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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
奴隷売買された雄花~1/3匹目~
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幼稚な「花」

「うんにゃ、じゃあどうする?」


 今私たちはギルドの奥にある椅子に座っている。私は椅子に座りテーブルに突っ伏して伸びていたが、流石にもう誰も突っ込まなかった。


「まあ、先日の話では王都の端にある農家が最優先だったな。そこはこの人数で乗り込む場所か?昨日の話ではやり合う様には聞こえなかったからな。」

「詳しいことは見ていないので分からないですけど…逃げた雄花を老夫婦が保護しているみたいです。総出で乗り込んだら逆に警戒されるかも。」

「うーん、じゃあ分業?」


 ウィリーさんが言う。敵の戦力が微妙かつ保護したと言う状況上ハンターが乗り込んで急に逃げられたりしたら却ってややこしくなるらしい。Bランクハンター達の経験が分業の方が良いと判断したらしい。


「奴隷にされてるマイちゃんの仲間については私がソロで偵察してこようか?場所さえ分かれば犯人の行動ぐらい把握出来るし。」


 ウィリーさんはアーチャー。死角から獲物を捉えるのを得意とするハンターである。アサシンではないが…栄光でも偵察部隊として行動することもあるらしい。


「相手は手慣れではなさそうだしな。それで行くか。ただ、仕掛けるのは無しだ。あくまで情報収集だけにしてくれ。」

「はいはい。」

「じゃあ、俺はどうする?」


 ベイルさんは言った。リーダーはリールさん。状況は私が説明できる範囲で説明しているが、誰が何をするかを決めるのはリールさんである。


「俺は農家の方に行ってこようと思う。捕虜ではなく保護とはいえ同族がいる方が向こうも話しやすいだろう。だからシュウ達も連れていく。ベイルとメリーは伯爵に報告しに行ってくれないか?貴族が絡むなら貴族に相談すべきだろう。ムサビーネ夫人はとりわけ今回の魔物誘拐騒動に一番ピリピリしてる。何かしら動くだろうと判断している。」

「うい。分かった。メリー、気分が悪いからって脳筋魔法ブッパは駄目だからな。」

「知ってるよ!私をなんだと思ってるの!」


 とのことで、行動開始である。私はリールさんと共に現地に向かう。途中までウィリーさんも一緒にいたが、「あの家の奥の家」と私が言うと「分かったわ」と言って分かれて行った。


「リーダーさん、ウィリーさん大丈夫なの?」

「ああ、あいつは凄腕だ。俺が信頼しないで誰が信頼する。」


 シュウ君の問いにリールさんはそう言った。


「後は今回は俺も一緒に行くが…相手がそこまで危険じゃないなら本来は2人に全部任せたかったんだが…まあ、まだEランクだからな。特別だ。2人とも期待してるぞ。」


 リールさんは笑顔で行った。植物の内容的に確かに直接交流するなら私が適任だろう。ただ、リーダーとして万一対策としてこっち優先だったのだろう。


(気持ちは分かるけど…私は嫌な気持ちなのよね…)


 期待していると言われて…或いはそのように扱われて酷い目に私は何度もあっている。特に前世の仕事現場では。理不尽や無茶振りをやらされまくった。それこそ「お前なら出来る」「期待している」「教育のためだ」と言う理由で。私の頭にはまた無茶振りされるのではと言うイライラが募っていくのであった。ある程度時間が経過し目的地に着く。


(お、おおおおおー)


 私は目を疑った。ここは王都、日本で言えば東京や大阪。都会である。しかし外れに行ったからなのか、畑が広がっていた。


「シュウ君。寄り道いい?」

「え、あ、お姉ちゃん?」


 許可を一切もらわず私は畑の端っこの方に行く。


(おおおおおおー、腐葉土だ!これはここでも回復できる!)


 私は勝手に光合成を始めていた。帽子は…外してしまっていた。流石に服は脱がなかったが。


「どうしたんだ?」


 リールさんがシュウ君に問う。


「えっと…お姉ちゃんは腐葉土を見つけると行っちゃう癖があって…」

「腐葉土?」

「お姉ちゃんによると土に養分が沢山あると光合成しやすいんだって。植物の魔物としての本能なのかなぁ。」

「…困った癖だな。」

「お、お姉ちゃんだし…お姉ちゃんも自由に生きたいって言ってるから、僕はお姉ちゃん助けたい。」

「はぁ…まあ、誰かに迷惑をかけてる訳じゃないし…所詮は魔物と言うことで処理するか。シュウもマイが魔物と言うことだけは忘れるなよ。」

「う、うん。」


 なお、目的地には着いているのでしばし休憩…とはならず、リールさんが私の腕を引っ張った。


「あわわわわ!何してくれるんですか?!」

「マイ。遊びに来た訳じゃないんだぞ?シュウがマイを引っ張ろうとしないから俺が代わりだ。」

「酷いです!私はここで光合成してるんです!人間には分からないかもしれませんが、ここの土は美味しいんです!リールさんだって美味しい食べ物横取りされたら怒りますよね、そうですよね!」


 マイはプンプン丸だった。なお、残念ながらマイは見かけ10歳の女の子。不機嫌な顔をしたとことで女の子が機嫌を損ねた程度の顔にしかならない。ただただ可愛いだけ。魔物の威厳もクソも何もないのであった。キレたら別だが…まあ、マイはこの程度でキレるほど短気ではない。逆に言えばたまってくると大爆発して危険なのだが。

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