伯爵令嬢を探します
(あー、久し振りにベッドで寝たわ。だけどやっぱり側に腐葉土が無いのはきついわね。今日はシュウ君に食べ物貰おうかなぁ。)
翌朝、私とシュウ君は同じ部屋で寝ていた。ある宿に栄光は全員泊まっていたのである。ただ、私は魔物と言うことでテイマーと同じ部屋で寝ることになってしまった。更に、まあベッドは一つしかないし…シュウ君のお願いとあり2人で同じベッドに寝たのだった。補足だが、マイは植物の魔物のため光合成が数日出来なくて死ぬなんてことはない。要は昨日の今日で体に養分を蓄えないと死ぬなんてことはないのだが…マイ的には出来る限り体にちゃんとした栄養を入れたい様である。社畜時代鬱になった時に健康習慣が乱れまくっていたのが起因しているのかも知れない。
(シュウ君はまだ寝ているのかな。さて、今日はどうするか…。)
私がキレた後の事象は少々略すが、結局今日は捕まっているであろうアルビトラウネの救出実施になっている。昨日簡易的に作戦会議をしてくれているのでまあ、なんとかなれば良いなぁである。一番重要なのは私が死なないこと。いやそれは全員重要だろう。
「あ、お姉ちゃん。おはよう。」
「おはようシュウ君。」
1つのベッドに2人をぶっこむのはどうかと思うが…まあ、私は従魔だからしょうがないとする。朝食は申し訳ないけど、シュウ君のおこぼれをちょっとだけ貰うことにした。安定して光合成出来る場所がない。いや、太陽は存在するが、腐葉土が王都にはないのである。森の中に行けば良いが、私の拠点があるわけではないし…デレナール領とは違い顔パスが通用しない。シュウ君みたいにハンターの証明書を持っていればある程度自由に出入りできるが…従魔は自由度が限られていた。
「じゃあ、えーっと…何処集合だっけ?」
「宿の出入口かな。」
そして、そこへ行くと…メリーさんしかいなかった。
「あー、シュウ君おはようー。」
「おはようございます。えっと…皆まだ?」
「あー、それがね…」
話を聞いて唖然してしまった。どうやらアリア伯爵令嬢が誘拐されたらしい。急遽だったらしく、既に早く起きていた3人はリグルト伯爵が滞在している館に直行してしまったようである。メリーさんはシュウ君への伝言役として残っていたらしい。
「お姉ちゃん!アリア様助けに行かないと!」
シュウ君が走って宿を抜けようとしたので私がツルで左手を固定した。
「お姉ちゃん?」
「シュウ君。焦るのは分かるけど…なんか忘れていない?私に命令するとか。」
「え?」
シュウ君は何か考える。そして「あ!」と声を漏らした。
「お姉ちゃんお姉ちゃん!植物さんに話を聞けない?そしたら何処へ行ったか分かるかも。」
「正解。」
私はシュウ君の頭を撫でる。
「エヘヘー。」
「そういえばそうじゃない。マイちゃんいれば発見できるかも!うーん、リーダー達もシュウ君みたいに焦ってたからなぁ。冷静に考えるとそういうことも考えるのか。」
「と言うことで探しに行きますか。」
「うん!」
「行こう行こう!犯人いたら取っ捕まえてやる!魔法的に。」
物理的でないのは分かるけど、メリーさん敵を灰にしそうだなぁ。王都の一部と一緒に。そして植物経由で探索を始めるが…既に不可解なことが分かってきた。取り敢えず現場に向かう。
「うーん、痕跡を辿るとここなんだけど。」
「ここ?」
人通りは少ないがいないわけではなく、ある程度の太さの道もあるので路地裏とかではない。
『姫様。公爵家に侵入者が入った旨、並びに袋を持った男がここにまで逃げおおせたことは分かっておりますが…ここで殺されてしまい、死体もろとも女性が連れていってしまったようです。』
『なんか急に消えちまったからこれ以上何処へ行ったかわかんねえんだよな。』
「うーん。謎ね…。」
「謎って?」
「簡潔に言えば…」
植物が言っていたことをメリーさんとシュウ君に伝えた。
「消えちゃった?何それ?」
「うーん、私も分かりません。」
「アースちゃんの転移魔法とかは?あれって瞬間移動出来るって言ってたよ。」
「うーん、アースの転移魔法は個人限定だから誰かを運べないし。と言うよりアースは王都に入ってこないわよね。」
シュウ君の指摘に私が答える。まあ、アースが犯人な訳ないだろう。あの子の悪戯にしては度が過ぎる。第一誘拐犯は男性らしいし。
「どうしよっか?ここの事をリーダー達に伝える。」
「今リーダーさん何処にいるの?」
「うーん、多分デレナール伯爵の所には言ったと思うんだけど、大分時間経っちゃったし。」
「まあ行きますかね。」
「うん!」
少し歩いていると…植物から警告が鳴った。
『姫様。どうやら男二人組につけられているようです。』
「は?なによ。王都って物騒なのね。」
一応行っておくが王都は治安が悪いわけではない。日本にも殺人、強盗、ストーカー、詐欺等は存在する。それと同じである。
「お姉ちゃん。どうしたの?」
「うーん、ちょっとこっち来て。」
「え、そっちは公爵家とは反対の方角ですよ?」
暫し私が先頭で歩く。その時私は地面にツルをぶっ指した。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
「…ま、こんなとこかな。植物さん、何か他に不審な動きとか、仲間がいたら連絡よろしく。」
『畏まりました。』
かくして私が再度逆方向に進み、2人は良く分からずついていったが、ツルで束縛された二人組と接触した。道が狭い場所にいる。どっちも口は塞いでおいた。叫ばれると面倒である。




