伯爵令嬢の失踪
「貴方…もしかしたら…」
「ああ、そうだな。最悪、王都の貴族を洗い出した方が良さそうだ。公爵様、陛下に取り次ぐことは出来ませんか?何度か言いましたが、アルビトラウネに刺激をされると一番最初に被害を被るのは間違いなくデレナール領です。いえ、デレナール領では彼らと対峙しきれないという結論になっています。我々の領土が突破されてしまったら、次は王都でしょう。早急に対応しないといけないと思われます。」
公爵様が返答をする前に扉が再度叩かれる。再度執事が入ってきた。
「旦那様。マリア様の体を調べましたが…えー暴行された跡等…他にも言葉に出来ないような…」
「なんだと?!」
公爵様が急に立ち上がったため皆ビックリ仰天してしまった。
「盗賊の仕業?」
「分からんが…本人の意思で動いていた、と考えるのは改めた方が良さそうだな。」
ムサビーネ夫人は考える。公爵様の行動的に…後、今まで交流をしてきた経験上…マリア様が両親から暴行を受けていたなど考えられない。やはり詳細はマイを拷問してでも聞き出した方が良いと考えていた夫人であった。
(アリア。どうやらマリア様は白だったようよ。良かったわね。)
夫人は娘に心の中で呟いていた。取り敢えず、陛下へ直々に交渉することは確定。問題は陛下が見繕ってくれるかだが…少なくとも手紙は出せる。デレナール伯爵が滞在出来る時間も限られている。無理そうならば公爵側で対応してくれそうである。色々他にも話し合っていたこともあり、空は大分暗くなりつつあった。夕暮れ時は過ぎ、夜に入るのだろうか?そろそろ夕食の時間だろうが…再度情報が流れ込んでくる。
「旦那様。盗賊から情報を入手出来ましたが、どうやらマリア様は人身売買にかけられていた様です。魔法の腕がマリア様は優れておりましたので…それを利用しようと盗賊が買い取った模様でして…」
その時、ガラスが割れる音がした。何事かと皆んなが騒然となる。少ししてメイドが駆けつけた。
「マリア様の部屋からです!ですが、鍵を掛けていたらしくマリア様のお部屋の扉が開きません!」
「なんだと?!」
公爵様が叫ぶ。伯爵夫妻には焦りが走る。あそこには今アリアがいる。
「只今合鍵を持ってきますので少々お待ちを!」
マリア様の部屋の前で関係者が立ち往生する。暫くして鍵を使い強引に扉を開けると…
「アリア?何処にいる?アリア!!」
誰もいなくなっていた。
(よし、上手く行ったぞ。)
暗い城下町。ある男性が大きな袋を抱えながら走っていく。
(近々公爵家の親戚が王都に来ることは知っていたが…まさか娘が来ているとはな。公爵家の娘は魔力が高いと言うことがあって高値で売れたんだ。こいつも高値で売れるに違いないぜ。)
そう思いながら走っていく人攫い…ふと、目の前に黒いマントを羽織った女性がいることに気づく。
「おい、邪魔だ!どけ!」
その途端、魔法が飛んできた。盗賊も荷物も吹っ飛ぶ。
「うーん…マリアちゃんと似たような魔力ね…。取り分けマリアちゃん程度には強力。良い研究材料になりそうだわー。」
「な、なんだ?!」
「あら?嬉しいわねぇ。折角ここ数年見かけない研究材料を見つけたのに…気づいたら誘拐されていたのですもの。同じ過ちは繰り返さない。帰ってきた時の防御策として…トラップを仕掛けておいたんだけど…別の意味で正解だったわねー。」
「どけ!俺に立ち塞がるなら死んで…」
その途端、男性は失言し…そして倒れた。胸には何かが貫通したのが穴が開いている。血が流れる。
「あらー、汚い汚物が出来ちゃったわ。お掃除お掃除ー。」
男性は消え去ってしまった。流れ出た血液と共に。
「さてと…あらー、可愛い女の子じゃない!マリアちゃんとも若干似てるわー。」
大きな袋の中には10歳ぐらいの女の子が眠っている。睡眠薬を嗅がされたのだろうか?
「特に探知魔法的にここら辺で大きく動いている気配も無いし…あれ?あの魔力は…」
女性は探知魔法に引っかかったある一点の魔力を様子見する。
「確か、今日王都を歩いていた時もこの女の子と一緒にいたあの子よねぇ…。」
彼女にとってみると、目で見たと言うより探知魔法で魔力を察知した方が正しいのかもしれない。彼女はニターっとする。
「ウフフフ。これは明日が待ち遠しいわー。」
そう言うと、彼女はその場所から消え去った。気を失っている女の子と共に…。




