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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
王都の課題
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犯罪奴隷の扱いについて

「検問だ。全員はぐれないようにな。」


 リグルト伯爵が馬車から全員に言った。アースは既にどこかへ行ってしまった。時間になったら検問から少し離れた街道に出没するらしい。


(たぶんシュウ君暫く弄られるんだろうなぁ…)


 と勝手に思っているマイであった。事後報告だが…後日シュウ君が確認時間ぐらいに行ってもなかなか出てこず、帰ろうかなぁと思ったときに後ろから抱き付かれたらしい。一応だがシュウ君は10歳の男の子、アースは見た目は4歳の女の子である。ビックリしすぎたとシュウ君が私に嘆き、今度は私がシュウ君に抱き付き撫でながら…やはりマイは自分が見た目10歳の女の子と自覚はないであろう…後であの妖精絞めよう…と考えることになるのであった。


(なんか私素通り?)


 守衛の側を通るとき…魔物は勿論警戒される。デレナール伯爵領は夫人が夫人な為、魔物に対して守衛フィルターが良くも悪くも冴えている。魔物が単独で来るとか団体で襲撃しにくるとかは論外としておいても…魔物が来た際には瞬時にテイマーの魔物か否か判断。異なる場合には危険か否かを即判断し、無害以外…不明も含む…は直ぐ様ギルドと連携出来る。しかし、大抵は…王都もそうだが…魔物イコール危険なのである。テイマーの魔物でさえどう言った魔物であっても時間が掛かってしまうのであった。そのため、シロが通る際も時間がかかり…例えムサビーネ夫人が伯爵夫人だったとしても…早々通れないのであった。…にもかかわらず、馬車の後ろの小さなベランダでくつろいでいた私はとりわけ何もなくそのまま通ってしまったのであった。


「シュウ君。」

「どうしたの?」

「私って…そんなに魔物として認識されないの…お姉ちゃん泣いちゃうよ。」

「いや、その方が良かったんだって。シロだって夫人があーだこーだ言っていたし…これでマイちゃんも突っ掛かったらもっと時間がかかるところだったよ。」

「それもそうだけど…従魔の証ちゃんと着けていて素通りとなると…王都の守衛ってガバガバなのかしらね。」


 私が嘆いた後、メリーさん、ウィリーさんが続いて言った。デレナール伯爵の馬車は本人らは質素とか言っていたが…どう見てもそこら辺の旅商人や一般人が乗る馬車とは比にならない。人々の目を引いている。只者じゃないオーラは漏れているのであろう。貴族とバレている可能性も普通にある。何処の貴族とは流石に分からないだろうが。


「リーダー。何処へ行くの?取り敢えず盗賊もいるしギルド?」

「そうだな…ギルドで盗賊から事情聴取か?」

「いや、すまないが…」


 リグルト伯爵が馬車の中から声を掛ける。どうやらこのままムサビーネ夫人の姉が住んでいる館に向かって欲しいとのこと。勿論案内は伯爵が実施するが。


「アルビトラウネの住処を荒らす盗賊についてはデレナール家、或いは親族で処理したいのだ。デレナール領のギルドなら問題ないだろうが…王都のギルドの場合対処してくれるか疑問があってだな。」


 追々わかることであるが…今回の盗賊が誘拐しようとしたのはあくまで「魔物」である。人間の女の子ではない。人間の女の子を…いや、子供でもなんでも良いが誘拐したら犯罪で終わりである。しかし、「魔物」の場合犯罪として定義するのが難しい。人間を殺せは犯罪だが…森の中の魔物を殺しても基本はセーフだろう。マイみたいにテイマーの魔物となれば話は別だが…ケリン達は野生の魔物である。魔物を攻撃して犯罪ならば、極論ハンター達は全員犯罪者になってしまう。誘拐…連れ去るも言わばグレーなのである。全部黒にしてしまったら…テイマーであるシュウやムサビーネ夫人も極論黒になってしまう。その為、今回の盗賊の行為を黒にするには、アルビトラウネを攻撃してはいけないというデレナール領のルールを適応する必要がある。勿論、そのルールはケリンさん達の拠点近傍の看板にも記載がされているし…看板事に記載内容が若干違うらしいが…近傍の王都や領土には大分知れ渡っているが、何故?をハッキリ定義出来るのはデレナール領だけなのである。本来「危険な魔物が出てきたらハンターに全部駆除させれば良い」である。駆除をせずまどろっこしい対処をしているデレナール領は変わり者。実際、駆除をすることが出来ないぐらい強い…と体感しているのはデレナール領のハンターのみ。アルビトラウネを襲ったとなればデレナール領は危機的に対応するが…他の王都や領土は、ルール上対応する…程度になり、対応が中途半端になる可能性があるのである。


「リーダー、俺はなんでも構わねえぜ。金さえ出してもらえれば十分だな。」

「金とは?」


 ベイルさんが言ってリグルト伯爵が問う。


「本来盗賊とかは犯罪奴隷として売り飛ばすことが出来るのよ。今回結局連れて来れたのは2人だけとはいえ…彼らもまたギルドに売れば私達の収入源になると言うわけね。」

「要はあれだ。ギルドに売らないで伯爵様に渡すとなるならば、その分の金が欲しいと言うわけだな。」

「収入源?お金が欲しい?私達は確かに貴方達に護衛を依頼したわ。その分の依頼料は払う。逆に言えば、私達を守るのは当然。盗賊を何人連れようが依頼料が増えるわけがないでしょ?」


 ウィリーさんが説明し、ベイルさんが要約し…ムサビーネ夫人が抵抗した。


「本来護衛は勿論護衛としての費用が発生する。ただ、その時に得られた魔物の死骸や盗賊等はハンターの所有権なんだ。だから、その分は本来ギルドに売って俺らのプラスの資源になる。いや、むしろそうでないとハンターは食っていけないからな。ギルドに売るから本来ならばその費用は依頼主が払う必要性はないのだが…ギルド経由じゃないとベイルやウィリーが言う様なことは発生する。」


 リールさんが仲介…いや、栄光のリーダーとしてムサビーネ夫人に説明する。しばらく口論が続くのを私やシュウ君は「面倒臭いなぁ」と思いながら聞いていた。私の前世の記憶でも金が絡むと面倒くさくなることは体験済みである。それでいて、金に拘ると周りから冷たい目で見られる辺り矛盾を感じている私がいた。

 大人の世界はこんなものです。知識や反発する力がないと努力を無償提供することになるので、今からでも「〇〇するから報酬寄越せ」と言えるようにしておきましょう。

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