テイマーの指示
「シュウ君。敵は物凄く足が早いの。捕まえる方法あったりする?」
「え…えーっと…」
「シュウ君。深呼吸。焦っちゃダメ。スーハー。」
「うん。スーハー。」
シュウ君がしばらくして落ち着くと…ある案を提案した。結構前に森の中で火炎鳥というすばしっこい空を飛ぶ炎の鳥を撃退した方法である。若干博打要素が含まれるが…
「分かったわ。改良してやってみる。チャンスは一度よ!」
「うん!」
私はつぼみの中を色々改造し始めた。確実的に敵を仕留めるため、シュウ君を傷つけた恨み…私を追い詰めた怒りを込めて…。
「おい!どう言うことだ!」
リールさんとゴーレムがアサシンとやりあっていると…ツルで作られたつぼみが開花した。いや、別に花が咲いたわけではない。上の方のツルの交流点が開き始めたのであった。アサシンはナイフをリールさんに投げつけた後思いっきりジャンプする。そして、開いたところに向かって思いっきり数本ナイフを投げつけた。
『姫様!敵が飛んだぞ!』
「お姉ちゃん!なにか見えた!」
「了解!」
植物の情報曰く、おそらく相手は強化魔法で加速して脚力で飛んでいること。要は…空は飛べない。空中での方向転換が出来ない訳なのでそれを逆手に取る。
(つぼみの中で私とシュウ君は互いに別々の端っこに配置してみた訳だけど…先に視野に入ったのはシュウ君か。)
まあ、誰が見つけようが関係ない。見つけたが重要。どうせ敵はこっちに向かってなにか投げてくる。即ち上空近傍では多少でも速さが遅くなる。捕獲できるスピードでなかったにしろ速さが落ちることが重要である。
(いっけー!!)
私はツルを操作し、開放したツルを中央を集点として斜め上向きに長距離伸ばす。隙間も新たにツルを生成し隙間0のいわばツルで出来た蟻地獄が完成した。
「お姉ちゃん!一瞬なにかが飛んで…」
敵がなにかを飛ばすのは想定内。内部は上層部何層にも編み目のツルを束ね、その下はツルが大量に張り巡らされた状態。おまけで、私のツルは体に巻いているものを除きそう簡単には切れない。投げたナイフは何処かに刺さり、あるいは刺さらず止まり…ここまでは絶対来なかった。
「ッチ…一回引き上げだ。」
アサシンは急にツルが伸びるのは想定外だろう。ツルを蹴り台にし飛び上がろうとするが…飛び上がってもツルである。しかもどんどん着地地点が垂直…いや、逆さまになりつつある。開いたつぼみが既に閉じかけていた。
「く…なにも見え…うわわわ!!」
閉じてしまえば中は暗い。しかも閉じてしまえばツルを蹴っても脱出はおろか下に落ちるだけである。おまけだが、シュウ君も敵が見えたことは間違えないが、閉じたことにより視界は暗闇行きである。しかしマイの場合…夜の森でも魔物に襲われることがあるので夜間の目は人間よりは機能していた。更にマイが作ったツルは、地面にツルを指しているとき感覚を共有できる。痛みとかは強く影響しないらしいが…いわば、視界不足でも触れられた感覚で相手の行動を全て読んでいるのであった。
(落ちてくるわね。まあ、もうゲームオーバーでしょ。)
落ちた先にあるのは私が大量に仕掛けたツルの網である。視覚が機能せず転落したアサシンはそのままトラップの餌食となる。引っ掛かればツルが勝手に伸びていき敵を縛り付ける。「ここまで追い詰めたこと、敬意を表する」状態だった私は、相手の鼻を除き全部ツル団子状態にしてしまった。どっかで絡まって止まっているようである。植物の情報曰く敵は半径数kmで全滅らしい。射程外ではまだ盗賊がいるらしいが…良くも悪くもここには影響範囲外だろう。私は再度、上を開ける。明かりが入ってくる。ツル団子の人間がどこで絡まっているか分かった。
「お姉ちゃん!大丈夫?!」
「ええ…さてと…」
私は捕まえた盗賊を見た。
「ここは2人部屋なの。部外者は出ていってね。」
相手に聞こえているか分からないがツルを使ってつぼみから満身創痍のアサシンを追い出し、再びつぼみをしめるのだった。




