妖精の悪戯(?)
「で、決まったか?え?」
他の盗賊やら悪徳商人やらについても議論されたが、全員は連れていけないことは明らかだった。全員口をツルで縛られているため喋ることも何も出来ない。魔物にも急かされてしまっている。
「仕方がない。証言に使えそうなやつ数人連れて行き、残りは雄花達に任せると言う方針で良いか?」
リールさんの発言に反対する人はいなかった。雄花達も、罪人全員ではないが…ある程度の罪人を好きに出来る…食い物に出来る…と言うことで今回は妥協してくれた。
「すまない。マイ。奴らの口だけを解放してやってくれ。」
「…煩くなると思いますよ?」
「ああ、だが選別に使える。」
「???」
よく分からないが、捕まえた盗賊なりなんなりの口だけツルを解放した。予想通り騒がしくなる。
「た、助けてくれ!」
「お前ら魔物に加担してるのか!俺らと同罪だ!」
「金なら出す!」
「商人の俺をこんなことにしたら俺の子分が…」
私はうるさいので耳を塞いだ。補足だが、一応私にもちゃんと耳はある。
「シロ、アース。どっちでも良いから何か脅して静かにさせてはくれないか?」
「魔法でも放つか?」
「いいよー悪戯ー!」
アースは地面に向かって何かを放った。その瞬間地面が揺れる。
「な、なんだなんだ?!」
「地面が怒ってるよー!黙らないとー地割れに突き落としてやるーキャッキャッキャ!!」
実際に何人かの盗賊の寝転んでいる地面は割れ始めている。現場は騒然となった。
「た、助けてくれ!!!!!」
「じゃあ静かにーヒャッヒャッヒャー!」
どっちが悪人か分からないが…アースが広がる地面を止めたことにより、一気に静まり返る。喋ったら殺される。アースの悪戯とツルの束縛による身動きが一切取れない状況が原因で更に盗賊らは敏感になっていた。一部の盗賊は視界に入ったツルで殺された少女も見ている。
「あの妖精…本当にめちゃくちゃね…」
ウィリーさんが呟くのが聞こえた。
「よし。簡単に言おう。お前らが襲った魔物はデレナール領と不可侵の契約を結んでいる。違反した場合本来死刑なのだが…他にこの魔物を襲っている仲間や依頼先等を話した輩は死刑以外の選択もある。取引したい奴はいるか。」
兵士の1人が問う。色々後片付けをしている間に上層部同士である程度収集の流れは決めているようである。私は何がなんだかなのでシュウ君と2人で様子を見るだけにした。
「あ、俺なら知ってる!」
「ッチ、俺はただ言われたままに獲物を捕獲しただけだ!何が悪い!魔物だぞ!」
また騒がしくなった。アースが地面を揺らしまた静かになる。アースは見た目4歳の女の子だが…妖精だから羽があって飛んでいるが…やってること私よりえげつないんだよなぁ。
「どうします?」
「無難に個別尋問だな。数分程度で決めるか。リール、お前そういうの得意だろ。」
「ああ…ウィリー、お前も手伝ってくれ。1人3分までだ。」
「分かったわ。」
兵士とベイルさんの問いに2人が答えた。暫く暇な時間が続く。
「主人。良いのか、こんなに時間かけて。到着遅れるぞ?」
「構わないわ。マイから情報が欲しかったんだけど…この様子なら現行犯逮捕出来るし…アルビトラウネからも直接聞けたから今後の対策もしやすくなるわ。」
「全く、俺はあまり人間に詳しくはないが…対策を考えるのはお前と言うよりお前の旦那の仕事、現地調査もお前の仕事ではないだろう。」
「良いのよ。やりたいことやってるだけだから。」
私はやりたいことあって良いなぁ、私完全に人間に振り回されてるんだけど?と夫人を恨んでいるのだった。
「マイ。全員の口を塞いでくれ。あと、あいつとあいつだけ連れていくから地面からの固定をほどいてくれないか?逃がさないようにな。」
「リールさん。私はシュウ君の魔物です。直接ほいほい私に命令しないでください。私が会話出来なければシュウ君に言うんでしょう?」
「あ、すまない。」
やはり私は人間として扱われているなぁ…と、考えさせられる私であった。




