負傷した雌花
「マイさん?!」
流石に脇腹にナイフが刺さったのはアリア様も見えただろう。アリア様が私の脇腹を見る。シュウ君は完全に動けない状況になっている。
「全く。まさかの魔法障壁アイテムを持っているってなんなのよ。記憶を飛ばしながら来たけど、どっかから情報が漏れたのかしらね。ま、相手のスペックさえわかれば死なない程度に殺すことなんて一瞬なんだけどさー。」
「魔女様!マイさんが、お怪我を…」
「あん?実験材料が勝手に怪我するなって言わなかったー?」
「…聞いて…いない…わ!」
「で、どこよぉ?って、まあ派手にやられたわねぇ。私治癒魔法使えないんだけどさー。耐えてくれないー?」
「…シュウ君…なんとか…出来ませんか…?」
「うん?あー、洗脳か。うーん、他人の魔術介入かぁ。相手が馬鹿なら介入してみるけど、期待しないでよぉ?動かさないようにしてよねー。暴れられたら無理なのよー魔術介入。」
一応言うが、アユミさんは魔女であり…魔法技術においてはチートで良いと思う。相手が馬鹿云々の前に魔女が天才過ぎた。
「よし…数分かかっちゃったけど、多分解除したと思うわー。」
「信じて…良いです…か?…ハァ、ハァ。」
「平気平気ー。多分彼ちょっと気を失ってると思うけど、目が覚めたら平気よぉ。よし、じゃあ後は二手に別れましょー。」
「ふ、二手…ですか?」
アリア様が驚く。現状、この場所で戦えるのはアユミさんだけである。別れて襲われたら、アユミさんがいない方は崩壊する。
「平気平気。二階は知らないけど、ここら辺の人間全員出払っているみたいだしー。なんなら道作るわよー。」
魔女はニタニタしながら魔法を放った。フロアの一部が粉々になる。床も削れて地面が見えていた。
「これで貴女も戦えるでしょー?」
「…私の…怪我…は?」
「魔物なら余裕っしょ!」
「無茶…。」
「えー、でもさ。それぐらいでくたばってたらぁー森の中生きていけなかったんじゃないー?」
まず、結論から言う。私はそこまで致命傷は受けていない。何故ならさっきも言ったが魔物であると言う点。また、花にはダメージが行っていないと言う点。あと、少々前…ケリンさんが胸元を氷で貫かれた時があったが、あの時も軽いポージョンで再起動していた。しかし、痛いものは痛いのである。前世私は多少の無茶などお構いなしに働いていた。その結果ぶっ壊れたのである。同じ過ちは犯したくない。
「私が…くたばらなくても…無茶は…したくない…」
私は気を失ったシュウ君を解放し、刺さったナイフに目を向ける。本来刺し傷は刺されたものを抜くのは良くないのだが…魔物の本能だろうか。私は引っこ抜いた。
「イタタ…」
「何?結局無茶してるじゃないのよ。」
魔女は手元にポージョンを出してくれた。魔法で回復出来ないと言うことは万一の治療道具は持っていると言うことか?
「…地味に…効果あるのね…」
「完治出来る様なものはないから、後で誰かに…はお勧めしないから1人で休んでねー。」
「え?」
「あら、今誰が敵か分からないんだから自力しかないでしょぉ。まあ、これから私は元凶とお話してくるけどねー。」
「う、うーん…」
その時、シュウ君が目を開けた。
「あら、こんにちはぁ。あ、こんばんはかー。元気ー?」
魔女が煽り通し始めたので私は恨みがましで魔女を見る。いや、魔女はなにも悪くはないのだが。
「あ…お、お姉ちゃん…ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
私を見た瞬間シュウ君は泣き出してしまった。洗脳魔法は当本人の記憶は消さないらしい。体が勝手に動き術者の命に従服する。
「シュウ君、私からもごめんなさい…貴女を置いて逃げてしまった…」
「反省会は後!じゃ、私は先行くからーあんたらはそっちをお願いー。」
「そっちと言うのは…?」
アリア様が砕け散った床と壁を見ながら言った。
「探知魔法的にあっちにあんたが助けたい魔物がいるってことよぉ。人間もいるから注意してねぇー。どうせここまでやったんだし、全員敵と思ってやっちゃってもー良いんじゃないー?やられた魔物の復讐とかそんなんでさー。」
「この…ダメージで…か…」
「あー、じゃあ外までは運んであげるわぁ。植物が側にいればどうとにでもなるんでしょー?」
「………」
理論上はそうだが…私の体はもう限界レベルである。行けるか分からん。とか言ってるうちに魔女は吹っ飛ばしたところへ歩いて行ってしまったので残りでついていく。私はメソメソしているシュウ君に肩を貸して貰い何とか前へ進む。シュウ君には悪いが、今日は余裕がない。シュウ君の命令なして残りは処理しようと思う。
『ひ、姫様?!大丈夫ですか?!』
『腹にかなり大きめの刺し傷あるじゃねえか!おい、そんなこと雄花が知ったらここいら全部ぶっ壊されるぞ!』
『状況の前に姫様をどうやって治癒させれば良いかがわしらが出来る最善手だと思うがのぉ。』
『そりゃそうだけどさ、俺ら動けねえじゃねえか。どっか安全な場所案内すれば…』
『今、ここいら姫様が治療出来そうな場所がありません。責めて人間等が住むこの王都から出ないと…』
植物内でも議論が白熱してしまっている。ケリンさんやジェスさんが魔物に襲われ致命傷を受けたときも植物達が色々言っていたが、そのレベルを越えていた。やはり雌花は雄花より何倍も優先されているようである。ただ、打開策は出ないようであった。




