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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
人間の領地
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長距離遠征

『姫様、ここから数百キロ先にはなりますが、小さめの街を見つけました。そこにはギルドというものがあるらしく、テイマーとして魔物を飼っている人間がいるとのことです。ただ、門番もあります。門前払いならまだしも、魔物となるとそこで駆除される可能性があるかも知れません。』

「調査ありがとう。他何か情報持ってきた方いる?」


 無言なのでなさそうである。となるとそこへ行くしかあるまい。数百キロか。とんでも無く遠いな。


「他になければ、とりあえずそこに向かいますか。」

『姫様?聞いておられましたか?殺される可能性があるのですぞ?』

「その街にアクセスすれば…でしょ。その側に行くのは問題ないはず。」

『ですが…』

『まあ姫様の我儘なんて今に始まったことじゃねえしな。あれだ。俺らはここから動けねえが、そっちの連中にはちゃんとアポ伝えとくよ。その方が姫様も動きやすいだろう?姫様しょっちゅう魔物に襲われてるからな。』

「はぁ。それだけは本当に勘弁なんだけど。いっそうのこと、人間と過ごした方が安全じゃないか説。」

『まあ、確かにテイマーの魔物は襲ってはいけないというルールは人間の中であるようですし…魔物に襲われやすい体質であれば、逆に人間と過ごすというのもありなのかも知れません。人間が受け入れてくれるかという問題はありますが。』

「とりあえず、現地に向かいましょう。ルートは一直線で良いかしら。遠いから木を使って雲梯で移動したいんだけど。」

『ほぼ直線で大丈夫かと。周りの植物達にもサポートさせますので、道案内もしてくれると思います。』

「はぁー非常に助かるわ。時折思うんだけど、みんな有能すぎない?それとも私に甘すぎるとか?」

『いえいえ、姫様は植物の代表の位置付けなのですよ。それぐらい朝飯前です。』

「代表かぁ。私そんな重課支えれるかなぁ。」


 ということで移動が決まった。ここから先は私の体力勝負である。


「シュウ君。」

「どうしたのお姉ちゃん。」

「移動するよ。」

「移動?」

「そう。人間…まあ、シュウ君がいるべき場所に移動するが正しいかな。」

「…?」

「あ、そうだ。シュウ君お願いがあるんだけど。」

「なに?」

「いい?もし誰でもいい。人間に私のことを聞かれたら、『僕の魔物』とか『僕のペット』とか何でも良いからシュウ君の物ということを強調して。これは約束よ。」

「え?お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ?」

「うーん、だったらお姉ちゃんでも構わないから、誰かに言われた時だけでも良い。そう言うふうにしないと、シュウ君が酷い目を受けるかも知れない。」

「うーん、分かった!」


 分かっていそうな気はしないが、今は信じることにする。シュウ君がちゃんとそう言えないと、私が脅しているとかそうなって私が殺されてしまう。もしくは街に魔物を連れてきたとかでシュウ君が捕まってしまう。それだけは避けねばならない。


「じゃあシュウ君。私の背中に捕まって。」

「うん!」

「ちょっと縛るけど我慢してね。」

「分かった!」


 背負ったシュウ君と私をツルで縛り付けて固定する。


「じゃあ行くよ!」

「おー!」


 そして、雲梯の要領で森の木々を駆け抜けていった。魔物の気配が出たとかあれば、一度木に登り駆除。疲れたら光合成。シュウ君はすることがなく背中で寝ていることもあったが、私は安全地帯が見つからない限り眠ることは許されない。まあ、安全地帯など森の何処にもないが、岩影とか洞窟とかあれば、何もないことを確認の上その中で一眠りである。シュウ君は縛り付けたまま。解くのが面倒くさい。シュウ君の手や足も私の体に縛り付けてある。下手して私の花に触られると困るからである。そのため、私は殆ど仮眠状態であったが、早く移動しないと私が魔物に殺される…その一心で1秒でも早く到着したかった。そして数日後…


『姫様、住宅地の側まで着きました。ここを左に行くと街道に出てしまい危険です。少し右に開けた場所があるのでそこで一度お休みになれば如何でしょうか?』

「あ…ありがとう…そうする…」


 かなり無理をしてしまった。とはいえ、それもあってかかなり早く着いている。目的地の開けたところに行くと日光浴できる場所があった。


「あー回復するわー。シュウ君も一緒にどう?」

「う…うん…お腹…すいた…」


 この移動中、途中休憩を取ったりしたが持ち込んだラズベリーとか、休憩中のそばにあった食べれそうな木の実とかそんなものしか食べていない。水も途中で一回見つけた川のみ。スピード重視であったため、どっちも結構限界であった。


「植物さん。魔物はここら辺にいたりする?」

『いえ、ここいらは街道の近くです。人間のハンターがうろうろしていますので魔物も側にはおりません。人間の方も魔物とは違い嗅覚は優れておりませんので、街道をずれない限りここにはやってこないかと。』

「ありがとう。でも、念の為警戒してもらえると嬉しいんだけど。」

『了解しました。他の植物にもお伝えしておきますね。』

「うん。」


 この時私は知らなかった。私の花の香りは魔物達には本来好物の在処を伝えるものであることを。そして、私の匂いを元に側に行くと魔物は皆んな捕捉され餓死なり締め殺されているという地獄が待っていると学ばされていると言うことを。知らぬ間に私の花は魔物よけになっていたのである。私に接近するのはそれを知らない生き物だけであった。そして翌日である。私は大分回復していたが、シュウ君の方が限界だった。


「う…」

「シュウ君。はい、これ。」


 私の両手にはさっき採取した花の蜜がある。少量ならば光合成等で自然に作成されている。それを吸いに来る虫や小鳥もいるし。花に実害を与える気配がない生き物は駆除対象外である。そこら辺も植物が大体教えてくれる。


「お姉ちゃん…これは…」

「良いから飲んで飲んで。シュウ君に無理させているんだから、私も少しは無理しなきゃ。」

「お姉ちゃん…ありがとう!」


 シュウ君も多少は回復したので街へ向かうことにする。行く前にシュウ君とはある程度打ち合わせ済み。とりあえず、出来るだけ早く街に入りたい。

 時速10kmとして1日8時間移動と仮定して3日経つと240kmです。意外に進めますね。

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