ。貴方、洗脳魔法全部解除してくれない?」
「何?」
「ハハ。私がそこら辺の実験台だと思って?ここら辺一体洗脳魔法にかかった奴しかいないじゃない。それに、ちょっと前に拷問した奴から話を聞くと主犯は貴方。私の実験材料になるならそんなものあったら邪魔じゃない?私の被検体もそうよー?」
「お前、協力するみたいな態度じゃないな。」
予めだが、マイも被検体とか言ったら機嫌を損ねる。ただ、彼女とは個別に色々2人で話していることがあり…半分嫌々もあるのかもだが…知り合い程度として認識している。でなければ、四方八方襲われたときに魔女に助けを求めに行かないであろう。ただ、初見ではモルモットとして扱われるのではないかと恐怖心を描くのは当たり前であった。
「と言うより貴方が私の実験材料になることは当たり前じゃないの?だって貴方…私の実験台のマリアちゃんを間接的に貴族界から追い出したでしょ?お陰様で死んじゃったし代わりが欲しいのよ。後は…」
「公爵令嬢は死んだのか?」
どんどんアユミの機嫌が悪くなっていく。
「へぇ。自分の娘を王族なりへ引っ張らせるためにマリアちゃんが邪魔だったと。だから盗賊と結託ねぇ。」
「な?!」
「私は魔術師だからねぇ。人の心読めるの。」
補足だが嘘である。開心術という魔法である。魔術師は愚かそんなこと誰も出来ない。強力な魔女だからである。
「で、折角他にも実験材料手に入れたのに貴方またそれ狙ってるでしょ?洗脳魔法を使って。となると選択肢は2つ。洗脳魔法を全部といて私の実験材料になるか、ここで死ぬかねー。ハハハハ。」
他にも逃げ道はあるかもしれないが、侯爵は武力行使に出ようとしていた。と言っても、手を出すのではない。相手を洗脳魔法にかけようと考えていた。彼は転生してから洗脳魔法が特化だった。本来誰も使えずある意味やりたい放題。ただ、どうせ何れはバレる可能性がある。それを考慮しバレないように相手を上手く操るという言わばそっちの道に走ったのである。貴族の上の連中を操るとバレたら即終了のため魔法はかけれない。貴族として生きるに当たって支持率も不審がないように微調整。敢えて敵役も洗脳魔法で作り上手く暴動も起こさせそれを対処したかのように洗脳魔法で上手く見せさせ…と貴族として完璧になるように洗脳魔法を駆使しまくったのである。




