鬼畜魔法に汚染された末路
「厄介なのは普通に過ごせと言えば普通に過ごしちゃうし、名前を知っていれば遠くでも操作可能。言わなくても、名前何と聞けばお仕舞いだし、ここら辺にいる連中とかでも応用すれば通用するわよ。」
要は、自分で動いているか操られているかどうやっても分からないのである。ある程度親密になり、洗脳者がその人が明らかにやらなさなそうなことを命令して第3者が違和感を感じる程度。あくまで違和感であり、まさか操られているとは思わないだろうだった。と言うのも、アユミさん曰く…
「この魔法相当凄腕の魔術師とか…或いは私みたいな魔女じゃないと使えないわよ。しかも使ったとしても熟練技術がないとそのうちポカ出るだろうし、規模が大きいと尚更よね。」
いわば、侯爵様は凄腕の魔法が使えてそれだけ熟練技術があると言うことである。また知名度も使える人がアユミさんの知る限りでも自分だけだったらしく…無いのである。
「えっと、魔女様。それって例えば…メリーさんとか…修行をすれば出来るものなのですか?」
「何?使えるようになりたいの?私は反対だけどなぁ。ねえマイちゃん。」
私は前世の記憶に遡った。確かに相手を操れれば人間関係など困らないだろう。…だが、確信をもって言えることは最後は鬱で死ぬだろう。確実的に孤立する。いや、人によっては幸せになれる人もいるかもしれないが…私は無理。
「私は魔法使えないからなぁ。」
「じゃあ使えるとしてさ。」
「だとしても使わないかな。シュウ君が自分の意思じゃなくって私の側にいても虚無感しか感じないし。」
「アリアちゃん。私この魔法使えるけど、よっぽどのことがない限り使う価値無いし、実験体にも検証として教える気はないからね。どうせ無理だろうし、使いこなせず心壊れるなんて検証しなくても分かるからねー。」
アリア様は黙った。若干、魔女が不機嫌になったことも分かったのかもしれない。
「分かりました。」
「分かればよろしい。ま、昨日の今日だしまだ全然だけど、色々滅茶苦茶強くするから安心してねー。そうしないと検証データも入らないしー。」
そして話が戻る。
「まあ、どっちにしても…黒幕は侯爵で、今マイちゃん狙ってるのもそいつっぽいね。あれでしょ。考察的にはこうねー。」
侯爵家にアルビトラウネが捕まっていることは確定済み。抵抗無く花の密提供など洗脳魔法を使えば一瞬だろう。恐ろしいのは、私も侯爵に魔法をかれられたらお仕舞いと言うことである。アリア様を見て思った。抵抗など不可能。後、私の中で一点恐怖が駆け巡る。私は花を触られるだけで体がおかしくなることさえある。実際、シュウ君が今私が被っている帽子の寸法を測るため暫く触り続けることが起きたことがあるのだが…暫く人間換算で急所を触り続けられた状態で…体が痙攣してしまっていたりした。それを頭が嫌がっているのにやらされ続ける。体が勝手に実施する。
(普通に考えれば…精神ぶっ壊れるわよね?)
アリア様だって、ちょっとアユミさんにやられて機嫌を損ねていた。ただ、それが機嫌レベルではなく命に関わるレベルだった場合…それを永遠とやられた場合、しかも記憶が残った場合、どうなるかなど考えなくても分かる。…なお、マイの考えは当たっていたが…飛んでもないことになるなどまだ想像すら出来ていなかった。
「味を占めてマイちゃんも狙われてるんでしょうねぇー。」
「うーん。」
私は腕を組んで考え込む。このまま王都に戻ってもいずれ捕まって終了である。逃げても良いが…そういうわけにも行かないのがマイであった。
「シュウ君がいればなぁ。このままバックレても良いんだけど。」
「そんなにあの男の子気に入ってるの?」
「気に入るも何も、死にかけを助けたからね。助けたからには最後まで面倒を見るのが私の流儀よ。」
「ふーん…貴女変な魔物。」
「変で結構。シュウ君と合流したいんだけど、方法何か無いかな。」
「さぁ。まあ、話を聞く限り街中の人間にどれぐらい洗脳魔法がかかってるか分からないからなぁ。私は相手の状態異常が見えるけどさ。あくまで相手を鑑定する必要があるし…そんなことになってるなんて知らなかったからさ鑑定魔法なんて普段使わないのよぉ。プライベート丸出しだしー。」
鑑定魔法など使えるわけ無いので良く分からないが…あらぬ情報まで全部入ってしまうらしい。その為、用もないのに使わないようである。何でも出来るはある意味不便なのかもしれない。
「まあ、手っ取り早い方法はその侯爵を殺すなり魔法を全部解除させるなりね。そうすればマイちゃんも自由に王都を歩けるようになる。」
「こ、殺すのですか?」
アリア様が動揺した。
「え、不要な実験動物は殺すでしょ?危険な生き物や感染動物がいれば殺すでしょ?何が悪いの?」
アユミさんは前世日本人のはずだが…私が魔物の本能で動くのと同様、彼女も魔女として動こうとしていた。
「うーん…殺す云々は置いておいて、止めにかからないとダメか…。シュウ君に会うためには。」
「良し、じゃあ決定。いつかは…速攻ね。私戦略とか良く分からないし、取り得ず速攻終わらした方がモヤモヤしないし。」
私は前世から色々心配性でなかなか先に進めない性格である。シュウ君なしでアリア様との交流も有り得なかっただろう。
「じゃあ、全員で突撃だー!あ、実験体の2人は私の実験道具だから勝手に死なないでよね。私が困る。」
「…守ってくれると言う解釈で受け取っておきます。」
私は大丈夫なのかと言う考えであった。第一私の実力では侯爵までどうやっても辿り着けない。捕まるか死ぬかになってしまう。ツルを使うと言っても、室内に植物がいないのであれば、場所の特定が出来ず攻撃出来ないし…王都に安全地帯がない以上、遠距離攻撃どころでは無かった。アリア様に至っては、何を考えているか分からないが…敵地ど真ん中に行きたくはないだろう。そして、転移魔法で王都のとある場所に転移した。




