雄花を助けます
「お姉ちゃん。なんか柵がある。」
柵ではない。牢屋が正しい。その中にアルビトラウネが1匹、両手を上に縛り付けられた状態で気絶していた。
(これは一体何をどうしたらこうなるのよ。)
柵を破壊し、中に入って確認すると…シュウ君は「鍵は…」とか言っていたが、私の魔物の本能がシュウ君の動揺をよそに檻をツルで破壊していた…生きてはいる。ただ、人間換算で性的暴力の被害者だろう。花も弄られた後がある…と言うより、植物の情報からそんな感じだろう。蜜を強引に取り出そうともしたに違いない。花をもぎ取らなかった辺り、恐らく誰かから蜜を永遠に取るには花を傷つけるなとは言われたのだろう。人間でいるところのアザもある。
(…これは、言葉では言い表せない酷さ…)
手は上に固定されているが、手首のツルの部分は鎖で縛り付けられている。ツルが利用出来ない状態。そもそもここは牢屋なので今は破壊してしまっていたが、ツルを地面に刺すなど不可能だったのだろう。花を弄られて蜜を奪われるなど、人間換算で急所を奥深くまで刺激されている状態だろう。私とシュウ君みたいに私が許可して云々なら未だしも…いや、それでも抵抗するが…これが強制なら強姦も良いところである。
「ねえ、シュウ君。」
「お姉ちゃん?どうしたの。」
「ごめんね。先に謝っておくけど…誰か殺しちゃうかもしれない。」
「え…」
「シュウ君は自分の急所を悪人にさわられ続けたらどう思う?」
「それは嫌だけど…」
「じゃあ、そこに何か突っ込まれたりしたら…?」
「え、えーっと…」
「とりあえず、この子は花の蜜を強制的に採取させ続けられていたと思われる。人間換算で急所に何かを定期的に突っ込まされた状態。性的暴行、強姦、以下もろとも…許されることじゃないわよ?」
私の口調が強くなったことが分かったのか、シュウ君は黙った。私は念を重ね、地下の出入り口を一時的にツルで封鎖していく。ウィリーさんの言葉が引っ掛かっている。こんな状態で襲われたらたまったもんじゃない。
「お姉ちゃん…僕も誘拐されたら…こうなっちゃったの…」
シュウ君は昔の記憶を思い出してしまったらしい。
「うーん、シュウ君は男の子だから多分こうじゃなくて、地獄の労働をやらされたでしょうね。地下の置く深くで20時間労働とか?」
ここら辺は前世私が読んでいた小説から推論しただけなので、実際は不明である。ただ、シュウ君も10歳ぐらいである。意味も分かったようである。
「お姉ちゃん…怖い。」
シュウ君が抱き付いてきた。私は頭を撫でて上げたが、思考回路は「これからどうするか」と「どう復讐するか」になっていた。後者が暴発するとマイ自身で制御出来なくなる。前世なら鬱病で倒れたが、今は魔物。皆殺しもあり得る。そんなことをしたら私もシュウ君も死刑である。
「とりあえず、ポージョンある?」
「う、うん。」
「私が彼女を解放するから、シュウ君は薬を飲ませて。後、目が覚めたとき何するか分からないからシュウ君は離れていて。」
精神肉体共にボロボロにされた魔物が回復して急に自由になったらまあ、予想なら暴れる。助けに来た私達が始めにとばっちりを受ける。それは避けなければならない。
(さて、やりますか。)
私は壊した床にツルを差し、地面からツルを出して拘束具を全て破壊する。手首についた手錠その物は壊せなかったが…隙間が小さすぎてツルの強度が足らず、手首を粉砕してしまう可能性があった…左右を繋ぐ鎖や壁とは引き離せたから良しとする…地面に横たわらせた後、体を地面に固定した。シュウ君はポージョンを鞄から出して、口の中に入れる。後は治療待ちである。
「植物さん、異常はない?」
『ありません。』
「分かった。」
少しすると奴隷にされていた雄花が目を覚ました。予想外の発言が聞こえた。
「ご…ご主人…様…止めて…」
「ご主人?」
彼女は見掛け9歳の女の子である。まあ、雄花なので厳密には彼か。
「あ…あれ…何時もと、風景が…」
その途端暴れ始めた。
「ご主人様…ダメです…ぼ…私は…人間ではありません…だから…」
結論だけ言う。この子、倒されたので強姦されると勘違いしてる。いや、勘違いすると言うことはやられたのだろう。私達アルビトラウネにそんなことをするやつはいない…私の知る限り、だが。
「えーっと、とりあえず落ち着いて。私は貴方を助けに来た。ほら。」
地下は暗かったのだが、恐らく松明かなんかで照らすようになっていたのだろう。後、壁をぶっ壊したりしたので、外の光も多少は入るようになっていた。その多少の明かりからシュウ君は火を使って松明に点火していた。この世界には前世みたいに簡単に火をつけるものはないが…つけれないは困る、人間の場合。私は魔物だから別だが。シュウ君も孤児院にいる時に習ったようである。
「え…雌花さん…?」
私は帽子を脱いで仲間であると伝えた。雄花の特性上、大体雌花の私は求婚されるのであるが…全部右から左に流しているが…この子はそう言った素振りすら見せない。表情的に夢でも見ているかのようである。助けなんて永遠と来ないと思っていたのかもしれない。




