今の自分は何者なのか、ちゃんと自覚しましょう
「あの二人ですね。分かりました。」
最終的に某アサシンと、メリーさんと殺り合った魔術師だけ連行するらしい。ツルでぐるぐる巻きのため単体では動きようがない。ベイルさん辺りが担いで荷馬車に突っ込んだ。そこにはマリア令嬢の亡骸も入っている。
「よし。じゃあ後はあの魔物達に任せるか。」
「ちょっと待っていて欲しい。他の輩は先に出発する準備をしておいてくれ。」
リールさんの発言にリグルト伯爵が問いかけた。雄花達に決まったことを報告しに行ったらしい。個人的だが…私達魔物として認識されていて良いのか最近疑問になってきた。私達はなんだか魔物と言うより…エルフとかそういう類いに近いんじゃないかと最近私は勝手に思っている。見た目は人間だし、耳も人間と同じっぽい構造だけど…見た目は。少ししたら見かけ20歳ちょいの雄花が私の方にやってきた。
「お前が雌花だよな。ケリンや他の植物から話は聞いている。今回はすまない、迷惑をかけた。」
その雄花は私の右手を見ながら謝罪する。なんか私…雄花達に有名人に扱われていないか?と勝手な思い込みとは言え自由が奪われると悩みがまた増えるのであった。
「本来であれば、雌花に怪我をさせるなど有ってはならないし…雌花に協力してもらうのは色々と…と言うより俺ら全員おじいさまに叱責くらっちまう。後日別途お詫びさせてくれ。」
「あー、大丈夫です。ちょっとでもそちらが平和になれば…。」
私の考えの1つに、この誘拐や殺戮が悪化するとデレナール領に襲撃されて全面戦争に巻き込まれると言う先読みがあったりするのであるが…その事については触れなかった。
「で、あれだ。すまないが、あいつらを運ぶ際に地面固定したツルだけ解除して欲しいんだ。他人が作ったツルは操作出来ないし…雌花が作ったものだと恐らく切るのに時間がかかってしまう。」
(結局全員対応かよ!)
内心プッツンしてしまった私であった。
「ねえねえお兄ちゃん。お詫びならどれかお姉ちゃんにプレゼントしたら?ほら、僕達怪我してもたくさん食べれば早く治るし。人間大きいから食べたら栄養になるよ?」
左手を私と同じように負傷している7歳ぐらいの雄花が話を聞きやってきた。この子も誰かが知らぬ間に治療したらしい。包帯を巻いている。
「あー。」
私は側にいたシュウ君を見る。首を横に振っていた。激しく。
「私偏食で…しかも中身腐った人間は不味そうなので遠慮しておきます。まだシュウ君の方が美味しいんじゃないかなぁ。ねー。」
「え?!」
私はシュウ君を見る。彼はビックリ仰天な顔をしていた。補足だが、ツルから直接吸収する際には味は感じない。口からなら感じるが…。
「え、その人間美味しいの?」
「さぁ~。でも渡さないからね。」
「お、お姉ちゃん…?ぼ、僕食べないよね、ね、ねえったら!」
「うーん、どうしようかなぁ~。」
私は苦笑いしながら、ツルを地面に差し…余った盗賊連中の処理をしていた。そして残党の処理は全部雄花任せとなり、貴族一向は再出発するのであった。
「お姉ちゃん…僕食べたりしない?」
シュウ君はまだ引きずっていた。
「うーん、シュウ君が大人になって…幸せに家庭でも気付いて、人生に満足して…寿命で死んだ後食べるかどうか考える。」
「え…えっと…」
「マイお姉ちゃんはー、シュウお兄ちゃんを殺したりー食べたりしないよー。そんなことする魔物じゃないよー。」
馬車の後ろに付いている小さめのベランダで私とシュウ君が話していると、上からアースが割り込んできた。
「相変わらず貴女タイミング悪いわね…。」
「何の話ー?」
「はぁ。」
「お姉ちゃん僕食べないよね?」
「救った子を食べるバカが何処にいるのよ…。」
と言いながら私はベランダの縁に腕を組み顔を乗せながらシュウ君に寄りかかった。シュウ君もベランダから外を見ていたのでシュウは若干驚いた表情になり…安堵したのか私の頭を撫で始めた。
「ねえウィリーお姉さん。私やっぱりシュウ君とマイちゃん魔物使いと従魔って言うふうに見えない。」
「私もそう思えてきたわ…いつか結婚式に呼ばれるかもしれないわね。」
「聞こえているのですが…何で皆ミサさんと同じことを言うのですか?!」
マイはいい加減、自分が魔物であって雌花に転生して、見かけが10歳児の女の子であると自覚した方が良いのであった。




