常識が狂った人物
「えーっと、これは?」
「ストーカー。狙いは分からないけど…無難に考えたら私かメリーさんだと思うけど。」
「あー、うーん。しゃべらせる?」
「何か余計なこと喋って騒がれると野次馬集めますけど。」
「面倒だなぁ…」
「お姉ちゃん、この人たち悪さしたの?」
「植物達に調べさせてるけど…誘拐常習犯らしい。アリア様の誘拐にも関わってるかも。」
「じゃあギルドに連れていく?」
「メリーさん運べます?私やシュウ君は無理ですよ?」
「じゃあ援軍かなぁ…誰がギルド向かおうか…?」
『姫様!何者かが後ろから近付いています!』
「え?」
とっさに私は後ろを向く。確かに誰かが近付いてくる。服装は黒いローブ、また三角帽子を被っている。
『おい、姫様。警戒しろ。そいつは昨日女児と一緒に消えたやろうだ!』
(何だって?!)
いきなり警戒しろと言われても困る。既に視野範囲内。私は遠距離型だがいくらなんでも既に近すぎる。私は後退りしながらシュウ君の影に隠れようとする…同じ身長ぐらいとはいえ意味はないが。私の行動に不審を覚えた2人が私が向いている方向を向く。その時女性から声がかかった。
「あらー、やっぱりメリーじゃない。何年ぶりかしらー。」
「え?」
とっさに私はメリーさんを向く。メリーさんは少々眉間にシワを寄せた。
「えーっと?」
「あら、忘れちゃった?悲しいわねぇ。良い研究材料になってくれたじゃない。まあ、貴女がまだ学校行く前だったから10年以上昔だけどさ。鍛えて上げたでしょー?」
20代初頭ぐらいの女性がこちらに歩きながら発言する。私はどうすれば良いのか混乱中。仕掛けるには近すぎる。反撃されて殺されてしまう。
「…あ、師匠?!」
「ウフフフ。ねえねえ、その魔物って私への献上品?見たことないけど、そんなに人間そっくりな魔物なら私の研究…」
「お、お姉ちゃんは僕の従魔だ!お、お姉さんには渡さないもん!」
「…メリー。と言うことは2人が私の献上…」
「師匠。シュウ君もマイさんも師匠の研究材料にしないでください。」
「あらー、おかしいわね。貴女を最後に教育した時に何か面白い人とか物があったら私に献上するように言ったと思うんだけど。」
「え…うーん…、覚えてないけどこの子達は違います!」
「面白くないわね…。」
師匠と呼ばれた女性は更に私達に近づいてくる。私もシュウ君も警戒度マックスであったが…私は植物の情報より、シュウ君はお姉ちゃんを誘拐されるのではと言う考えより…女性はそのまま私達を素通りし、ツルで縛られていた2人の男性を見た。
「メリー、じゃあこれ?魅力のないおっさんなんて貰っても困るんだけど。」
「師匠。一回私からの献上品と言う概念消してくださいよ!」
メリーさんも若干自己中のところがあるが…マイも人のこと言えないが…その上級者らしい。
「師匠。マイさんが言うには人攫いみたいなんです。私かマイさんが狙われたとか。」
「人攫い…良いじゃない!良い研究材料じゃない。あ、これは研究材料より拷問したときの雄叫びが聞きたいわぁ。研究材料に失礼ね。」
この師匠は笑みを浮かべる。私はこいつヤバイ奴だと思った。
「で、メリー。なにが聞き出せたの?と言うか、何使って捕まえたの?私もこんな魔法知らないんだけど?」
「あ、これは従魔のマイちゃんが捕まえたんですよ。マイちゃん植物なんです。」
メリーさんがこっちを見た。
「メリーさん。あのーその人平気なんですか?研究材料とか言っていますけど。」
植物からどうやらアリア様を何処かへ連れていった奴と言う情報も入っている。今それを言えば「正体バレた」とかで襲ってくる可能性がある。私は警戒しながら発言した。
「えーっと…多分としか言えないなぁ。師匠気になる子いると勝手に家に乗り込んでくる人だし…。」
多分ですら間違っている気がするけど平気か?
「おー、と言うことはこれはこの魔物が作ったツルか。テイマーはこの男の子と言うわけね。メリー。やっぱり私に献上しない?」
「だから2人とも私のものとかじゃないですから!」
「おっかしいわねぇ。弟子は師匠に従って欲しいわぁ…で、どんな情報が得られたの。個人的に人攫いには興味があるのよ。」
「全くもう…まだ捕まえたばっかりで。人攫いと言うのは分かったんですけど、私達じゃあギルドに運べないし…ここで口をほどくと大声上げられて野次馬とかか来たら面倒臭いんじゃないかと皆で話してたの。」
「なんだー。そんなこと?良いじゃない、情報なんてこうすればいくらでも入るわよ~?」
女性は指を鳴らした。その瞬間ツルから逃れようとしていた2人がピンク色の光に包まれ大人しくなった。




