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一輪の花による「花」生日記  作者: Mizuha
人間との出会い
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捨て身の人助け

(ううう…漏れる…漏れる!!)


 私は顔を真っ赤にしながら手で顔を覆った。もう漏らすのは妥協である。そして、案の定漏れてくると水が地面に落ちる音がした。指の隙間からシュウ君を見てみると、シュウ君は呆然としてしまっている。


「シュ…シュウ君…!」

「あ、はい!」

「は、恥ずかしいから…え…っと…私から出てる水を手で受け止めて飲んで…」

「え?」

「い、良いから!花だけは触らないで!」


 私は再び顔を覆った。少しすると、彼が移動し、花の蜜を受け取って飲んでることが分かった。


「美味しい!甘い!」


 等本人は喜んで飲んでいるが、私にしてみればたまったものじゃない。先ずは体感お漏らししている状態である。しかもそれを子供に飲まれている。恥ずかしいとかそういう状況じゃない。第三者の人間から見ればただ、花から蜜が溢れているだけなのかもしれないが、私からしてみればとんでもない状況なのである。


「う…う…」


 私は若干涙目になっていた。ただ泣いているわけには行かない。このまま溢したままではもったりないし、プライドを色々捨てた意味がない。既に両腕から出ているツルは地面に突き刺さっている。養分を吸い取る作業は本能が勝手に実施しているので、理性の方で花の蜜を受け取るカゴの様なものをツルから生成していった。ツルは太さとかも変幻自在。後、生前の人間の時私はそう言った編み物をしたことなど全くないが、魔物としての本能かな?この様なものを作りたいと思えばツルが地面から出てきて絡み合っていく。ある程度の大きさになるかならないかで私が漏らした花の蜜を受け止めていった。顔を隠すことなどカゴ作成中は無理ではあるが、どう見てもちょっとずつカゴからも蜜が漏れている感じがする。私は更にツルを増量し、ぐるぐる巻きにすることで漏れないように作り直していった。そして本能が、養分を吸い取るのをやめ…花の蜜が花から出るのが止まると、私はしゃがみ込み大泣きしてしまっていた。


「お、お姉ちゃん?だ、大丈夫…」

「だいじょばないから放っておいて!!ウワーーーン!」

『姫様?どうかなさいましたか?!』

「大丈夫だってーワーーン。」

「お、お姉ちゃん?」


 どっちだよって突っ込まれそうであるが、しばらく精神が安定するまで時間がかかった。30分弱もすると漸く私も落ち着いてきて両目を腕で擦り、溢れかえった花の蜜を見ていた。数リットルは出来ているのではないだろうか。多分しばらくは水?は大丈夫だろう。とはいえ、これをまた補充するのは精神的に限界であることは自分自身が一番良く分かった。実際あの状態で良く早急にこんなうまい具合にカゴが出来たなぁと我ながら感心していた。


「お姉ちゃん?大丈夫?」

「え…うん…」

「お姉ちゃん。大丈夫そうに見えないよ?」

「そ、そう…」

「目も顔も真っ赤。」

「う…」

『姫様。その人間の言う通りです。姫様本当に大丈夫ですか?こんなに取り乱されてしまっては我々一同全員心配になります。』

「うう……」


 このペースだと1週間持たない。シュウ君をどうにかしないと私の精神が死んでしまう。しばらく黙認が続いた後、シュウ君が口を開いた。


「これ…」

「うん?このカゴのこと?早急に作ったの。これで暫くは水分は平気かなって。」

「なんかね。勝手にツルが出てきて勝手に出来上がって、お姉ちゃんの花から出て来た水を沢山溜めていたの。」


 シュウ君は私をじっと見ている。顔の表情的に「なんで?どうやって?」と言うのが読み取れる。


「はぁ。もう降参。私にはもう無理。」

「え?」

「シュウ君。私は魔物なの。いい?ま・も・の・よ?だからこんなカゴなんて作ろうと思えば作れるし、貴方だって食べようと思えば食べれるわ。さあ、私の気が変わらないうちに逃げるなら逃げなさい。」


 もはやヤケクソである。やっぱり私には人間の世話なんて無理である。そもそも前世から人間なんて大っ嫌いだったし、今は魔物として生きている以上人間と関わるなんて不可能であり無理ゲーなのであった。例え根が人間だからといって別に私はチート持ちでも何でもない。そこいらの魔物と大して変わらないのである。いきがった私に全責任がある。


「お姉ちゃん?」

「………」

「僕は逃げないよ?だってお姉ちゃんが僕を助けてくれたって知ってるもん!食べ物取ってるところも少し見えたし、お姉ちゃん今も必死でそれ作ってくれてたもん!」

「でも、ただ餌付けして後で食べようとしているかもよ?」

「そんなことお姉ちゃんはしないもん!!」

「う………」


 はっきり言う。甘い。甘すぎる。魔物は危険な存在なのである。シュウ君のお父さんの言う通り。それが正しい。ただ、シュウ君の子供の純粋さが私の心を(えぐ)っていた。私はまた涙する羽目になってしまった。


「お姉ちゃん?大丈夫?」

「う……」

『おいガキンチョ!姫様に軽々しく声かけるな。第一姫様はお前のことで精一杯なんだ!大人しくしてろ!』


 一応補足しておくが、植物の声はシュウ君には聞こえません。私が再度落ち着くまでにもう30分かかってしまった。

 物語上主人公は子供を助けましたが、現実では面倒事には関わらないようにしましょう。大体後悔しますよ?

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