雄花の逃亡
「シュウさん、マイさん。ちゃんと取れています。」
「おお。」
見てみると本当に固定具が壊れて、好きにツルを使える状態になっていた。
「とりあえず、これで両手は自由…」
「え、どうして貴方達はこれを取るのですか?これは私が生きるためには必要と…」
その時、彼女が黙った。意識を失ったのである。
「え?!」
彼女はツルで固定していたので倒れるはなかったが、いきなりの急展開に私は思考が停止する。
「シュウ君、私ツル強すぎたりした?」
「え…うーん。」
私はツルをほどき、地面に寝転がせて様子を見る。怪我はさせてないつもりなのだけど。その時、雄花は再度目を開けた。雄花は目を左右に動かし、立ち上がる。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「…ニン…ゲン…」
私は咄嗟に2人の前に立ち塞がった。結論から言う。殺気がすごい。目がシュウ君やアリア様を殺そうとしていた。
「何故…カバウ…」
「この子達は…貴方を助けるため…に私に協力し…てくれたの。」
「……」
私は怖さからうまく喋れない…。彼女はゆっくり私へ、そしてシュウ君、アリア様へと近付く。
「ヒッ!」
シュウ君が怯えて尻餅をつこうとよろけかけたので、私は手を握り何とか踏ん張らせた。
「お、お姉ちゃん…」
「ま、マイさん…」
「………」
私自身も雄花から発せられる殺気に体が硬直していた。雄花は全員を間近で観察する。
「オ前…雌花、オ前達…例外、感謝…シロ。」
その瞬間彼女はツルを上に伸ばしどこかに引っ掻けて上昇する。
「あ?!」
シュウ君の声が発せられた頃には何処かに行ってしまった。
「えっと…助かったのでしょうか?私達も彼女も。」
「う、うーん…嫌な予感がするけど、私はもうどうしようも出来ない…し。」
前世の日本ではない。魔法で明かりとかを作れるとは言え、日本よりは圧倒的に夜は暗い。私は魔物の為、人間よりは多少は目が利くが…限度がある。
「お姉ちゃん。魔女さんに伝えた方が良いのかな。」
「そうね…助けようとして逃げられたと言ったら何言われるか分からないんだけど。」
そうして、3人は魔女に言われた通り待ち合わせ場所に戻った。なお、今更感だが…どうやら夕方私がシュウ君を置いて逃亡した後…シュウ君は奴隷にされていた雄花と共に逃亡したとのこと。しかし、シュウ君もその雄花も良く分からない人に捕まって侯爵家に連行されたとのこと。そこで侯爵直々に会い洗脳魔法を受けたらしい。雄花の行方は分からないと言っていた。
(おそらく、あの雌花…急に行動変わったし、洗脳魔法は解除されたのかしら。ただ、あそこで逃がしてしまったこと…胸騒ぎしかしないわね…。)
マイはモヤモヤを抱えながら2人の後ろを着いていくのであった。
区切りが悪いので今回は短めです。




